部屋の紹介
隣の802号室、インターホンを押したけど反応はなかった。
「おーい、居るのは分かってんぞ。出てこい」
ドアを叩きながら面倒臭そうに返事を待つヒロさん。10秒くらい叩いていると扉が少し開いた。
「はい、なんでしょう」
口周りの無精ひげが目を引く、ぼさぼさの髪をした男性。頭をかきながら眠そうにあくびをしながらゆっくりと出てきた。
「ったく、言っただろ。今日は新しい人が入るって」
「ああ、そうだった」
手を合わせて、思い出したかのように答えた。
「さて」そう言いながらこちらに視線が移した。
「私はシンドウと言います。えっと、夫婦ですか? お若いですねえ」
同時にヒロさんの平手が頭に振り降ろされた。
「アホか! 何時までも寝ぼけてるんじゃねえ! 見りゃわかるだろ、彼女は幽霊、幽霊だ」
叩かれた頭を擦りながら「冗談ですよ、では、昨日は遅かったので私は仮眠を取りますので」
「遅いってお前、ゲームしかして無いだろが!」
ヒロさんの言葉を最後まで聞くことなく、扉は閉められてしまった。
「ま、まあこういう奴だ。次行くぞ次!」
その隣、803号室。同じようにインターホンを押すと今回はすぐに開けられた。出てきたのは私と同じ服装をした男の子だった。
「おう、マロウか。パパを呼んできてくれ」
頷くと閉められた。
「あの子、幽霊?」
服装が私と同じローブを着ていた。見た所、私よりも慎重は小さくて、小学生くらいの子供に見えた。
「そうそう、マロウは吃音症だったか。上手く喋れないらしいから話ずらいかもしれないが、仲良くしてやってくれ」
扉が少し開けられるとゆっくりとした口調で男性が出てきた。
「……何か?」
「お前もか! 言っただろうが! 今日は新しい人が来るから挨拶まわりに来ると!」
「……ああ、そうだった。マロウがちゃんと見ていましたよ」
アルさんの言葉に、大きなため息が聞こえた。
「とりあえず自己紹介だ、自己紹介しろ!」
ヒロさんの叫びに動じることなく、マイペースに自己紹介を始めだした。
「……アルアエです。アルで良いです。この子はマロウです」
扉を完全に開け、アルさんの後ろに私と同じ幽霊が隠れている。返事をするわけでもなく、頷くと奥へと行ってしまった。
「……これでいいですか?」
「分かった分かった。良いか、何度も言うがお前が読まないと意味がないからな。マロウに任せっきりに――っておい!」
ヒロさんはまた大きなため息を漏らしていた。
「さて、と。次へ行こうか」
「さてさて、今回は大ジョブ大ジョブ! ……さてと。マキシム、インターホンを頼む」
いきなり私に向かって両手を合わしてきた。
「え、私?」
激しく、無言で頷き続ける。
インターホンを押すと、すぐに女性がしっかりとチェーンをつけたまま、半開きで顔を出している。
「あら、マキシム。じゃあ、あなたがアミさんね」と言いながらやたらキョロキョロとしている。
「ねえ、ヒロ居なかった?」
一緒になって見回すとマキシムの後ろに隠れていた。
「まあ良いわ、私は――」
ドアのチェーンを外し音と同時にヒロが前に出た。それに気付いた804号の女性は閉めようとしたが、足を挟めている。
「酷い、ひどいなあ。閉めることないでしょ?」
「あんた分かっててやってるだろ! いいから除けろ」
「自己紹介しないと、ねえ」
「私のことならマキシムが知っているから、後から顔を合わすことくらいあるし」
そう言いながら入りこんでいる足を踏み続けている。そんな攻撃を意も解せず体を押し入れていく。
「そんなこと言わずにさあ、な?」
身体半身入っていて、中へと入ると扉が閉められてしまった。
「えっと、どういうこと?」
「あいつらは、昔からあんな仲だ。気にすることはない。さて帰るか」
「ほっといて良いの?」
「今さらだ、死ぬことはないさ。言うだろう、嫌よ嫌よも好きのうちと」
「はぁ、そんなものなのかな」
扉の向こうでは二人の口論とガタガタと言う音が響いている。隣の805号室に戻っても女性の怒声が響いていた。
「そういえば、あの人の名前って?」
「ああ、カデナだ。まあヒロと一緒で知り合いだ。あいつも話しやすいと思うぞ」
「そうなんだ。知り合いって、カシューさんの部下だった時なの?」
「いや、それ以前からだ。同期といったほうがいいか」
同期ってことは、二人はマキシムのことが詳しいかもしれない。聞ける機会があったら、聞きたい。
「明日からはいつもどおりやっていくからな、気を引き締めろよ」
「了解」




