昨日のやる気
「よし、今日出来なかった事は明日やろう。朝起きたら絶対にやるぞっ!!」
意気込みながら、布団に入った。これ以上起きていたら明日に影響が出てしまうから。
そして朝。
「あ~、ねむねむ」
寝癖頭の眠気眼で出かける準備をする。昨日のやる気はどこへやら。
昼休み、友人と昼食を取っている時に言う。
「何で昨日は、明日はやるぞ!!絶対にやるぞ!!って思って寝たら起きた時そのやる気は消えてるのさ」
「う、う~ん……。何とも言えないけれど、人ってそうじゃない?私も経験あるし」
確かに人生生きていたら誰にもそんな経験はあるだろう。けれど納得いかない。
だから思い切って、身銭を切り、全財産をはたいて超強力栄養剤、眠気覚ましを飲み干して徹夜する事に決めた。
泣く子も眠るような時刻、一人、鼻息荒く起きていた。
「フンフンッ、ドンとこい。やれ来い、めっちゃ来い!!」
何でも受け入れてやるという気概で、朝を待つ。ここまでやる気に満ち溢れているのも、身銭を切ったおかげだろう。でもただ待ち続けていても暇だ。暇すぎる。
「そうだ、運動しよう。これだけやる気があるのに動かないのは勿体無い」
腕立て、腹筋、スクワット、シャドーボクシング、思いつく運動は何でもやった。
「ふぅー、満足!!これだけやればナイスバデーに違いない」
一日で変化すればダイエットなど必要無いのだけれど、ハイテンションすぎる状態でそんな所に思考は着地しない。息が落ち着くくらいまで休んでいたら、やっぱりまだまだやる気がある。これはまだまだ動かないと勿体無い。
「よし、もう20セット!!」
意気込み立ち上がるが、眩暈に崩れ落ちる。
「あれ?目が回って……」
視界がぐるんと回り、意識が遠退いた。
「お邪魔しまっせ~。おお~、こりゃまたたっぷり仰天溜め込んでますなぁ」
部屋の中に作業服を着て、掃除機のような機械を背負うおっさんが現れた。が、気絶しているために気付く事は無い。
「それじゃぁ、まあまあ吸わせてもらいますよー」
おでこにぺたりと機械の口を当てる。スイッチ一つでそれが動き出す。
「おお、おお、こりゃまた凄い。半分は溜まるでー」
おっさんが背負う機械のメーターのメモリが上がる。ある位置までいくと、機械を止めた。
「まいどどうも。でもお嬢さん、必要以上にやる気をだしちゃいけませんよぉ。やる気の総量は決まってるんです。過剰に取っちゃあいけません。必要な人の所に行かなくなってしまいますからねぇ。ではまた~」
気絶しているため、そんな事を言われているなど、全く知らない。が、そう言っておっさんはすぅっと消えてしまった。
こんな事が起きているとは全くもって知らないが、昨日の行動を振り返り、頭を抱えた。
「運動じゃなくて、もっとやらなきゃいけない事があったじゃない!!」
自分のアホさとやる気の無駄消費にただただショックを受けるばかりだ。
終わり
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