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ついに、会える

 私は家でお留守番をしていた。カシューさんに言われた通り。

 実際、体調は優れない。頭痛は治まってきてはいるけど、風邪を引いた時のように体が重い。

 することも思いつかないから日記を書いてみることにしてみた。

 書いた内容は今日会ったことすべてだ。お母さんにあったこと、カースになったこと、そして、サチの手がかりがとうとう目の前にまで来たこと。

 今週中、か。

 正直、どういう話を聞かされるんだろう。カシューさんの様子も気になるし。わくわくはするのに、嫌な感じもするのはなんでだろう。

 サチのことが分かるんだよ。良いことじゃない。今の今までこのためにやってきたことだし。

 書くことが思いつかなくなった。しょうがなくテレビを付けていても楽しいとは思えない。ボーっとしているだけの時間。ただ時間だけが過ぎていった。

 

 インターホンが聞こえる。

「おかえり」

「ああ、ただいま。すまんな遅くなって」

 どことなく、いつもよりも疲れているような印象を受けた。

「ううん、まあ遅くなりそうなのは分かってたから良いよ」

 これ以上の会話は思いつかなかった。と言うよりどことなく話しにくかった。いつもなら、どんな話をとか聞くけど、聞くに聞けない。

 まあ、いつも適当に言いはぐらされているけど。

 マキシムを見るたびにあの時のカシューさんの声と表情を思い出す。あれは普通じゃなかった。いつものようにマキシムはシャワーを浴びに脱衣所へと入っていった。

 それに合わせるように『ピピッ』という電子音、私の携帯のメール受信音だ。

 タイトルは『日時の決定』。内容も集合場所は研究所、日にちは明後日と言うことが書かれていた。

「マキシム! このメール!」

「ああ、そうだな」

 メールを見せてもいないのに、脱衣所からマキシムの返事がきた。マキシムはこうなることがもう分かっていたように。


 〇

 

「えっ、今日は無理なんですか?」

 次の日、いつものように一緒に討伐任務に誘ってきたシンドウさんは予想外だったのか、不思議そうな表情をして言った。

「ああ、今日はする気になれなくてな」

「ごめんね、シンドウさん」

「明日は大丈夫ですか?」

 明日は、研究所に行く日だ。

「悪いな、明日も無理だ」と、淡々と答えた。

「そうですか、では開いてる日ができたら教えてくれますか?」

「分かった。すまんな」

「いえいえ、私はいつ現れるか分からないのでひきこもっています。それでは」

 扉が閉められると足早に部屋へと戻っていく足音が聞こえた。

「マキシム」

「どうした?」

「ちょっとね、昨日から少し様子がおかしいから」

「そうか? いつも通りのつもりだが」

 そんなワケが無い。メールが来た後から、明らかに様子がおかしい。ずっと考え込んでいて、ただでさえほとんどない会話が一切なかった。

「明日のこと、何かあるの?」

「いいや、何も無いさ。アミは何も気にせず行けば良い」

 言うだけ言うと奥へ行き、テレビをボーっと見ている。

 

 エレベーターは地下へ向かう。何度か来たことのある場所、研究所だ。

 中には私とマキシムとバロウズさんの3人。誰も喋ろうとしない。バロウズさんはじっと前を見ているだけ、マキシムはずっと俯いたままだ。

 エレベーターの動く音がするだけ。何も喋ることなく研究所へ着くチャイムが鳴った。

 バロウズさんの案内で奥へと進んでいく。数分、そして着いたのは何部屋もの奥。

「さて、君はこの中に入っててもらおうかな。マキシムくんはこっちだ」

 ただならぬ雰囲気。私は流されるまま部屋へと入って行った。

 中は広い部屋。何も無い、ただ広いだけの白い部屋。あるのは一つのイスだった。

「そこのイスに腰掛けたまえ」

 イスに座ると、話が始まった。

「アミさん、君は甲本幸さんのことを知りたい。そう言ったな」

「はい」

「それでは、教えてあげよう。去年の5月のことだ。甲本幸が亡くなった日を。まず、君の町で通り魔事件が多く発生していたことを知っていただろうか」

「うん、覚えてる」

 学校でも連絡はあった。サチが亡くなった日に近いからよく覚えている。でも、犯人が捕まったと言う話も無くて、いつの間にか消えていった気がする。

「それはカースの仕業であり、私たちは君たちの町にいる2段階カースを倒すため、カシューとその部下マキシムがその任務にあたっていた」

 なんとなく、それはあっさりと理解出来た。今まで倒したカースに人殺しをした人が混じっていたこともある。

 でも、それって。

「まさか、サチがそれじゃ――」

「まあまあ、結論に急がないでくれ。カシューくんと、その時の部下であるマキシムくんはカース討伐に駆り出されていた。カースの数は2段階カース2体だった。さて、ここから5月13日。甲本幸が亡くなった日に移ろう」

 バロウズさんはせき込み、声を整えた。

 ここからが本題。私の知りたいこと。

「甲本幸はカースだったよ、2段階のね。そしてもう一人カースが彼女と協力、いや彼女を利用していたそうだ、ここは今、マキシムくんに教えてもらったばかりのことだから私には分からない」

