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カース ~親友と天使と化物と~  作者: 世良
最終話 すべての終わり、始まりへ
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それから、これから

 初めに、私がいなかった四日間に起こったことを。

 バロウズさんの死後、カースの研究が大きく進んだらしい。何でもカースの発生のメカニズムが分かったとか、それによってカースを倒された人の特効薬が出来たとか。

 これによって討伐任務のあり方も大きく変わった。カース捕獲用の武器が出てきて、それを使えば2段階カースの人を無力化して捕獲することができる。いわゆる麻酔のような物らしい。

 さらに特効薬のおかげで2段階カースの人ならまだ救えることができるようになったそうだ。

 これには私が大きく関係していることになっている。

 

 私は利用された。

 

 バロウズは私を通してカースの研究を進めた。研究者の強行派も、サチで会わせてくれたあの日も、私がバロウズさんを殺した日含めて何度も。このことはバロウズさんが死ぬと同時に左遷されていた人たちが告発したそうだ。

 それから、バロウズの部屋が捜索されて、そこから私を対象としたカースの情報が大量に出てきて、それで一気に研究が進んだとか。

 ヴァルもバロウズと関与していたことで捕まったらしい。だけど、直接的な関与はなくて、すぐに釈放されたそうだ。あの日もただバロウズに従っていただけ、と言うことらしい。

 でも、この天使ヒルズにはいない。ここではない、どこかで天使として活動しているらしい。

 

 他には天使ヒルズの家主が変わったこと。

 今はアーカムと言う人が家主になった。元々は12階生の人だそうだ。

 一度私たちのお見舞いに来てくれた。

 真面目そうな人で、凄く緊張していてガチガチな感じ。バロウズとは違って凄く若々しいけど、頼りないような印象を受けた。

 カシューさんが言うにはかなり優秀で、家主になっても違和感が無い。正しい判断だと思うって言っていた。

 カシューさんがそう言っているし、多分大丈夫な人だと思う。

 

 私は依然としてうまく喋ることができず、うまく感情を出すことができないでいる。これは、精神に負荷がかかっていただと言う。今まではうまく負荷がかかっていなかったみたいだけど、今回の2段階カースになった時はもう駄目だったそうだ。

 でも、その代わりに私からカースが出てくることはないそうだ。

 バロウズが言っていた最後の確認って、どういういことだったんだろう。

 今は人の身には特効薬は出来ているけど、幽霊に使える薬は出来ていないそうだ。あくまで2段階カースになっている状態に対しての特効薬。

 もしも、もう少し早かったら私は治っていたのだろうか。

 どうしようもない話だから考えない様にしている。

 

 入院から2日目、入ってくると同時に「マキシム様!」と叫ぶ女性が来た。

「ティルか、久しぶりだな」

「聞きましたよ、大変でしたわね。アミも色々と話は聞いていますが、どうなのですか?」 

 何がどうなのか分からなくて小首をかしげる。

「何か喋ったらどうです。その口は飾りですか?」

「よけいなお世話よ」

 言い返すとティルさんは目を白黒させている。同時に目を細めて近寄ってきた。

「ごめんなさい。そう言うことだったの。本当に幽霊になったのですね」

「気持ち悪いから、いつも通りにして」

 面白いくらいに目を大きくしている。そうかと思うとえくぼを浮かべた。

「そうですか、全く。大したものです。それではこれはお見まいの籠盛りです」

 果物が沢山は言ったかごを置くと強気な口調で「私、やっと6階生になりました。もうすぐ追いつきますから、楽しみにしててくださいね! マキシム様、その時は本当に楽しみにしててくださいね」

 言うだけ言って部屋を出て言った。

「楽しみとは、一体なんだろうな? よく分からなかったのだが」

「ばーか」

「なっ、どういう意味だ」

「そう言う意味」

 もう6階生か、本当に追いついて来てるんだ。楽しみにって言ってたけど、告白でもするのかな。

 この男がどう反応するだろう。凄くわくわくする。

 本当の私ならこう思っていただろうか。なるべく心の中でも口に出すようにする。これが私のリハビリのようなもの。何もしなかったら段々と興味が無くなってくるから。

 それが今の私の状態。すべてが消極的で、何も考えない様にしてくる。それを妨げるようにあったことを何度も自分で言って、掻き立てる。そうすると少しだけど戻っているような感じがある。

