問題
それから数十分くらい、ずっと頭を撫でつづけていた。ハッキリとした感触分からないけど、お母さんの手が当っているくらいは分かる。時折強くなったり、弱くなったりと。
それが終わるとマキシムとカデナさんの前に座りなおして頭を下げた。
「今日は、本当にありがとうございました。先ほどは、本当にすいません」
「いえ、気になさないでください。私たちは亜美さんに会わせてあげたかっただけですから。それでは、彼女は帰らないといけないので、私たちは彼女をお見送り致します」
「亜美とは、もう会えないのですか」
「ええ、彼女は迷子でしたから、私たちはこういった人たちの悔いを残さないように、天へとお送りするのがお仕事ですので」
「そうですか。亜美、ありがとうね。……ですが、一つおかしいことがあるのです」
「はい、なんでしょう」
「以前、私は見かけたのです。亜美のことを、それに……ちょっと待ってください」
そう言うと立ち上がり、いそいそと何かを探しに上の階に上がって行った。
お母さんがいなくなった静かな部屋にため息の漏れる。
「ふう、何とかうまくいけそうね」
「そうだな」
「どうしよう」
私は全然安心なんて出来なかった。お母さんがこれから持ってくる物を想像すると余計に。
「どうかしたのか?」
「今から持ってくる物が一番問題のある物だと思う。それがこうなった原因かも」
「何だそれは」
「多分、制服」
階段の軋む音が近づいている。お母さんが下りてきている。二人の前に来ると案の定、私の制服がテーブルの上に広げられた。
「これなのですが、実は亜美が無くなった日から2カ月ほど頃でしょうか、亜美が部屋にいてコレを残していったのです」
二人は唸りながら「なるほど」と、頷くだけだった。
「実はこの時、亜美が居たのです。窓の所に、確かに亜美が」
「それで、亜美さんはその後どこへ」
「私の顔を見るなり、窓から飛び立っていきました。私はその時に白い布を投げられて、それがこの布です」
と言って出される破れ破れの布切れ。これはカシューさんの物だ。
「亜美は、何と言っていますか」
「そうですね、ちょっとお待ちください」
そう言ってカデナさんがこちらを見てきた。
「え、えっとすいません」
それ、私が来ていた服なんですって言ったら、私が亡くなったはずの日のことが矛盾してしまう。本当に、何で私この日にここへ来たんだろう、服だって着替えて、本当に馬鹿。
どう答えていいか分からなくて首を振って返事をした。
「本人は身に覚えがないそうです。……そう言えば、一つ彼女を送らないと彼女が危険な目に合うのです、もしかしたらそれがそちらに現れたのかもしれません」
「それは、一体どのような」
「悪霊でして、本人と似た姿をしている物です。本人が残っているとそれが化けて出てくるそうで、もしかしたら会ったのはそれかもしれません」
「な、なるほど」
戸惑いながらも信じてはいるようだ。
この話、どことなくカースに似ている気がする。もしかしたらそれと照らし合わせてるのかも。
もし、ここにあの時のカースが着たらどうなるんだろう。ここで、私が2段階カースになったら、そしたら話にまとまりがつく気がする。
ダメだダメだ、こんなこと考えて本当に着たらどうするの。でも、制御は出来るだろうし、お母さんに変な心配をかけなくても――
「えっ」
思わず声が漏れしまった。マキシムはその声に気づいて一瞬こちらを見た。
今、何かが見えた。外だ、それも見覚えのある。絶対にここの近く、間違いない。たまにチラつく暗い映像が私たちを映している。
庭の方を見ると、何度も見たカースがこちらを見ていた。




