検診結果
研究所、正直良い思い出なんて一つもない。
でも、私はここへ来た。
「異常ありません、他の幽霊たちと変わりはありません」
よく分からない機械に入って数十分。そこから出て、さらに数十分。待合室みたいな場所で、マキシムと一緒に待っていると研究員らしい白い服を着た人が来てそう言った。
「本当に何も無いんだな?」
「ええ、データ上では。もう少し踏み込んだ研究をしてみたら何か出るかもしれませんね、あなたの場合は。ですが、今以上のことをして確かめるなればそちらの同意と、数枚の書類。さらに数日後に審査に通れば出来ますが。どうします?」と、面倒臭いですよと言わんばかりの不安げな声で言われた。
「もし、それをしたら。何か分かるんですか?」
したくはないけど、さっきの夢のこともあるし気にはなる。
白衣の男性は少しうわずった声でしゃべりだした。
「それは、もう色々と。何にしても2段階カースのデータが少ないですし、もしかしたら新しくカースのことが……すいません。今の話は気にしないでください。どちらにしても今の私たちにはそれを行う権限がありませんので」
落ちつきを取り戻すと落ちついた口調で、少し落胆が伺えるような表情に見えた。
「今回は断る、それでいいな?」
マキシムが啖呵を切るように言葉を述べる。私はその言葉に頷いた。気にはなるけど、もし前みたいなことになったら、そう思うとマキシムの言っていることは正しいと思えた。
それに、今の私がどうなっていようと関係ない。もし、また2段階カースなっても、制御できるはず。マキシム刺した時のような時のように、誰かに迷惑を掛けることなんて、ない。
そのまま、研究所を何事もなく帰る途中、携帯の液晶を見るとメールが一件入っていた。確認するとタイトルは『重要事項』と書かれていた。
本文はこうだ。「603号室マキシム、共闘者アミ。本日より805号室への移動が決まりました。明後日までに受付にて転居の通達をお願いいたします。天使ヒルズ」
2日後、空が少し赤みがかった頃。805号室に荷物がすべて入れられ、中に荷物を整理していると途中でインターホンの音が鳴った。
「アミ、頼む」
大量に段ボールとにらめっこしたまま言ってくる。
「はいはい」
まだ出し終えてない荷物から離れて扉を開けると男の人が出てきた。
「ん? ああ、なるほどなるほど。君がアミちゃんか」
現れたのは男性、笑顔を浮かべながら頭をなでてきた。
「ちょっと、止めてください。誰ですか?」
「なになに? マキシムから聞いてないの?」
手を払いのけると、とぼけた表情で聞き返してくる。
マキシムから?そう言えば結びつく名前があるような。
「もしかして、ヒロ…さん?」
「そうそう、マキシムは中に居る?」
「うん、居るけど」
奥のマキシムに声を掛けるとめんどくさそうに返事をしながら歩いてきた。
「よう、久しぶり」
「おお、ヒロか。……なんか用か?」
興味なさそうな返事、表情もため息を漏らしたかの様なダルそうな感じ。
「おいおい、酷くないか。俺とお前の仲だろう」
「ふむ、じゃあ手伝ってくれ」
すると背伸びをして中を覗き見て小さく頷いた。
「終わったら来てくれ、バイバーイ」
そのまま手を振りながらさっさと帰って行ってしまった。
「帰っちゃったね?」
「いつもあんな感じだから気にすることはない。とりあえず終わったら行っておくか」
そう言いながら奥へと戻って行った。
なんか、変な人だなあ。他の人は、どうなんだろう。
終わったのは陽が落ちた頃。時間は大体6時くらい。801号室のインターホンを押すと、待ち構えていたかのようにすぐにヒロさんが出てきた。
「おっ、終わったんだな? ようこそようこそ、夢の8階生へ」
「ああ、お前は相変わらずだな。最近はどうなんだ」
「最近か、カースの動向が色々と変わり始めてるってそりゃお前の方が詳しいか。まあいいや、それにしても良いねえ、女の子と一緒に居られるなんてよ」
冗談めかして肘で小突きながら聞いているけどマキシムは「まあな」と、静かに答えているだけ。二人の空気が違いすぎて凄く不気味に見える。
本当にこの二人は仲がいいのかな。
「さあさあ、そろそろここの人達を案内していくかねえ。久しぶりだからマキシムはノリが悪いし」
「いつも通りだ、いつも通りだからな」
なんで私に言ったんだろう。




