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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

シュラ

作者: 原田夕

  同じ星空を見ることはもう、

    ないでしょう


あんたも苦労したね。

金髪の彼女はタバコに火をつける前に

そう言ったみた。

 彼女「シュラ」は、それを自分への同情と受け

取めたので、

ほっと体があたたかくなるのを感じた。

「同情だって、いいものよ・・・

こういう感じの日って、ずっと前も、

ストアにココアを買いに行ったとき、

出入口の所で髪かざりをひっろたわ・・・」

「あなた、髪きれいね。なに使ってるの?」

二人とも爆笑した。

「馬の油って言うのよ」

彼女たちは、大通りまで歩きはじめた。


 雨上がりのぬれた歩道でメスコンを舐めた。


「あんた、ワイン持って来ちゃったのよね?」

「もう、その話は、だめよ。考えたくないわ、

ぞっとくるのよ。だってひどいことになるじゃない。走って逃げるわ」

「そうね」

 逆走向で車が近付いて来た。彼女たちは、

それに気づくと、笑って目配せした。

デージーとシュラは、立ち止まった。

デージーは、タバコをヒールで、ふみつぶし

た。その動作は、白いスーツが、ひどく、いびつに見える

片方の足だけ長く見えて、白っぽいスーツが、

ゴムのように伸びて見えた。二人で得物を見

る目は、ほほ笑みに隠されている。

「赤ちゃん は、いらない?グラウンドは

シングルがいいんじゃない?」

 若人は、二人の淑女の声色づかいに、色相

変えて アクセルを踏んだ。貧血と冷や汗を

かくし、車は小動物のように遠ざかった。

デージーとシュラは、それをなんとなく

ぼうっと見送っていた。

 シュラがデージーに、こう話した。

「ねえ部屋に、とまらない?

誰も来ないわ、お父さんだって」

勇気をふるって言ってみた。

心さみしかった。

デージーの目が左下の歩道を見つめた。

「ばかねえ」

デージーは、それしか言わない。外燈が反射

して光る欲しくもないシュラのうで時計を見

つめて呼吸を、ひそめて、シュラの、次の

言葉を待っていた。“あなたは商品なのよ”、

うぶなインディアンフェイスに、よほど、言

ってやりたかった。少しづつ、シュラから、

デージーの心が離れって行った。

時計は深夜の2時すぎだった。


 店に入った時、ワンピースの似合う女の子

というので、デージーは、ひどくシュラの

ことが気に入っていた。若いのにブラウンの

口紅をしている。ピンクの方が売れるのに…

明るい色。デージーは、あとで、そう言って

やろうと思った。

 6時に店が開く。

デージーの目線はコンパクトの内だった。

くちびるは、ほほえんでいる。

 淑女同志で話す会話は、ごくとぎれとぎれ

で、新しいプリンセスが来たときには、まし

てや誰も、何も言わない。一線をくずせない、

 高級と呼ばれる生活に、淑女たちは、筋合

があった。

「最高級?」

いわゆる仲間はずれである。

 シュラは、とりあえず16才、とゆうことで

ボーイが慌てて見繕ってきた、ひすい色の、

ハイヒールを、はかされた。ブラウンの口紅、

花柄のワンピース、ヒール。

黒い髪のぎこちなさ。無垢を、よそおう振り

向く姿の華麗さは、

若さだけではない、なにか野心的な危険さを

醸し出す。それゆえ、店は沸いたが、姉たち

は、彼女を無視した。オーナーもシュラの

天性に賭けた。

「私たちは、みんな同じ」デージーには、

シュラが若さを失ったとき

はじめて、この世界でやって行けることが、

よくわかった。

シュラが若さを利用していない。そう考える

しかなかった。

 これも運命か――――デージーは軽くうな

づいた。

「だって、私たち女じゃない」

    

    第一章終わり


 勇気ある者は、必ず勇気ある者に救われ

るでしょう。

       完



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