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一つ星横町より  作者: たろべえ
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 私はここに来る前、事務用品メーカーの小さな会社の事務員として働いていた。

 しかしある日、勤め先から家に帰る途中、気がつくと見たこともない石畳の道に立っていたのである。夜遅くに雨に降られながら歩いていたはずが、急に辺りが明るくなった。石畳には柔らかく影があり、傘を下して空を見てみると丸い雲がいくつも浮かんだ青空が広がっている。

「なんだこれ。」

 思わず独り言が出てしまった。

 周りは白い壁の家が並んでいるようだ。ドアは木。家と家の間に木が植わっている。静かで、人の声はしない。傘を閉じて、先へ進んでみる。

 家と家の間から、白い布が何枚もひらひらするのが見えた。洗濯物でも干しているんだろうか。人の姿はまだ見えないけれど、ここで暮らしている人がいると思うと少し安心した。

 

 通りの突き当たりまで来た時、がらがらがら、と向こうから音がした。どんどん近付いてくるのを緊張して待つ。

 だんだん見えてきたのは、黒っぽい大きな生物と、それにまたがる人だった。

 はっきり見える近さになってわかったのは、その生き物は毛むくじゃらの巨大な牛のようなもので首にはこれまた大きな鈴をつけており、人はその生き物に鞍をつけて乗っていたということだった。人のほうは、色の白いおじいさんで、茶色いマントを体に巻いていた。

 私もおじいさんを凝視していたが、おじいさんも私を目を大きくして見ていた。

 そして、大声で何かを言うと、手を私のほうへ突き出した。何度も繰り返されたので、近づくなということかと思い、できるだけ刺激しないようにじっとした。

 おじいさんはそのまま何かを私に言い続けながら、毛むくじゃらの生き物を操って、もと来た道を引き返して行ってしまった。


 おじいさんが行ってしまうと、また辺りは静かになった。

 さっきのことを思い返してみる。着ているものも、動物も、見たことが無いものだった。夢か、なんとも鮮明な妄想だ。困った。おじいさんの反応からして、私は夢の世界の人々に受け入れてもらえないようだ。

 そのままじっとしていてもしょうがないので、おじいさんが行ってしまったのとは反対方向の通りに出てみる。先ほどより道が広くなった。

 家の構えも大きくて、ドアの横にそれぞれ木彫りのプレートが飾ってある。文字のようなものも書かれていたが、やはり見たことが無かった。

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