はじまり
僕は愛を知らない
僕は自由を知らない
僕は僕を知らない
ギィィィィ
ふと、目が覚める。
何度目の朝だろう。
まず、この閉鎖された空間の中では朝かどうか知る由もない。
毎日決まった時間に起きて、いつの間にか用意されている食事を済ませ、突然訪れる眠気に逆らわず寝る。
そんな毎日を繰り返して来た。
僕にとってのニワトリは、扉の開く音だ。
それが扉なのかどうかわからないが、きっとそうだろう。
おい、いやまて
何故僕はこんなところにいるんだ。
言葉などの情報以外、残念ながら僕は何も覚えていない。
ただ過ぎ去ってゆく日々を見つめる中で、
「きっとこれから死ぬまでこんな生活が続くんだ」
なんてそう思っていた
わかっていることは、僕がここへ来てから大きく身体が成長しているということ。
何故大きくなるんだろう。
僕にはそれがわからなかった
でも、言葉はわかる。
ある程度のことは覚えている。
でも重要なことはわからない。
わからないというよりは、きっと覚えていないのだろう。
ここでの唯一の楽しみ、それは考えること。
妄想や想像と言った方が正しいのだろうか。
毎日の食事は一体どこから来ているのだろうか。
何故急にいつも眠たくなるのだろうか。
そういえば、僕にとっての楽しみを奪うのも眠気だな。
ダメだ、きっとこんな、こと…考えてると……
ほらまた、また眠たくなってきた
考え事の続きは目が覚めてからにしよう
そんなことを思いながら、今日もまた目を閉じた
目が覚めると、そこには見慣れない風景が広がっていた。
目の前にあるのは大きな扉
そして僕と同じくらいの背丈をした生き物
彼らも僕や、ほかの生き物を珍しそうに眺めている。
しかし、興味深そうに辺りを見回す目に希望は宿っていなかった。
諦めているんだ。
僕は1つ気がついた。僕と彼らは同じ生き物。
同じ形をした生き物がこれだけ集められている以上、僕だけ例外ということはないと思う。
声が、声が聞こえる
頭の中に囁くような声。
冷たく、諭すような声。
「聞こえるかい?君達の記憶は必要最低限なもの以外消させて貰った」
なに勝手ならこと言ってるんだ
普通ならそう返すのだろうが、
ずっと言葉を発していなかったので、音の出し方すら忘れてしまっている
(あ、あ、え…さあ)
色んなところで同じような声が聞こえてくる
考えてはいるが、それが思うように話せない。
「動揺するのも無理もない。しかし、君達に1つ聞きたいことがある」
なんだろう、素朴な疑問が頭に浮かんだ
「自由に、自由になりたくはないかい?」
自由…。
そんなこと考えたこともなかった。
【自由】という言葉の意味はわかる。
が、具体的にどういったものか想像がつかない。
今更自由になりたいとも思ってはいない
だが、自由に興味が無いこともなかった
「意見を聞かせて貰えないか?おや、これはすまない。私の配慮が足りていなかったようだ」
どういうことだろう
「声が思ったようにでないんだね。簡単な言葉から出してみるといい。」
そうか、思ったことを口にだす。
簡単なようで、(考える)+(口にだす)
という二つの作業をしているんだ。
「あ、あ、あ、え、え、い」
でる。声はでる。
「りん、ご」
喋れる、慣れたら簡単だ。
何故りんごなのかは聞かないでくれ。
「では、話せるようになったところでもう1度聞く。君達は自由になりたいか」
(な、…りたい)
どこからかそんな声が上がってきた
なるほど。
自由になりたいことはないが、興味はある。
「しかし、君達全員に自由を与えれるわけではない」
なるほど
「1つ、ゲームをしてもらう。ルールは簡単。最後の1人になるまで殺しあえ。ありきたりだろう?でもそんなありきたりが1番面白いんだ」
で、その最後の1人を解放…か
なかなか悪趣味なゲームだな
「時間がない。あらかじめ言っておくが、拒否権はない。」
「イヤよ!そんなことしたくない!死にたくないの!この生活が続いてもいい!生きたい!」
誰かがそう叫んだ
「わめくな」
目の前で女が痙攣を起こし、動かなくなる
なるほどな。拒否権ない…か、
「もっとパニックになると思ったが、君たちは案外冷静なようだね。これなら期待できそうだ。全員扉の前へ移動してくれ」
やはり毎日聞いていたのは扉の開く音だったようだ。
ということは毎日…毎日殺しあったということなのか!!
「さすがに大きいな。」
確かにあれだけ音が響くのにも納得がいく
「よーし、全員集まったようだね。では扉を開けよう」
ギィィィィ
聞きなれた音がする。でも今日は、いつもより胸騒ぎがした
気まぐれ更新です。よろしくお願いします