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カース ~親友と天使と化物と~  作者: 世良
8話 生きている私
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家に

「さてさて、着いた着いた」

 本当についてしまった。目の前には私の家、来たのは何カ月ぶりか、何一つ変わりはない。入口には車が無くて、お父さんはいないのが分かった。

 でも、お母さんは中にいるかもしれない。

「それで、どうするつもり?」

「さあ、それはお二人におまかせー。俺はこういうのは無理だし、だから来てもらったんだしねえ」

 二人はため息をつく。口をそろえて「こういう奴だった」と、頭を抱えながら声を漏らした。

「無理、しなくて良いよ。私は気にしてないし」

「ダメでしょ、アミちゃん。このまま両親を見て見ぬふり出来ないんでしょ。だから悩んでたんだから。こいつの案は突拍子の無いものだけど、それでも何か出来るかもしれないし、ね?」

「そうだ、私たちがアミの代弁をすることだって出来る」

 慰めるように肩に手をのせながら、任せろと言わんばかりの優しい表情をしている。

「う、うん。ありがとう」

 私が落ち込んでいたから、皆心配してくれたんだ。

「それじゃあそれじゃあ、これをどうぞ。これを見てどうたらこうたらって言えばアミちゃんの関係者ってことが伝わりやすいっしょ?」

 そう言って手渡されたのは私の顔写真が貼られたあの紙だった。

 

 〇

 

 マキシムがインターホンを押した。少しして、扉の向こうから足音が近づいてきているのが分かる。そして、ゆっくりと開けられた扉からお母さんが見えた。

 あの時から特に変わっていない、いつも通りのお母さんだった。元気みたいでよかった。

「どちらさまでしょうか?」

「こちらの紙を見てきたのですが」

 紙を見せると表情が鋭くなったのが分かった。だけど、声は冷静で「中へどうぞ」と、淡々と答えると扉を開けられて中へと案内された。

 

 マキシムとカデナさんは奥へと入り、居間へ。中は特に大きな変化はなかった。でも、細かい所に変化が見えた。

 山積みの新聞紙、それと、山積みの電信柱にもあった私の顔写真のある紙。今に入ると、私の仏壇があった。中央に灰色の私の顔写真、友達の家でも仏壇は見たことあったけど、まさか自分の仏壇を見ることになるなんて、不思議と気分は落ちついた。

「アミは、本当に生きているのでしょうか」

 いきなりお母さんが言った言葉はこれだった。周りは静まり返った。私だって何も言えない。

 何を意味してこんなことを言ったのか、マキシムを見ると無表情のまま固まっている。カデナさんは少し険しい表情。

「すいません、いきなり。お二人はどういったことで来たのですか」

 お母さんが聞くと、二人は顔を合わせた。口パクで何かを言いあっている。

「私たちは霊媒師をやっています。ここへ来たのも亜美さんが連れて来てくれたのです」

 言葉の無い口論を終えると口を開いたのはカデナさん、言葉を聞いたお母さんの表情が一気に険しくなった。

「帰ってください」

 低い声で、そう言い捨てた。

「え、ちょ、ちょっと待ってください! せめてお話だけでも」

「早く出て行かないと、警察を呼びます。帰って!」

 お母さんは明らかに冷静じゃない、気でも狂ったんじゃないかと思うくらいに声も表情も尋常じゃない。怒っているのは何度か見たことあるけど、ここまで酷いのは初めて。

「亜美さんのお母さん、一度だけ、信じてくれ、ください。お願いします」

 追い出そうとするお母さん、それに対抗するように大声で叫んだのはマキシムだった。腰を折り、ピリリと来るような声が響く。

 一気に周りが静まった。お母さんも、カデナさんも、私もマキシムに釘づけ。

「分かりました、一度だけです」

 さっきとは違い、静かなお母さんの声が聞こえた。

 

「それでは、紙と書く物をお願いできますか?」

 カデナさんが聞くと印刷された無いコピー機の紙と、鉛筆がおかれた。

「では、始めます。それでは、マキシムさんどうぞ」

「……そこにいる木城亜美よ、自信の伝えたい言葉をここに記せ」

 やたら演技の入った声でマキシムがいった。凄く不自然だけど、ありがとう。

 置かれている鉛筆を手に取った。すると、一気に息を吸うような音が聞こえた。見るとお母さんが、眉間にしわを寄せつつ、裏返った声を漏らしている。

『お母さん、久しぶりです。元気ですか』

 そう書いてお母さんの前へ紙を擦らした。

 手に取ると「亜美の字」と自問自答していく。

「亜美は、そこにいるのですか?」

「ええ、確かにそこに座っていますよ」

 いきなりお母さんが立ちあがった。そして私に手を伸ばした。ゆっくりと、私の頭の上に手を伸ばした。

「亜美は、どこら辺にいますか」

「もう少し下です。はい、そこです。うっすらと感じませんか、彼女の感触を」

「はい、はい……」

 徐々にお母さんの声がかすれて聞こえる。ちょうど私の頭の所を撫でている。少しずつ下へと降りて、肩を擦り、顎の辺りから顔の輪郭を確かめるように再び上へ、そして頭を撫で続ける。

「亜美が、います」


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