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護られていた世界

作者: 鬼ヶ島羅刹

僕の名前は鬼瓦鬼太郎。

工業高校に通う1年生だ。

見た目は自分で言うのもなんだが悪い!最悪だ!!

性格も内気、頭も悪く社交性もない、自分がなぜいじめられないのか、どこからか圧力がかかっているとしか考えられないくらいだった。

小学生の時から僕はいつもいじめられず、ちょっと調子に乗っている男の子達に相手にされているのは周りの地味な子達ばかりである。

僕はいじめっ子にも相手にされないのか、空気となんら変わりがないんじゃないかなどと考え、消えてしまいたくなったことだってある。

いじめられていないのならそのほうがいいはずなのに、僕は随分とかまってちゃんなんだなと感じたこともある。

でもそんなことを嘆いていても変わらない。

高校生になった今はこんな不思議な状況をあたりまえだと飲み込めるようになっていた。

もちろんいじめられないのは自分にその才能があるからで、周りに助けてくれる人なんかいないことだって分かっていた。

そして、それが孤独であることだって、もう分かっていたんだ。

悲しくなんてなかった、寂しくだってなかった。

そう、今までずっと一人で生きてきたんだから……



高校生活二日目、昼休みに僕は机の上に突っ伏して昼寝をしていた。

入学式と誕生日が重なっていた僕は先生からも祝われることなく高校生活一日目を過ごした。今もクラスメイトにぶつかられたのに謝りもされない。ここまで誰にも構われない人生も珍しいものだと思う。

男子にぶつかられてすっかり目が覚めてしまった僕はある一人の女子生徒に目を奪われていた。

その名は加糖亜鬼羅。彼女は男子に囲まれ、リンチを受けていた。

彼女は入学してからすでにいじめられていた。それも無理はない、ヤクザにもいないだろうDQNネームに、その名にふさわしい鬼神のような顔。ひじきのような髪に、ドリアンにも劣らない汚い肌。おまけに滑舌も悪いのだ。いじめられても無理はない。

そんな彼女は名前からは思えないほど力がないようで、今度は教科書を投げつけられていた。さすがにひどいので何か文句でも言ってやろうと、男子に向かって歩き出したが、どうせ無視されるので僕は回れ右をして、自分の席に着いた。

あそこまでいじめられるのも一種の才能なんだろう、諦めてくれと僕は思いつつ、机にうつ伏せになった。

起きた頃には時計の針はすでに午後4時を示していた。周りには人影は一つもない。ここまで無視されるのも一種の才能かと思った僕は、亜鬼羅さんとは正反対の才能だなと苦笑いを浮かべながら家へと向かった。

一人暮らしの僕はご飯も風呂も済ましてベッドに飛び込んだ。そのまま寝ようとしたら、ふと彼女のことを思い浮かべた。なぜ彼女のことを思い浮かべたのか分からないまま、僕は眠りについた。



翌日、学校に行くと昨日亜鬼羅ををいじめていた男子生徒は学校に来てなかった。

先生にでも見つかって停学にでもなっているのか?

そう思いながら一日を過ごす。

帰りのSHRが終わり、家に帰ろうと思っていたら亜鬼羅がまた男子生徒に連れて行かれていた。

さすがに可愛そうだと思い、注意しようと後を付いて行くと・・・

亜鬼羅が。男子生徒をボコボコにしていた。

ものの一分で男子生徒は土の味を知ることになった。

...?

僕の頭がハテナが埋め尽くされた。

まさか、昨日のやつらが今日学校に来ていないのは、亜鬼羅がボコボコにしたからか・・・?

危ないな、逃げよう!

「ガタッ」

やばっ!足元のゴミ箱を蹴ってしまった。

「誰ッ!?」

亜鬼羅は僕のほうを振り向いた。僕は怖くなって逃げようとしたが、腰が抜けて動けない。

亜鬼羅はどんどん近づいてきて、ついには目の前に立っていた。

彼女は僕の胸ぐらを掴み、軽々と持ち上げた。

ヤバイッ殺られるッ!!

僕は自分の死期を悟り、目を瞑っていたが、亜鬼羅は何もしてこなかった。

そして、彼女は僕の耳元でこう囁いた・・・


  お  兄  ち  ゃ  ん  ?


-end-


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