第二章「神様登場?」
「かーな、待ってよ…。」深夜十一時五十二分。
積木は一人、先急ぐ加奈を追いかけた。
「もー、積木遅いよ、願い事叶えてくれる人、
寝ちゃったらどうするのさー。」
いや、ごめん、多分人間じゃないから寝ないわ。
そんな事を思いながらも、積木は加奈を早足で追いかけた。
……此処、学校か…?
積木がソノ廃校をみて一番に思ったのは怖いではなく、
その疑問だった。
赤い屋根、低い天井、チューリップの絵…。
どうみても幼稚園だって……。
「………怖いねぇ。」加奈が冷や汗混じりに言う。
いや、怖くないから。近くのさくらんぼ幼稚園となんら変わりないだろ。
ミシ…ミシ…流石廃校。
歩くたびに床がきしむ。
やはりちょっと怖いかも。
「ねぇー加奈、何階にソノ『願いを叶えて叶えてくれる人』
とやらは居るの?」
「うーんとねぇーお母さんが言うには二階だよ。」
お母さん…?貴方にコノ胡散臭い噂をふきこんだのは
貴方のお母さんですか…。
積木は加奈の母、保美を心から恨んだ。
小母さん、貴方のせいで私は眠いのを我慢して、
深夜0時に立ち入り禁止の廃校に居ます……。
つーかこんな低い屋根に二階があるのか。
二階──。やはり少し怖い。
積木は手前のひまわりらしき下手な絵が書かれた
ドアを開けた。
…凄いくさい。
腎臓模型、実験器具、ピアノ、机…。
なんか一つ余計なのがあった気もするがまぁいい。
理科室の隣には、タンポポが描かれた
ドアの部屋があった。積木はドアの上をみた。
『一年タンポポ組』
いい加減にしてください。
此処は本当に元中学校か。
何故廃校になったかわかった気がしないこともない。
「あ…ちょっと、積木…、この教室だよ…。」
加奈は積木がドアを開けようとしたのを止めた。
「このって…その神様らしき人がでるって教室?」
「うん。やっとだね…、積木、アメリカだからね。」
加奈は真剣な顔で積木を見詰めた。
いや、アメリカだからねって…、結局私も連れてくんか…。
まぁいいや…、どうせデマだし……加奈も騙されて…。
積木は呆れながらもタンポポ組の教室を空けた。
───すると───
目映い光が…教室中に…、積木は恐る恐る目を開けた。
ソコには……。
教壇に、禿げのオジサンが座っていた…。
アノ目映い光は多分コイツの頭のせいだ。
推定年齢は五十歳だろうか……。
ソノオヤジは女の子が使うような、
ディズニーのミニーが描かれている可愛いブラシで
頭を叩いていた。
間違いない。
血行をよくするためだ。髪が生えてほしいのだろう。
てか─、コイツ誰…?
そのオヤジを観察し終わると、二人がすぐに脳裏に過ぎった疑問が
ソレだった。
「お前達、タンポポ組に何のようだ…。」
そのオヤジはブラシを恥かしそうに隠しながら言った。
ミニーはやはり恥かしいのか……。
「えーと……コノ教室では願い事を叶えてくれる人が
いるみたいで…、だから着てみたんです。」
加奈は遠慮がちに言った。
「願いを…だと…、何故ソレを……。」
オヤジはまだ恥ずかしながらも訊いてきた。
「あの、私、前からアメリカへ滞在したかったんです。
少しでいいので…、願い、叶えてくれませんか?」
加奈はソノ質問を遮って言った。
てかどうやってコイツが願いを叶えてくれるってわかったんだ。
どうみてもただの禿げたオヤジだろ……。
積木は一人、新たな疑問がでた。
「まぁ……叶えてあげぬこともない…。」
オヤジは考えながら言った。
ええっ…コノ人が叶えてくれるの?
「わーありがとうございます!今日すぐにでも行きたいです!」
加奈は頭を下げていった。
「…ただし一つ条件がある。ただたんに
願いを叶えるわけにはいかん。こっちもボランティアじゃないんでね。」
オヤジはそういいながらあることを積木と加奈に耳打ちをした。
<<禿げを隠したいんだけど…>>
積木と加奈は驚いたような呆れたような顔をした。
「いや、実はね、前来た秋元さん、彼にも
同じ質問したんだけどさー、それがコノブラシでやる
血行を良くする方法なんだけどさー、もう三日も続けてんだけど効かなくてさ…
なんか良い方法ない?」
オヤジはいきなり馴れ馴れしく言った。
「○ーブ2○に行ってみればどうでしょうか。」
積木はすぐに言った。
「……何処そこ?」オヤジは当然のように訊いた。
「うーん、まぁそんな所があるんです。○田ア○子がCMしている…、
まぁ詳しくはCMみてください。」積木は早口に言った。
とにかくコノ禿げとの会話を終わらせたかった。
オヤジは少し考え、言った。
「……よし、わかった。早速今日、アメリカへ連れて行ってやろう。」
ええっ、行くことになっちゃったよ…。
「あの、いきなりでも困ります。お金の問題だってあるし…。」
積木は当たり前の事を言った。
「ふむ……ソレもそうだな…。よし、ではクレジットカードを
あげておこう……。払うの嫌だからあまり使いすぎないでね。あ、
あと家も用意しておくから。以前僕が住んでたところ。」
いや、待て。話が早すぎないか?つーか行きたくないよ…。
そんな積木の思いも知らず、加奈は目を輝かせる。
「よし…あ、あとねー心配だから三日に一回様子見に行くからー。」
オヤジはなんでもないように言い、英語がたくさんかかれた
青色のカードを渡す。
「はい!宜しくお願いします!」加奈はまた礼をした。
ヤダ……マジで行かせる気だよ…コノ人。
行きたくない、行きたくないーーー助けてーー。
積木の最後の言葉は誰にも届かず、今度は本当に目映い
光が前にみえ、積木と加奈は意識を失った……。
はい、二章目ですw
次からいよいよ、積木と加奈のアメリカ生活
が始まるのでご期待ください。