 もっと、もっとがんばればいつかは。そうなることを夢見て。

 私はあきらめない。

 サチだって、サチなのだから。私だって、私らしさを。

 

 〇

 

 4月に入った。

 私たちは退院して、部屋に戻った。いつものように始まった日々。完全にいつもとは言えないけど、日常は始まっている。

「アミ、日記が入っていたぞ」

 そう言って渡されたのは2冊の日記だった。それには見覚えがある。あの日、書いたけどまだ読んでいなかった私とサチの日記だ。

 タイトルは『自分のこと』。

 内容はこう続いている。

 

 私は、天使ヒルズでカシューさんと一緒にカースを倒しています。カースはとっても悪い奴らです。

 私はずっとずっとカースを倒し続けています。カースを倒すとカシューさんがほめてもらえます。

 私はカースを倒して倒して、すべてをなくせればいいと思っています。

 そしたら、私のように亜美や学校の皆を守るために他の人を殺したりする人がいなくなるはずだから。

 私は人殺しです。通り魔は私で、私がすべて殺した。それでも亜美は許してくれるかな。許してくれなくても良い。ア亜美がミが聞いてくれるって言ったことが一番うれしかったから。

 でも、私を嫌わないで。お願いします。

 

 これで内容は終わっている。

 次のページにも何かが書かれている。

 

 アミはずっと一緒だよね。

 変わっても変わらないよね。

 

 走り書きの短い2文。

 歪んだ字。しかもかなり濃くて反対のページにも黒鉛がうっすら移っている。新しく書かれた物かもしれない。

 変わっても、これは私のことだろうか。

 変わっても変わらない、矛盾してるよ。でも、そうありたい。

 他のページには何も書いていない。これで終わりのようだ。

 次に私の日記を手に取る。どんなことをかいていたのか、大体は思いだしてきた。自分のことを思い浮かべながら日記を開いた。

 

 私は木城亜美、ここではアミとしてマキシムの共闘者をしているよ。

 サチ、私は先に謝っておくことがあるの。

 研究所の地下であったあの時、私はあなたを殺しそうとしていました。

 それは自分の知っているサチと今のサチが違っていると言うだけで、今のサチを知ろうとしないで、自分の知っているサチだけが本物と思っていたからだと思う。

 サチがどうして私にあんなことをしたのか、理解しようとしないでずっとずっと、サチを別の物と思っていたこともありました。

 今のサチだってサチなのに、本当にごめんなさい。

 だから、私は今のサチを知ろうと思うの。これからはいつでも会えるし、お互い色々知り合える。この交換日記だって一つだと思う。

 これからは、ずっと楽しい日々にしよう。マキシムとカシューさんとサチと私でここでの生活を。今までで一番楽しいと思えるような場所に。

 何と言うか交換日記と言うよりただの日記になったね。もしも書きにくかったら好きな物でも書いてみよっか。

 それじゃあ、サチの日記楽しみにしてます。

 

 私の日記はこれで終わっていた。読んでいるうちに楽しそうに書いている自分が脳裏に過ぎった。昔の私はこんな感じだったんだ。

 今の自分の中にスッと何かが入ってくる感じ。

 ここでの生活を今までで一番楽しいと思えるような場所に、か。こんな風にできたら、いやしないといけないんだ。


「マキシム、今度日記をカシューさんの所へ入れといてくれる」

「ああ、良いぞ」

 ちゃんと返事を書いておこう、片方には今の私を。もう片方にはサチの言葉の返事を。

「そういえば、シンドウから連絡が来ているぞ。任務に行かないかだと、どうする」

「うん、いく。まだまだやらないといけないし」

 まだ50万E貯めれてもいない。それにさらに上に上がってサチとより近い位置にいておきたい。

 そうなれば、サチとも気軽に会えるようになる。日記に書かれていた事の近道になるはず。

「そうか、分かった。明日だからな。久しぶりだからって気を抜くなよ」

「うん、大丈夫」

 

 そうして、私は眠りにつく。何もかもを忘れない様に、全部を成し遂げるために。

 

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