戦闘開始
「来ないのか、ならばこちらから行くぞ」
「ちょっと待って! すぐにやるから!」
どうしようか少し考えていただけなのに、どれだけやる気満々なの。
「ふむ、お前は幽霊らしくないな。と言うことはお前がアミと言う奴か」
「そうだけど」
「なるほど、確かに生きているな、楽しみだ」
なんなのこの筋肉馬鹿は。なんでそんなに嬉しそうなの、気持ち悪い。
これもお金のため。そして、サチがいるか確認するため。
私は剣を構え、斬りかかる。
「ふむ、荒いな。だが、人らしい戦い方だ」
「何よそれ、ああもう!」
振っても振っても攻撃が当らない。何をやってもダメ。振り方を変えても、緩急をつけても。自分なりにフェイントとかしてもさっぱりダメ。
途中、さっきの幽霊と同じように剣を止められてしまった。
「全く駄目だな、だがもう少し練習すればよくなるだろう」
「別に、強くなるつもりなんて無いし」
「ふむ、ならなぜ共闘者として戦う? お前は他の奴と違って戦う必要もないだろう。マキシムはそう言う奴ではない、そう言った気がするが。」
「それは……関係無いでしょ!」
反論の勢いで剣を引くけどびくともしない。
「そうか、なら――」
〇
「あれ? 痛っ」
目を開けると天井を見ていた、ここはさっきとは違う。
見覚えのある光景、部屋の中だ。
見える光景と同時に頭痛が走った。この刺すような痛み、何かされたっぽい。痛みのせいでまともに考えれない、何があったか全然覚えてない。
「大丈夫か、アミ?」
声と一緒にマキシムが現れた。
「何があったの?」
「負けたんだ、頭に一発拳をくらってな」
なるほど、それでこの痛み。そう言えば何かが飛んでくるような音がした気がする。あれって腕を振る音だったんだ。
徐々に直前の記憶が戻ってくる。言われたことを思い出した。何のために戦っている。そんなの、共闘者になった時の借金を返すために戦っているはず。
「マキシム」
「なんだ」
「50万E貯めたら私ってどうなるの?」
「正式に共闘者になるだろうな。まあ今も共闘者ではあるが」
「そうだよね。もし貯められなかったら、どうなるんだっけ?」
「恐らく本来行く予定だった研究所の方へ行くことになるだろうな。急にどうした?」
「ううん、何でもない」
貯められなかったら、研究所行き。と言うことはサチの手がかりは2度と手に入らない。だったら、私の戦う理由は、これで、いいはず。
「カシューさんってさ、共闘者いたよね?」
マキシムの表情は固まってみえた。
「前に見たから。ほら、私がカースになった時に」
「そうなのか、それがどうしたんだ?」
「どうして今日来てなかったんだろうと思って」
「さあ、私には分からんな」
「ねえ――」
「そう言えば、張り紙の話があったな。聞いてみないか」
『カシューさんに聞いてみて』と、言いたかった。そうすれば、マキシムは困っていたかもしれない。だけどそれだったら、確実にそれが、正解かもしれない。
でも、出鼻をくじかれて、勇気が出なくなった。元々、そんな勇気なんて無かったのかもしれない。
「うん。そうだよね」
このへたれ。
「……」
インターホンを押すと無言のマロウくんが顔を出してきた。
「アルアエはいるか?」
頷くと扉を閉じた。すぐにまた扉が開くと「……ああ、マキシムさんとアミさん。何か?」ととぼけた口調で答えた。
「この前の張り紙のこと聞きたいの」
「……なるほど。マロウ」
アルアエさんの後ろに隠れていたマロウくんが前に出て、ついてこいと言わんばかりに手招きしている。
「……あとはマロウについて行けば良いですよ、それでは」
「アルアエさんは来ないの?」
「……今日はゆっくりしたいので。マロウ、遅くなる前に帰ってくるのですよ」
〇
何も喋らないマロウくんについて行き、30分ほど。急に立ち止まると電信柱に指を指した。
私の町からかなり離れている電信柱に学生服姿の私の写真が印刷された張り紙。『この人を探しています』という文字が大きく書かれていて、下に私の名前。この字も見たことある。
この字は母さんの字だ。
「どうしよう、私のせいだ」
「どうした、アミ」
「だって、あの時に会ったからだから。どうしよう」
家に入ったあの時、お母さんに顔を見られた。今の今まで忘れてた。ちゃんと何かをして置かないといけなかったのに。
「……気にするな。帰ろうか」
いきなり、肩に手を置かれて我に返った。
マロウくんを見ると頷いている。その表情は少し不安げにも見えた。
心配、掛けてるんだ。でも両親にも……どうしよう、何をしたらいいの。




