25日
12月25日、クリスマス。今日は任務を受けず、休憩日。こういう日は必ずと言っていいほどティルさんが来る。こっちのスケジュールが分かっているかのように、本当に不思議。
「あら、お似合いね、その服。壁に掛けておくのに丁度好さそうで」
「どうも、ありがとうございました」
出会いがしらから遠回しな皮肉。それに気付かないマキシムは「良かったな」だから凄く鬱陶しい。
ここもいつも通りなのが何とも、良いような悪いような。まあ、あんなことがあったのに変わりなく接してくれるってのは気が楽だけど、もう少しまともになっては欲しい。
年増女は入ってくるとすぐに私を除けものにしてマキシムと話し始める。私は彼らから少し離れた所でテレビをずっと見るのが日課見たいな感じ。もう慣れたからある意味楽と言えば楽。
マキシムとずっと二人でいても話すことが無いから変化はないし。
テレビはどれもこれもクリスマス特集。
クリスマスか、いつもなら家でケーキとか食べてるんだろうなぁ、今の時期だと勉強漬けってのもあり得たけど。そう言えば試験って来年の1月あたりだったよね。
「ちょっと、アミさん。聞いています?」
いきなり肩を叩かれた。テレビの音と画面を見ながらボーっとしてたらしい。
「はい?」
「買い物」
「何の?」
いきなり指を指してきた。見ているテレビを。
ここは、天使ヒルズから少し20分ほど歩いた所にある大通り。。店が立ち並ぶ大通りに着くと引っ張られる形で大型のスーパーへと入って行った。結論から言うとセール。冬服の新作がどうとか、興味が無い訳じゃないけど、どうせ着れないから目に毒だ。
目の前には奇声を上げながら出来ている人の山、そのひとつになったティルさんの姿は見えなくなった。
「女性ってすごいもんだな」
「まあ、アレは特殊だけどね」
私とマキシムはただその光景を眺めるだけだった。
それから、2、3軒と店を回り、荷物は増えていった。ほとんど服やアクセサリーと言った物。Eと現金は交換できないのにどうしてそんなお金があるんだか分からないけど、どれもカードでさっさと会計を済ませて終わらせていく。
マキシムは両手いっぱい、ティルさんも片手に一杯。私も周りに気づかれないように傍に寄りながら荷物を抱えていた。
相当な荷物、ちなみに私が持っているのはクリスマスケーキ。だから「揺らさない様に気を付けてくださいね」と、念を押されている。
「さて、じゃあ次はあそこに行きましょうか」
そこはクリスマス関連のグッツがいっぱい置いてあるお店。ティルさんの容姿からすると少し子供っぽ過ぎる者がいっぱい置いてある、そんなお店だった。
「何か欲しい物はある? こういう物なら部屋に置いておけるでしょ。部屋にも犬の小物とかあったし」
「えっと、私のために?」
「ついで、ついでです。買い物につきあわせたのですから。ほら、荷物を渡して」
と言って手を差し出してくる。
「……ありがとう」
小さく答えるとフンッと鼻を鳴らして返事した。
中へと入るとすぐに目に入った。クリスマスらしい、シカの人形。他にも良いのがあるかもしれないけど、本能的にそれが良いと思った。
「これ、これがいい」
「もう少し悩んでもいいのですよ」
「ううん、これが良いと思ったからこれにする。それより、マキシムが。そろそろ限界っぽいんだけど」
「あっ」と、ティルさんが漏らした声の方にはプルプルと震わせながら山積みの持っているマキシムの姿だった。いつの間にかティルさんの持っていた荷物もそこにあって、彼女の持っている物は私の持っていたケーキだけになっていた。
あれから30分、車は私用では使えないそうで、徒歩で運ぶことになり、ようやく天使ヒルズに到着した。着いた時には二人はくたくたで、息遣いが荒くてしんどいのが分かる。
ある程度人通りが少なくなってからは私も荷物をいくつか持つことになったが、全く疲れない。持つのに限界はあるけど、疲れると言う感覚は無かった。でも、無理をしようとすると頭痛が来る。
痛みの代わりが頭痛、こういう所でも来るみたい。
ティルさんの荷物を全部入れ終え、部屋に戻り、ようやく終了。
マキシムはシャワーを浴びに浴槽へと向かうとインターホンが鳴った。
「どうも、久しぶり、アミちゃん」
出てきたのは、カシューさんだった。




