久しぶりの任務
次の日、任務が始まった。今回は捕獲任務。8階生から捕獲任務が復活しているそうで、受けてみることとなった、ヒロさんと。
「さてさて、行きますかねえ」
「う、うん」
「緊張しないしない、なーに少し手伝ってくれるだけですぐに終わるって」
マキシムはまたカシューさんに呼ばれていて居ない。代わりにヒロさんに頼まれていたんだけど、捕獲任務へと行くこととなった。
「マキシムからは見守っててくれって言われただけだし、それにお金が必要なんだろ?」
「うっ、それはそうだけど」
今回の任務は12000E、分けても6000E。捕獲任務は得意って言ってたし、大丈夫だよね、多分。
「さてさて、あの男が目標だねえ。分かりやすい」
町中でやたらキョロキョロとしている男性。上下スーツという服装からして会社員っぽい
人ごみの中、ゆっくりと付いて行く。
しばらく歩いて行くと公園に入り込んだ。町中と比べると人通りは少なくて、通るのはジョギングをしている人くらいだ。
「うーん、アミちゃんこっち。来て来て」
手招いているヒロさんに近付くといきなり肩を掴んできた。
「えっと、何を?」
「身体に力入れちゃだめだ。分かったね」
私を盾にするように前へと突きだし、そのまま押してきた。よろけながら目の前の会社員にぶつかった。
派手にぶつかったわけではなくて、軽く体がぶつかる程度。
「あ、えっとすいません」
「は、はあ」
ぶつかられた男性は戸惑いながら答えていると、後ろからドスの利いた声が響いた。
「おい、何してくれてんだ!」
「は、はい?!」
男性も私も背筋が一気に伸びた。振り向くとその声はヒロさんの物だった。
「そっちがボーっとしてたからうちの子がぶつかっただろうが。お前が悪いよなあ、なあ?」
言い寄られた男性は答えることもできずに硬直、私もその光景を黙って見ていることしか出来なかった。
「ちょっと、あの車に乗ってくれるか? あそこで話をしようじゃないか。逃げたら、少し痛い目に会うかもなあ」
そう言いながら腰につけていたナイフをちらつかせてきた。
男性はと言うと何も叫ぶこともなく、目を潤ませながらゆっくりと公園の端に呼ばれていた車の中へと連れて行かれた。
ずっと頭を項垂れていて、無気力のまま車へと詰められ連れて行かれた。
「終わりっと。どうどう? カッコ良かっただろ?」
いきなり声色が明るくなる。さっきと同じ人とは思えない。
「おいおい、アミちゃん。声も出せないほど良かったかい?」
「……怖」
「えっ?! そ、そんな。最近の子はこういった危なげな人が良いんじゃないのか?」
「それは、極端すぎる気がする。少なくとも私は苦手。ヤクザじゃん、やってること」
「ふむ、最近はこういうのはダメなのか」
感慨深そうに呟いている。
最近じゃなくてもダメなのはダメじゃないのかな。そう思ったけど黙っておこう。それでどういうのが良いって言われたら面倒だし。
「それではお嬢様、こちらへどうぞ」
まるでど映画に出てくるの使用人のように、丁寧に移動用の車のドアを開けていき、車の中へ入るように促してくる。
「それも違うと思うよ、多分」
マキシムからは気さくって聞いたけど、凄く変わった人だと思った。
天使ヒルズに着くと、他の天使がいた。あの姿は、だいぶ前にあったことがある。車のエンジン音に気がついたのかその子はこちらを振り向いた。
確か名前はアル―ル、今は何階生か知らないけど、一度だけ、合同任務で一緒になったあの子だ。
「アミさん、でしたね。話は聞いていますよ」
車から出てくる近づいて来ていきなり話しかけてきた。
「話?」
「もう8階生になったことや、6階生の合同任務が大変だったことだとか。他にも以前の天使ヒルズの異常の原因があなただとか。まあそんな話は良いんですよ、それよりも聞きたいことがあります」
アル―ルくんの口からは最近の色々あったことが、興味なさそうに並べられた。
聞き返すと鋭い声で答え始める。
「シンドウ、と言う方。8階生に居ますか」
シンドウ、脳裏に浮かんだのは無精ひげを生やした、だらしない男性。確か802号室に居た人がそんな名前だったような。,
「ああ、いるよ。お前は確か5階生のアル―ルだったか。上から聞いてるぞ、毎回馬鹿みたいに任務を受けている奴が居るって」
一瞬睨んだ、それに気付いたヒロさんは言葉を止めた。
「シンドウを知っているんですね。では、会うことは出来ますか?」
「無理だな、会わせる義理がねえ」
「あなたには聞いていない、アミさん。出来ませんか?」
「……私にはちょっと判断できない、ごめん」
「そうですか、ありがとうございました」
そのまま通り過ぎ、どこかへ行ってしまった。
「なんだなんだ? 変な奴だったな。後でシンドウに聞いてみるか」
ため息をつきながら愚痴を漏らすと中へと入って行った。
凄く怖い感じだった。余計なことだとわかってても気になる。
エレベーターのチャイムが鳴った。
「さてさて、アミちゃんも来るかい?」
「え? ああ。うん、知りたい」
ヒロさんは手招きをして802号室へ一緒に向かった。




