外へ
幽霊とアンラさんとマキシムを連れて外へ出た。アンラさんは腹部の出血があって意識が朦朧としているけど、傍で見ているマキシムによれば大丈夫らしい。
任務が終わったことを連絡し終えるとこちらを向いた。
「アミ、だな?」
マキシムの問いに合わせて頷く。まだ視界は暗く、カースのままだと言うことが分かる。
前はマキシムを殺そうとしていたのに、今回は全然違う。以前と比べて落ちついている感じ、それに自制も利いている。
カチッという金属音、マキシムの手に持たれている銃がこちらを向いている。
「今、助けるからな」
声と一緒に銃声が鳴った。
弾はゆっくりとこっち向かってくるのが見える。それは止まることなく、私の身体を通り抜けた。
視界は中途半端に元の色を見せている。銃声は一つじゃない、迫ってくるそれはまだ飛んでくる。
体中に通り抜けて行ったのが分かる。痛みと一緒に何かが退いて身体が軽くなるような感覚。
ほんの数秒の出来事のはずだけど、30分くらいあったような、それくらいに色々な感覚が襲った。
頭がクラクラして、ピントがずれた顕微鏡のように周りがボケて見える。
「アミ、意識はあるか?」
そう言いながら肩に軽く手をのせてきた。
ボーっとしていた視界が一気に定まる。同時に頭痛が走り、立って居られなくてゆっくりと倒れ込んだ。
「大丈夫か!」
「大丈夫、ちょっと頭が痛いだけ」
私がカースになる直前と同じ、酷い痛み。マキシムが私の体を撃ったせいなのか、カースになる前の痛みが今、襲ってきたのか分からないけど、返事をするくらいに元気はある。体は動きそうにないけど。
「そ、そうか。もう少ししたら迎えが来るからな、名前が分からなくなったり、喋りにくいこととかないか」
「うん」
今は頭が痛くてたまらない。車に酔った時のように吐き気が来て、ずっと頭をグルグルと回されている感じ。そこに棒のような物が頭の中に入ってきたと思えそうなくらいの痛み。
立つどころか、前を見ることすらしんどい。
休もう、寝たら死ぬなんてことはないでしょ、もう死んでるし。
〇
薄暗い、どこかの景色。
人通りの少ない、道だと思う。ずっとそこを歩いている。少し歩いて、立ち止まった。
じっと、道の脇で座っているだけ。それだけなのに、嫌な感じがする。
見回してもあるのは電信柱と選挙ポスターが貼られているくらいだ。
早く起きないといけないと、この夢に見覚えがある。
起きて、起きて、起きて!
〇
「ハッ! えっ、どこ?」
いつの間にか車の中だった。隣にはマキシムがいて、いきなり目を覚めた私に気づいて「どうした?」と、聞いてくる。
「え、ええっと。なんか変な夢……」
外はどこかの道を走っている。何の変哲もない、コンクリートの塀に囲まれた道。普通の道なのに、違和感を感じた。
マキシムの後ろで何かが一瞬通り過ぎた。目でそれを追うと、思い出した。直前で見たポスター、それに見えた。
「夢? どんな夢だったんだ?」
「ううん、忘れた。気にしなくて良いよ」
小首をかしげながら「そうか」と、答えると会話は続かなかった。
あの夢は、そっくりだった。サチが無くなった交差点で見た私の夢の時と。もし、あのまま起きなかったら、出会ってたかも。そしたら、どうなってたんだろう。
「まだ行き始めたばかりだからな、寝てても大丈夫だぞ」
「いや、起きてる。だいぶ痛みも引いたし」
なるべく平静を装って答えた。夢のことは聞かれたくない、言ったら、絶対に心配するにきまってる。
「ねえ、今回はどのくらいもらえるの?」
「ああ、3万くらいになるんじゃないか、幽霊の捕獲もこっちがやったことになったからな」
「そっか、もしかして上の階層に引っ越すのかな?」
私が今の6階に来たのは唐突だったけど、元々3階にいたアル―ルくんはこの合同任務で4階生になったんだったけか。あれからは一度もあっていないから今はどうしてるかサッパリだけど。
合同任務が上の階へあがるための任務みたいに聞いた事もあったし、なるべく上の階にもあがりたいしね。
「どうだろうな、上がるとしたらとうとう8階生か」
「8階? 7階じゃないの?」
「7階は第二受付だからな――そう言えばあいつが居るな」
思い出したかのように呟いた。
「あいつって?」
「ああ、ヒロと言う奴だ。気さくな奴だから話しやすいと思うぞ」
知り合いが居たんだ、と言うことは6階生の時みたいに少しは居ずらいことはないかも、それだけでも安心できる。
「まあ、早々上がることはないと思うが。それよりも報告を終えたら研究所の方へ行くぞ。連絡は取ってあるからな」
「……なんで! 研究所なんて、どうして」
前触れ無く、さらっと重要なことを言われて少し返答に遅れた。
「それは、分かるだろう。またカースになったんだぞ、なぜあんなことになったのか分からん。それに、今のアミはカースを倒されたばかりだ、身体に異常があるかもしれないだろう?」
「でも――」
「大丈夫だ、前のようなことにはならないようにする。だから、出来ることなら信じてくれ」
私が不安を言う前に、マキシムは真剣な顔つきで言った。嘘を言っているようには絶対に見えない、力強い声で。
反論ができなかった。正確には反論する勇気がなかったんだと思う。あまりにまっすぐで、初めてと思えるほど頼もしく思えてしまう。
「……分かった、頼んだよ、マキシム」
そんなの信用しない出来ないわけ無いでしょ。




