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カース ~親友と天使と化物と~  作者: 世良
1話 私は死んだ
5/51

面接

 それから駅に行き、何駅か向こうの所へ行くこととなった。

 男は切符をちゃんと買い、私はお金を払わず中へ乗り込んだ。揺られる電車の中、男は一言も話さずじっと前を向いたまま動かない。周りを見回しても誰も居ない、元々人の少ない所だからだけど。

「日記読んでていい?」

「持ってきたのか、良いぞ」

 周りを見回しながら男は言う。その言葉を聞いて私は日記を見始める。

 懐かしい記憶。書き始めたのは中学生になった時に買ってもらって、それから何日か書いてたけどすぐに止めてた。毎日書いていたけどすぐに飽きたからだった気がする。

 読んでみると十日くらい書いた後、日付が一気に変わっている。それからサチが私の家に遊びに来た時にこれを見つけて、それでまた始めた、それがこの日付。

 それから何日かおきに書き続けている。今年の5月で日記は終わっていた。

 理由は分かっている。この日から書くことなんてお思いつかなかったから。

 今の私にはこれが必要だと思ったから、だからこれを持ってきたんだ。

 筆箱からシャーペンを出して書いていく。今日のこと、私が亡くなったこと、そしてこの男と一緒にいること。あったことをみんな書き留めていく、忘れないように。

 

 

 いつまでも電車に乗ったまま。日記も書くことが思いつかないから退屈。

「これからどこへ行くの?」

「私の仕事場だ、次で着くぞ」

「仕事場?」

 男は声色を少し低くして話し続ける。

「これから、色々と面倒なことになるかもしれない」

「面倒って、何?」

「まあ、着けば分かる。大丈夫、信用してくれ」

「だったらサチのことを教えてよ」

「それは無理だ」と、断られると同時にアナウンスが鳴った。


 改札を抜け、駅から出ると周りはビルが立ち並んでいた。この町には何回は来た事がある。駅から少し行った所に映画館やショッピングモールがあって、親や友達と一緒に遊びに来たことのある所だ。

 思い出しつつ見回しているとスーツの男性が一人寄ってきた。

「マキシム様ですね、付いて来てもらいますよ」

「ああ」

 マキシムの返事と共にスーツの男に枷のようなものを腕に付けられ、日記が地面に落ちてしまった。

「ちょ、ちょっと! 何よこれ!」

「あなたが木城亜美ですね。暴れるのなら大人しくして頂きます」

 その言葉に圧力を感じて言い返すことが出来ずにそのまま引きさがり、言われた通り大人しく連れて行かれた。

「日記は持っておく」

 ずっと日記の方を見ていたらマキシムが拾ってポケットに入れた。

 この男は捕まって無いんだ。やっぱりはめられたのかな。怒りよりも諦めの方が強い。段々とどうでもよくなってきた。

 どうあがいても、私にはどうしようもないだ。凄く悔しい。

 気のせい? 一瞬、夢の時と似た映像が見えた様な。何でもいいや。

 

 

 駅から歩いて数分、周りは高い建物が立ち並ぶビル街。その一つの建物の前に止まった。入口の所に『天使ヒルズ』と、書かれている。

「では中へどうぞ」

スーツの男は淡々と言って中へ連れられた。

 中に入ると広いフロアが広がっていた。ホテルのフロントのような広いフロア、右側にはテレビやソファー、左側の壁は階段とエレベーターがあった。スーツの男の先導でエレベーターに乗る。中に入ると最上階の13階のボタンが押された。

 数秒して到着のチャイムが鳴り、扉が開かれる。開いた先は廊下が続き、その先に扉があった。

「では中へどうぞ」

 さっきと変わらない声で中へと案内される。

 中は廊下が広がっていた。5メートルほど先に扉、途中にも右側、左側にそれぞれ一つずつ扉がある。スリッパに履き替え、奥へと進む。

 途中の右側の扉で立ち止まると「こちらへどうぞ」と、言って扉が開けられた。

 中は凄く簡素な部屋が広がっていた。目の前にはイスが横に並んで二つ、座れと言わんばかりに置かれている。

 マキシムは何も言わずにそのイスに座ったのでその横に座った。テーブルを挟んでイスが一つ、その向こうには扉が見えた。見回しても他には何も無くて、窓すらない。まるで監禁でもされているみたい。

「ねえ、何が始まるの?」

「面接のようなものだ。気楽にやってくれればいい」

 一分もしないうちに正面の扉から人が出てきた。顔に黒いマスクを被っていて表情は読めない。服装は体の曲線が分かるほどピチピチの黒いスーツ。そんな不気味な人が対面して座った。

「それでは、木城亜美の処遇についての会議を始めます」

 抑揚のない機械のような声でこの面接のようなものが始まった。

「彼女には強力なカースが宿っていたとの報告が上がっています。そのため、研究への提出の要請がきておりま――」

 話を最後まで聞くことなく男が声を上げた。

「彼女は私が共闘者にする」

「それはつまり木城亜美をマキシム様の共闘者となることでよろしいのですね」

「あぁ、そうだ」

「ですがあなたはまだ共闘者を得る枠が得られておりません」

 その言葉に対抗するように男が書類のようなもの机の上に出した。黒スーツの人はそれを手にとりながら話し始める。

「なるほど、カシュー様の推薦状ですか。わかりました。ですがこちらの有効期限は1年ですのでご注意を。では最後に、彼女の意思を問います。あなた、木城亜美様はマキシム様との共闘者となることをを誓いますか」

 いきなり私に話を振られた。焦ってキョロキョロしていると男はこちらを見ていて、黙って頷いてくる。

 つまりこれは、応じろと? 

 流されるまま了解の返事をした。すると黒スーツの人が淡々と話し始める。

「了承しました。では、後ほど木城亜美様にはここでの生活を訓練と言う形でお伝えしますので、それではこれからよろしくお願いしますね」

 精密な機械のようにきっちりと立ち上がり、枷を付けられたまま黒スーツの人と一緒に奥へ行かれた。

 私はとても軽率な答えをしてしまったと思う。共闘者とは何なのか、ここは一体何なのか、今の私には何も分からない。

 

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