再会した
はっ、はっ、はっ。激しい動きをして汗を流す。
何をしているかって?トレーニングもといゴンズイブートキャンプをしている。
日時の進み方が前の世界と同じならばあれから約一ヵ月間の間これを繰り返している。多少筋肉がついたように感じなくもないが、城の兵士やゴンズイほどはついていない。日課として朝の間はこれを2セット程こなし、午後からゴンズイに剣を習っているという形を取っている。というかゴンスイは半ば逃げ出すように自分に戦いの稽古をしてくれている。
というのもあの二人がいるからである。
「ゴンズイさーん。がんばってくださいね。いつでも治癒の用意はしてますからね。」
こいつは聖女。俺が稽古付けてもらっているのにゴンズイに治癒施してどうするんだよ。あの村から帰ってきてからしつこく尋ねてきているぞ。そろそろ仕事しろよ。
そして、もう一人がゴンズイの妹のカトレアである。
「お兄様とオーイチさんくれぐれも怪我はしないようにしてくださいね。」
一見、俺ら二人を気遣っているように見えるだろ?実は怪我をすると聖女が治癒をして誇らしげになるからそれを防ぐためなんだぜ。
いやまぁ、帰ってきてカトレアから根掘り葉掘り聞かれた時からある程度は予測ができていたけれども今まさに足を笑顔で踏み合う仲になるとは思わなかったよ。
それでもね。二人の中とゴンズイだけで完結してくれればいいんだけれども、こっちまで巻き込んでくるからよけいに性質が悪いたらありゃしない。ゴンズイのことはもちろんお互いのライバルのことまでしつこく聞いてくるなよ。俺は知らないぞ。
まぁ、基本的にはこんな感じで一ヵ月間が過ぎている。正直な話、いーくすりな胃薬が欲しいぐらいだ。
そんな感じで日々を消化している。
「王城より、伝令です!!!」
そう声が聞こえたのは午後の稽古の途中であった、
「ふむ、君、どのような要件かね」
「それは知らされてはいませんが、オーイチ殿を連れて王城へ来るようにとのことです」
「支度をしてから、向かおう。その様に伝えておいてくれないか」
兵士は「分かりました」と頷いてから引き返して行ったようだ。それはともかく、王城に向かうことになるらしい。自分もあまり支度するものがないもののある程度身だしなみだけは整えておこうと思う。
――しばらくして、王城
前にも来たことがある王の間でやはりあの王様がいた。要件は何なんだろうか。また、何かの討伐とかか。
「そうじゃあないんだなこれが。まぁ、そんなめんどくさそうな顔しなくたっていいじゃないか、君と僕の仲だろ」
ねーよ。そんな中になってねーよ。それ以前に会ったのだって二回目じゃねぇかよ。
「仲っていうのはね一緒にいた時間じゃなくて、どんな風に一緒にいたかが重要なんじゃあないかな」
尚更、ねーよ、早く本題に入れよ。
「あぁ、そんなに急かさないでくれよ。言っちゃうけれども、ビトー チカという人物を保護したよ。何でも君の知り合いだというじゃないか。それで」
早く会わせろ。
「丁度、今ここに来るころじゃないかな。そろそろ入ってくると思うけれどもね」
「おーーーーーくん。」
といってダッシュで抱きついてきたのは紛れもなく千華本人である。言いたいことは沢山あるが、生憎何も喋ることができない。
「おーくん。やっと会えたよー。一人で寂しかったよー。」
しかし、喋ることはできない。
「何で、おーくん。何も言ってくれないの。他の女の人でもできたの」
説明頼む王。
「あー、彼ね。何か不手際があったらしくて喋ることができなくなっちゃったらしいんだよね。まぁ、だから喋りたくても彼は喋れないんだよね。もしくは読心でも出来るようになるかね。」
そのあとはまぁ、色々とあった。色々と。泣き出したり、喜んだりしてる千華とゴンズイの家に帰ることにしたのだ。
これでリア充ライフが来た。これであの二人がいてもどうにかなるはずだな。
そうして彼女と楽しく暮らせる。
――この時点で、そんなはず、なかったのに。