「ねえ、マキシムが教えてよ! あんたよりも詳しいはずでしょ!」

 何にもない部屋に響く声、その答えは沈黙のままだった。

 向こうで、聞き合ってくれているのか。長い静寂が苦しい。早く、早くして。

「彼は話したくないそうだ、では話を続けよう」

「ちょっと!」

「さて、甲本幸は彼女と利用していたカースを倒した。その時に、彼女を共闘者として迎えた。先ほど話したカシューくんだ。その時にマキシムくんは3階生になった、ということだよ。アミさん、約束通りすべてをお教えした。満足したかな」

 こっちの言葉も聞かず、一方的に事実を突きつけられた。

「本来ならここで終わり、なのだがね。君に一つだけ選択肢をあげよう。君は、甲本幸に会いたい、そう言ったね。実は、ここにカシュークンにも来てもらって――」

 いきなり言葉が途切れる。数秒してノイズが少しして声が流れ始めた。

「さあ、会いたいか。会いたくないのか、君の言葉一つで決まる。さあ、どうする」

「私は、……会いたい」

「それでは、どうぞ」

 その言葉と同時に目の前の壁が黒く見えた。壁が開かれて扉が開かれているように見える。そこから一人、誰かが出てくると後ろの黒さが消えて、真っ白な壁と人影が見える。

 私はすぐに立ち上がり、気づけばそれに向けて歩き、走っていた。

 見えたのは私と同じローブを着ている人。この服を着ている、つまり私と同じ幽霊。

「サチ!」

 私の言葉に合わせてこっちに顔が向く、表情が見えた。記憶通り、何一つ変わらない女性の顔がそこにはあった。

 

「いやーーー!」


 目が覚めるような叫び声。その声はサチからだった。

 いきなり叫び、縮こまる。手には銃が握られていてこちらに向けられている。その銃口は震えていていながらも私の体を向いている。後ろを向いても誰もいない、これは私に向けられたものだ。

「サチ? ねえ、私だよ。サチ!」

 小さく何かを呟いている。「来ないで」確かにそう呟いている。

 分からないけど異常だ。明らかにおかしい、なぜか私を見て怯えている。こんなサチを見るのは初めて、普段はもっとしっかりしていて、頭が良くて、私なんかよりも凄く出来の良い、憧れるほどに優秀で、綺麗な。そんな幸が、今目の前で壊れてしまってる。

 誰が、誰がこうした。思い出せ、話を。

 こうした原因がある人、マキシム。カシュー。バロウズは彼女のことはほとんど知らないっていっていた。他に出てきた人……サチを利用した、カース?

「サチ、カースが悪いの? カースが悪いんだね?」

 なるべく優しく、刺激しないように声を静かにして聞くけど、彼女は叫び続けるだけで何も進まない。

 そっと彼女の肩に触れた瞬間、激しい音が響いた。凄く激しい。いつも聞く音とは少し違う、でも聞きなれない音ではない。

 サチが私を撃った。銃口は私の顔の横を通り抜ぬけて、耳元で発射されて、当らなかった。

 私は音にびっくりして、尻もちをついた。あまりに唐突で、何を考えているのか分からない。サチだけど、私の知っているサチじゃない。

 サチは壊された。

 続けて銃声が鳴る、彼女の銃は私が立って居た位置を乱雑に何度も撃ち続ける。4,5発してカチッ、カチッと弾が無くなった銃を撃つ音が聞こえ始めた。

 私は酷く冷静だった。それはサチのような物に対して、ある感情が純粋に向けられたからだと思う。


 こんなのは違う。


 狂乱している目の前の何かに、私は剣を構えた。

 サチと私の間に何かが下りてきた。黒い影、カースだ。それも見覚えのある、口が耳まで裂けた私のカースだ。

 変わり変わりにカースと私の顔がちらつく、私の顔は凄く歪んでいて、不気味。自分じゃないみたいで自分の顔なのに、恐怖した。

 割って入ってきたカースがこっちに向かってきて、私の体に入ってきた。視界は一気に暗くなった。見えるのはサチだけだ。手には剣を、それは上に掲げている。だけど、それを振り下ろすことはできなかった。

 身体が動かない、何で?


「手が止まっているぞ、何をやっている」


 男の声と同時に、サチの前に誰かが現れた。こいつは、ヴァルだ。

 すでに遅かったみたいだ。ヴァルの姿が見えたと同時に視界がぶれた。歪み、視界が明るくなったっと思ったら、真っ黒になった。


 〇

 

 目を覚ますと、自分の部屋のベッドの上で横になっていた。

「アミ、起きたか」

「えっと、何で寝てたんだっけ?」

「それは、徐々に思い出してみると良い」

 その声は少し言いにくそうな感じだった。気になってそのままの体勢で考えてみる。すると、直前のことがだいぶ前のことのように入ってき始めた。

「いたっ」

「大丈夫か?」

「うん、これくらいは」

 頭痛だ。恐らくヴァルにやられた。殴られたのか、蹴られたのか、とにかくなにかを頭にされたみたいだ。頭を上げると頭痛がして体を起き上がらせることができない。

「アミ、一つだけ、願いを聞いてくれ」

「何?」

「……その頭痛が無くなったら、カシューの所へ一緒に行くぞ」

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