第1話
すみません。
書いている内容が未熟と感じたので一から書き直しました。
2話以降も徐々に変更していきます。(2度目)
――15:30
ホームルームが終わり、中平 泰斗<なかひら たいと>は席を立つ。
行き先は図書室、目的は授業の復習と予習をするためだ。
短い髪を眉の少し上で綺麗に切り揃え、高校規定の制服も一部の隙もなく着こなしている。
やや厚めな眼鏡をかけ、常に穏和な表情を浮かべる姿は『優等生』、という単語を浮かばせる。
夕陽が差し込む廊下に、泰斗は一定の間隔で足音を刻み進んでいく。
五分ほどで、図書室の前に到着すると、泰斗は静かに引き戸を開け中に入る。
放課後の室内は静寂に満ちていて、泰斗には居心地の良い場所だ。
大半の生徒は部活か帰宅に向かい、ここに来るのは真面目な図書委員か、文学好きの奇特な女生徒くらいである。
泰斗は西日の影響が少なく、本棚に近い席にいつものように座る。
そして、カバンから筆記用具一式を取り出し、勉強を開始する。
テキストに目を通し、ペンを動かし始めると、泰斗の視線は釘付けになる。
目はただ文字だけを追いかけ、ノートに書き込まれる音だけが、耳に小気味良く響き続けた。
「ふう・・・」
一区切りつけた泰斗は安堵の息を吐く。
「相変わらず、精が出るな」
「あっ、東野さん」
泰斗は目の前に座る女生徒に気付く。
――東野 圭子<ひがしの けいこ>
自称、文学少女で泰斗と同じく図書室の常連だ。
自己申告で室内の本を読み漁り、創作活動をしているとの事だ。
時折、泰斗の前に座って、愚痴とも取れる話をする。
「何時からいたの?」
「20分くらい前だな。まあ、君を観察していたから、退屈はしていない」
「ど、どこか、おかしかったかな?」
泰斗は慌てて居住まいを正す。
「違う、非常に興味深い、ということだ」
東野は尊大な口調のまま小さく笑った。
長い黒髪を自然のまま靡かせる東野は、均整の取れた顔立ちをしている。
美人と言っていいが、無愛想な表情となだらかな鼻梁に小さな眼鏡を乗せている。
これで白衣を着せれば、立派な『研究者』だな、と泰斗はいつも思っている。
「今日はどんなお話ですか?」
泰斗が問いかけると、東野は伏目がちに眼鏡の縁を撫でる。
間を取るときの、東野の癖だ。
「・・・実は君に頼みがあるんだ」
「ボクに頼み、ですか・・・」
泰斗は目を丸くして反芻する。意外な言葉だった。
そんな泰斗を見ながら、東野はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「私の文章を見てもらいたい」
「えっ?! いいんですか?」
泰斗は思わず声を上げて問い返す。
小説のような物を書いている、と言っていたが、肝心な内容を東野は話してくれなかった。
「君に協力してもらいたいんだ」
「それなら、もっと信頼できる人、先生や友人の方が良いんじゃないの?」
内心の戸惑いを隠しながら、泰斗は疑問を投げかける。
そもそも、放課後の図書室で、少しお喋りをするだけの関係でしかないのだ。
「・・・だから、君に頼んでいるんじゃないか」
東野は少し呆れたように答えを返す。
その表情は少し怒っているようだ。
「ご、ごめん」
東野の怒気を察した泰斗は、すまなそうに頭を下げた。
馬鹿な事を言ったと、泰斗は自己嫌悪で顔をうつむける。
「ふふ、そう気にするな」
東野は明るい声色で笑い飛ばす。
根に持たない性格のだろうか、怒ってないことに泰斗はホッとする。
「で、引き受けてくれるか?」
「ボクの出来る範囲であれば」
無下にするのも気が引けたので、泰斗は控えめに了承する。
「助かる。で、肝心の文章なんだが、パソコンで作っていてね」
「それなら大丈夫です。持ってますから」
「なら、話は早い」
そう言って、東野はカバンから赤いプラスチック状のホルダーを取り出した。
大容量記憶媒体、USBメモリというヤツだ。
「コレに過去の文が詰まっている。それを見て、君の意見を聞かせて欲しい」
「わかりました。じゃあ、週明けにこの場所でいいですか?」
幸い、明日から土・日と休みが続くから、時間はたっぷりあった。
これだけの時間があれば、期待に応えることが出来る。
泰斗は素早く算段したのだ。
「わかった。楽しみにしている」
「もう帰るの?」
「こっちも色々とやることがあるからね」
東野はそう言って腰まで伸びた髪を靡かせ、図書室を出た。
そして、残った泰斗は東野から渡された、USBメモリを手の平で遊ばせる。
「小説か・・・」
泰斗は嘆じるように呟く。その手は微かに揺れていた。
やがて、それをポケットに仕舞い込むと、泰斗はまた黙々と勉強を続けた。
突っ込みを希望します。
後は着実に経験値が増えてLvがあがります。