いつもの始まり
12月23日。今日から再開、今回は討伐任務をすることとなった。
私は階段の途中でアレが来るのを待っている。
「ハァ、ハァ。ちょっと、邪魔よ!」
息を荒らしながら階段を下りてきている女性。その階段に立っているので邪魔なのは分かる。
「そんなに急いで、どうしたんですか?」
「うるさい! そこをどけよ!」
「そう言うわけにもいかないの。笹暮真美さん」
「っ?! あんたも、あの変な奴ら! ああ、もう!」
荒くしていた息が一瞬止まって、過呼吸気味で吐き捨てた。
叫びに合わせて体中が黒くなる。背中には鳥の羽のような物が生えた。それを羽ばたかせて飛びこえていく。
私はその右足を掴んだ。不安定に空を飛ぶ中、剣を抜いていると声が聞こえる。
「離しな、さい!」
最後の言葉に合わせて左足が襲いかかる。当たる前に手を離し、背中の翼を片方切り裂く。すると平均台から落ちそうな人のように体が傾き、階段下の少し広い場所へと降りて行った。
唸りながら地面を這いながら逃げようとする所を追いかけて立ちふさがると声を枯らしながら喋り始めた。
「どうして、確かにこの体は変だけど。悪いことは何もしてない。ただ空を飛んで遊んだだけ。これからだってばれない様にするし、ねえ、殺さないで」
「その体はね、呪われているの。私だって、同じだったんだから」
「どういう、こと?」
「私はもう、幽霊なの。それじゃあ――」
「アミ、もう終わったのか」
ぐったりしている幽霊を見ながら終わったことを確認してくる。
「そりゃ、ね。というか遅いよ?」
「すまん、ビルからビルに飛び移られたからな」
「全く、まあこういう作戦だったんだから良いんだけど、あっ――」
タイミング良く黒塗りの車が二台来た。片方には足元で気を失っている幽霊を回収させて、もう片方の車に乗り込む。
「その服はどうだ?」
「少し、動きづらい。まあ、無いよりはいいけどね」
今、私はローブのような服を着ている。この服は価格3千Eする服で、私たち幽霊専用ととも入れる服だ。この服も同じように普通の人には見えない、構造までは分からないけど、私の持っている剣と同じような物らしい。
だぼだぼした服で、遠くから見たらテルテル坊主みたい見える。フードも付いていて、しっかりと被ったら前が見えないほど大きい。でも、勝手に体に密着するので歩いてても脱げない。正直着ている言うより、引っ付いているような感じ。
動かすのには問題ないんだけど、私の武器、剣はローブの中に入れることができなくて、移動するときは背中に掛ける形にしているのだけれど少し出しづらい。
背中から引き抜こうとすると途中で刃が引っかかるから、戦う時はわざわざ手元に持って来てやっと戦うことができるから少し時間がかかる。服の状況が状況だからしょうがないんだけど。
カシューさんが三番と呼んでいたあの人もこの服を着ていた気がする。と言うことは、三番と言う人は同じ幽霊、と言うことになる。
マキシムの話によると、私のように服が破けていることはよくあることらしい、だから契約者のほとんどは私と同じような服装をしているらしい。あの人も同じように服が破けていると思うと、なんか親近感。
ちなみに、どうして前は服が何ともなかったかと聞くと、言い辛そうに「即死だったから」と言われた。あの事故ならしょうがない、か。
いつものように、受付で連絡を済まして帰宅。戻ってもこのローブを外すことが出来ないのが何とも辛い。重みとかは無いけど、引っかかる感じがして少し動きずらい。
動く時は気にならないけど落ちつくと気になってくる。
「ねえ、他になんか服ってないんだよね?」
「ああ、ほとんど使う人はいないからな、最近も増えているのは武器ばかりだ」
私のような幽霊にはこの服しかない、正確には普通の人には見えない服がこれしかないと言うことなんだけど。
一応普通の上着も着ることは可能だけど、他の人には服だけが浮いているように見えるそうだ。そんなのはダメなのは分かる。
少しだけ状況は変わったけど、いつもの日々は戻ってきた。だけど、感覚は違う。
サチの手がかりが確実に近づいているんだから。




