羽根
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一日一つ、ライトSFを!
武器セレクトから外装銃火機一斉射撃を選択し、一息にマニュピレイターのボタンを押し込む。
銃器が敵機に向けられる、硬質で無機質な音が他の音を消し去った。
一瞬の後に画面がマズルフラッシュに埋め尽くされ、凄まじい衝撃に激しく揺さぶられながらも、前を見続ける。フラッシュがある程度収まったが、今度は巻き上げた砂埃が視界を遮る。
その砂埃の向こうに、巨大な機影が揺らめいている。
余裕を見せびらかすような直立不動の状態――いや、もっと悠然とした体制で佇んでいる。
仁王立ち。しかも、胸の前で腕を組んでいた。
圧倒的な存在感。そして、王者の風格。見たものすべてに、そいつがこの場をが支配していることを示している。
その横を、後ろをとろうと愛機が駆け抜けていくが--そちらを見ようとさえもしない。
「敵機……無傷ですよ!?」
その黒色の装甲には傷一つ付いておらず、それどころか砂埃さえ付着していないように思えた。何らかのトリックが有るのかもしれないが……絶望感に打ちひしがれていて、頭が全く回らなかった。
こちらの全弾発射を微動だにせずすべて真っ向から受け止め、なおかつ無傷で立っている。
勝てる気がしなかった。勝たねばならないのに、負ければ全てを失うのに――勝てる気がしない。
大事な何かを落としてしまったような気がした。そしてその何かが堅い地面にぶつかって、砕け散った音が聞こえた気がした。足下が崩壊してどこまでも墜ちていく光景を幻視する。
『陸、諦めたら全部終わりだよ!』
聞き慣れた声が、聞いたことの無いような真剣な声色でそう言った。
『陸は終わらせたいの!? そんな気持ちでここに来たの!?』
――違う。
終わらせたくないから、ここに来たんだ。惨めに足掻くためにここにいるんだ。
こんなことで絶望するために歩いてきたわけじゃない!
「行くぞ、つばさ!」
「――はい!」
展開される機械仕掛けの羽根。肩、股、腕、背……あらゆる場所に仕込まれた放熱ファンクションが動き出す。キィイイイン--と、耳をつんざくような機械音。放出される推進剤や粒子が土気色の空を塗り替えていく。
一気に出力をあげたジェネレータ。マニュピレイターを握る腕が、武者震いに震えていた。
「〈フリューゲル〉、行くぞ!」
答えるように、フリューゲルの白い翼は蒼い粒子をまき散らす。
雑多になっていたものを整理したものです。雑多状態を知っている方も、知らない方もよろしくお願いします。
ライトSF+ロボットな感じでお送りしますので、良ければお付き合いください。