村に来た
カシマ オーイチは旅に出ることになってしまった。(デロデロデロデロデロデーデン
ということらしい。というかそうなのだ。しかも、それから一日で旅立つことになろうとは全く思いもよらなかった。
そんなこんなでやはり馬車の中である。揺れる馬車にやはり気分が悪くなり、途中でそれに気づいたゴンズイさんに魔法をかけてもらい一時的に体調を持ち直した。
それにしても大変暇である。同じ馬車に乗っているゴンズイさんも最初は話を振ってきてくれていたりしたが、さすがにこちらがはい、いいえだけで完結してしまうため、それ以上話が続けられず、掘り下げていくことも難しい。
ああ、会話が満足にできないとはこんなにつらいことなのか、と思う。これが夢で修学旅行に行き、高校生活を送っていたかった。そこには、親友がいて恋人がいて当たり前の光景と幸せがあったはずだ。
それからしばらくの間、ただただ現実逃避のために施行を割いていく。物語の主人公のようにこの状況を楽しめるはずもない。
いきなり異世界に行ってはしゃぐことなどできようものか?
いきなり友達や恋人と引き離されて動揺せずにいられようものか?
いきなり訳も分からずこの世界の事情に巻き込まれて……できるはずもない
そうして生産的ではない考えを浮かべては意味もない思索に走る。
そうこうしている内に馬車は目的地に到着するようだ、ゴンズイが教えてくれた。ただ今の自分ではこの恩人である男に頼るしかない。それがとても情けなく、不安であった。
到着した馬車から降りる。流石に今回は自分一人だけでも降りられる。よっ、と。
そこにあったのはTHEムラであった。ロールプレングなどでも思い浮かべるような典型的な村の形を取っていた。家は木で作られているし、薪もその隣には積まれている。
「まずは尊重のところに行って、盗賊についての情報を聞くとともに今晩の宿をどうしたらいいかも聞こう」
そういって先ほどまで村を見るばかりで何も考えていなかった自分に方向性を与えてくれる。やはり、頼りになる存在で今の自分には絶対に必要な存在である。そうして、ゴンズの言葉に同意するように頷く。
そうして、村の中を進んでいく。村の真ん中と思われる場所にはポンプではない井戸が
設置してある。魔法を使えばポンプを使わなくても簡単なのだろうか。水魔法を使うことができるなら管を設置して水を出してきたほうがいいし、風魔法でもストローみたいに吸い出すことができ、簡単な気もするが。
そうして村長の家だと思われる大きな家が見えてきた。その大きな家の近くには人だかりが出来ていた。
「あれは多分、教会の人が定期的に来ていて、丁度その時期が重なったのだろう。ああやって教会の人達は村の人たちに治癒させていっているのだよ」
不思議そうに、人だかりの方を見ていたからだろうかゴンズイがそれについて説明をしてくれた。
「後で教会の人にも挨拶をしなくてはならないけれども、あの様子ではしばらく無理そうだね。先に村長さんの方角に行こうか」
そういって、村長の家のドアをノックし、返事があったのでドアを開け、その中に入る。その際に靴を脱ぎそうになったがゴンズイがサッサッを村長に連れられて行っているのを見て靴は脱がなくてもいいのだと気づく。やはり日本みたいな文化というよりは西洋の文化に近いようだ。
村長は髪も髭も白く、少し遅いが腰も曲がっていないし、歩くスピードも遅くないし、結構健康な部類のようだ。
「そちらの椅子に腰を掛けてくだされ、お二方」
そう言われて椅子に腰を掛ける。
「儂がこの村の村長のアインと申しますじゃ。さて、話は聞いておりましたが今回盗賊を退治してくれるのはお二方でよろしかったですかな」
「ええ、私は騎士のゴンズイで隣にいるのが勇者のオーイチ君です」
こちらの方を軽く見定めるように見てから村長は
「ふむ、あまり強そうには見えませんなぁ。まぁ、勇者王と呼ばれたあの方がある意味で変わっていたのかもしれぬな。今でこそ、筋肉は美しいやカッコイイとされているが、勇者王が出るまではそちらのオーイチ君のような体型の方が多かったからね。流石に儂はあんなに筋肉をみたいとは思わぬ」
そういわれて少しだけホッとした自分がいる。先の王城を体験した自分から言わせてもらうと自分の方が異物なのではないかと思ってしまうほどだ。
「さて、肝心の盗賊じゃが、基本的にはこの村を襲いに来るといったことはない。精々、畑の食物を持っていかれるだけでの。むしろ、被害を受けているのはこの村から少しばかりいったところにある道を通る商人じゃな。」
「この村自体は被害を受けていないと?」
「まぁ、大きく困ることにはなっていないだけじゃがな。商人もときどきこの村に逃げ込んでくることもあるわい。」
「商人を主に狙った盗賊ということですね。ところで、その盗賊を少し調査するためにこの村に泊まりたいのですが、どこか泊まれるところはありませんか?」
「おお、それなら儂の家に泊まっていくがよい。教会の聖女様もこの村に泊まっていくでのう。」
ふむ、教会の聖女様というのが気になるな後で会うことになるかもしれないからその時にでも挨拶するだろう。
そうして、少しづつ情報を集めながら時間が進んでいくのであった。