部屋に帰って、それから
「ねえ、お父さんもお母さんも私を探してるんだよ。あの時に、会っちゃったから。どうしたらいいの、分からない。分からないよ」
マロウくんと別れて、部屋に戻ってすぐに私はマキシムに言い寄った。
マキシムは私を落ちつかせるように優しく肩に手を置きながら頷く。
「そうか、あの日はあの町にいたんだったな。だがどうしようもないこともあるんだ。アミは今、何をすることが大切か、考えてみろ。もう、お前はあっちの世界とは別の幽霊になったんだ。もしも会った所でどう――」
「分かってる! だから困ってるんじゃない! もう良い!」
勢いで言い捨ててそのままベッドにうずくまった。
分かってる。今の私に出来ることなんて、何も無い。もう死んでるんだ。どう声を掛けたら良いのかも分からない。だからあの時だって逃げたんだ。
出ていくドアの音がした。誰も居ない、静かな部屋。
この静寂が辛い。
頭の中でグルグルと意味の無いことが回り続ける。
私のせいで、お父さんもお母さんもこういった活動している。二人とも私が生きていると思って、何にも気づけてなかった。あの日から2ヶ月くらいずっと、ずっと。
頭の中で、どうしようと言う言葉が並べられるけど、その答えは出てくれない。考えれば考えるほど嫌になる。本当に嫌、嫌だ、この気持ちも嫌だし、嫌な何かが来る感じもする。
ダメだ、このままじゃ。またアレにきそう。そんな感じが聞こえる。
またドアの音が聞こえた。続けて閉じる音、おかげで我に返った。
起き上がるとマキシムと確かカデナさん。
「思ったより元気そうだけど?」
「あ、あぁ。そうだな」
「マキシム? 怒るよ。せっかく気分が落ちてるって言うから――」
会話を遮るように、大きな音、そして、現れた男が大声で叫ぶ。
「マキシム! なぜお前の部屋にカデナちゃんを連れ込んでいるんだ!」
「なっ、ヒロ! 何しにきてんの!」
「君のためならいつでもどこでもー!」
何だこれ、何でこんなことになってんの? 目の前で、ワケの分からない漫才が広げられ、真面目に考えるのもアホらしくなっていく。思わず、笑いがこみ上げる。
笑いは出るけど、すぐに止まった。
「あら、結構重症?」
「どしたのどしたの? なんでアミちゃんこんなに気分落ちてるんだ?」
「それは、まあ色々と」
「アミちゃん、抱えこまないで。話すと楽になるから、ね?」
カデナさんに諭されて、テーブルを囲んで私を含めて4人が座った。そして、あの時のこと、電信柱でのこと。説明をし終えるとヒロさんが明るい声ながら真面目な言葉を話だす。
「アミちゃん、気にすることない。悩む必要はないんだ」
「何で?」
凄い気楽で、自信満々な表情。不思議と言葉に信用が出来そうな気がした。
「アミちゃんの居場所は今ここなんだよ。あっちにはもう戻れない、幽霊なんだ」
「ちょっとヒロ! ごめんね、言葉を選べない男で」
「ううん。でも、あの時私を見たお母さんは生きていると思っている。そう思えるとどうにかして誤解を解くことが出来ないの? 何か、何か方法はないのかな」
静まり返った。みんなの表情が苦い。
私は馬鹿だ。自分でも分からないことを押しつけている。
「よし、会いに行こう」
いきなりの声、ここにいる他の3人、私も含めて呆れた声をだした。
「おい、お前何を言っているのか分かっているのか」
「分かってる分かってる。だから、行くんだろ? さあ、行こう行こう」
無理やり手を掴まれて外へと連れて行かれる。
「ちょ、ちょっと!」
「ほらほら、カデナちゃんも、ついでにマキシムも行くぞ」
有無も言わさず連れて行かれる私。マキシムとカデナさんの二人は数秒遅れて追いかける形で部屋を出ていくことになった。




