異世界召喚-ⅰ
「…ねっむ…」
「はよ!…ってうわっ、疼夜大丈夫かよ」
バシッと背中を鞄で叩いてきた。
見なくたって分かる。大体俺にこんな事するやつは1人しかいない。
「何がだよ、龍己」
「顔色悪いぞ」
チラッと見た携帯画面には確かにやつれた顔があった。
これじゃおっさん見てぇだ…。
そう言うと大爆笑していた。
「ちっ、笑いすぎだっつの」
反撃するように頭を叩いてやった。
ーーー…。
授業中もゲーム。ゲーム、ゲーム。
体力は一気に25。
なんか、俺も疲れた気がする…
だるい…だるい…頭が痛い。
「ーー、っや!」
(もし一つだけー…)
ジジジッと電子音の様な雑音が混じり途切れる。
(お願いーー…っ助けてっ!)
助けて…助けて…助けて?
俺は、
「おいっ疼夜!!」
「っ!!」
オレンジに染まった机の真ん前で龍己が俺の顔をのぞき込んでいた。
「あ、なんだ龍己か」
「なんだとはなんだ!お前いつ帰るんだよ」
「…へ?」
素っ頓狂な声を出した俺に呆れたようなため息を吐く。
空を見るとオレンジに染まっていた。
机がオレンジに染まっていた意味がわかった。
「帰るぞ!」
「帰る?!……ほ、放課後ーーー!?」
雄叫びに近い俺の声は誰もいない教室に響き、
誰もいない廊下に響いた。
「はぁ、なんか疲れた…てかだるい」
「お前まじ顔色わりーよ!」
今日何回目かのその言葉。
もう自覚済みだっつーの
龍己と別れる道で手を振ると早速ゲームを手に取った
体力…減ってんなぁ
そう思いながらさっきコンビニで買った菓子パンをほおばる。
「……え、、、」
体力、が。
「あがってる」
嘘だ。
「ははっ…」
不気味さに乾いた笑いが漏れる。
人っ子1人いないこの路上。
これ、そのまさかか…?
確実に現実と繋がっている。
体力がなかったここ数日。
顔色が悪い俺。
寝たらほんの少し回復してる体力。
この体力回復は時間制じゃないはずだ。
食べると回復するゲーム内の体力といい…。
嘘だろっこれ…
興味もそそるが、不気味さも負けねぇな。
ミーナって、どっかで…
思い出しそうで思い出せない。
記憶に靄がかかったみたいに、何も出てこないのに聞いた覚えがある。
「…ミーナ…」
その瞬間ジジジッっとあの時と同じ電子音が耳を劈く勢いで流れ込む。
「…っんだよ、これ、」
クラッとして空を見た。
そこには、
「赤い、空。」
俺はそれを一瞬にして、血、と連想した。
16の俺の世界。
俺を中心に乗せたようなその世界はぐるぐると渦を巻く。