起きて、そして
起きると来たことのない部屋で横になっていた。白いベッド、白い布団。周りを見渡すと同じようなベッドが4つ、その3つには私と同じように横になっている人がいた。
しかもその人たちは見た覚えがある。カースになった時に倒した人たちだ。それぞれ包帯が巻かれていて治療をしていると言うが分かる。
ここは、病院かな。でも、私は……
布団を少し上げて自分の体を見てみる。すると服装が変わっていた。あの時に着替えたのと同じ服装、学生服じゃなくなっている。
「あっ!」
つい声が漏れてしまった。見回すが他の人は起きてない。確認し直し、落ちついてその状況をしっかりと理解した。。
どうして、なんでこのままなの!
布団にくるまって数分、扉の開く音が聞こえた。
足音が近づいて来てベッドの傍で止まった。
「起きたのか、アミ」
少し声のトーンが高めで男の声が聞こえた。確認するように顔を出すとマキシムの姿があった。腹の辺りに包帯が巻かれている。あれが私のやったことなんだ。
頷くと嬉しそうに話し始めた。
「良かった、心配したぞ。中々目を覚まさないんだからな。体調はどうだ」
この男は、私よりもあんたの方が大変でしょ。その傷治って無いんだし。私はもう死んでるだから心配しなくたって、大丈夫でしょ。
「そこそこ」
あまり喋りたくなくて、小さくそう言っておいた。
「ショウもティルも心配していたぞ。もう動けるのか?」
「たぶん」
「そうか、じゃあ退院もすぐだな」
ここで会話が途切れた。まあ私のせいだと思うけど。
マキシムは何かするわけでもなく、ずっと傍に立っていた。
「なんで?」
マキシムに向き直って聞くと「ん?」と、疑問で返してくる。
「なんで怒らないの、その傷、私のせいなのに」
「なんでと言われても、お前はやりたくてやったのか?」
「多分、そう」
「なら、私が悪い。そうさせたのは私が原因なのだから」
そう言って逆に謝られた。
どうして、どうしてよ。私がいけないのに。
「それにな、今回は本当に私たちに非があるのだ。覚えているか、カースになる前のことを」
カースになる前のこと、確かどこかに連れて行かれてたような。確か地下の研究所に、でもどうしてこうなったのか分からなかった。
分からないのを表すように首を傾げていると話を続け始める。
「研究所の一部の者が勝手に研究を薦め出してな、アミはそれに巻き込まれてしまったんだ。詳しくは向こうに戻ってから分かると思う。だからアミ、お前は何も悪くないんだ」
そんなことを言われても、どう反応すれば良いか分からなかった。怒ったらいいのか、それをしたら凄く子供っぽくてちっぽけに感じる。
それが凄く嫌で、私はただ黙りこくるだけだった。
再び沈黙、私は気になることを思い出して声に出した。
「カシューさんって、マキシムの知り合い?」
「カシューか、彼女は私の元上司みたいな物だ。元々彼女の下でやっててな。推薦状を書いてくれたのも彼女だぞ、覚えているか?」
そうか、聞いたことあったような気がするのはここに来た時に一度だけ聞いたからか。ここに来て、面接みたいなのを受けた時にカシュー様がどうたらって言っていた気がする。
理解したことを示すように頷き、もう一つ気になる事を聞いた。
「じゃあさ、3番って誰か知ってる?」
「知らんな。初めて聞いた」
マキシムは即答した。しっかりと目を見てはっきりと。それが嘘か本当か。見極める術は無くて、ただ聞くことしか出来なかった。
銃を持っていたからマキシムかも、と思っていたけど、その傷じゃああんなでかい銃撃てるようには見えないし、別人ってことかな。
「カシューさん、サチのこと知ってたんだけど。関係、あるんじゃない?」
深く考えるより核心をついた。目の前の男が一瞬、嫌そうに顔を歪めたように見えた。
「いや、知らない」
そして、即答。機械が喋っているかのように、抑揚のない声でそう言った。
そんな態度にイラついて、布団を除けて身を乗り出しながら「ねえ、教え――」と、言いかけた所で誰かが入ってきた。
少し視線をずらして、それを見た。そこにはティルとショウの二人が来ていた。
「アミ! 元気になったんだ……あ」
「マキシム様! 調子はどうで……ちょっとアミさん、その服装」
二人は話しかけて止まった。ショウは後ろを向いて、ティルさんは逆に迫ってきて文句を言いに来た。
二人の反応で思いだした。この服装のことを。
私の服装は、なぜかは知らないけど戦ったときの傷跡が残っていた。カースになっている時、腹の辺りと左わき腹の辺りに傷を負った。その時の傷は肉体ではなく、服にしっかりと残っている。
黒のパーカーから肌が見えて、非常に目立つ。腹の辺りは軽く破れているだけでへそが少し見えるくらいで大したことないけど、脇腹の方がある意味深刻。
脇腹から胸の辺りまで綺麗に服が持っていかれていて、膨らみの下の方が見えて、白い下着もうっすらとみえている。
そんな状態のままマキシムに迫まるように身を乗り出している。そんな状態の私たちを見てティルさんには明らかに違った方向で見取られたのかもしれない。
それだけならともかく、マキシムもマキシムで視線がはみ出ている白い物に移っているのがが分かった。反射的に左腕でその部分を隠して、傍にあった枕を右手で掴み、思いっきり殴りつけた。
完全にうやむや。せっかくの聞く機会を逃してしまった。
結局、そこからは必死に誤解を解くのに数分費やし、何とかお見舞いを済ませる形でマキシムと一緒に2人は帰って行った。
静かになるとどっと疲れて横になる。
体は痛くない、痛いのは頭。眠り過ぎた時のようなボーっとする感じと、その時に頭を振ると来る重い痛みが襲ってくる。
まだ、本調子じゃないのは分かった。これが治れば元通りって所かな。
でも、これで終わりじゃない。ここでやることはあるんだ。カースだった時でも同じだったあの事を、絶対に果たす。当然自分なりに、なんとしても。
だから、今は寝よう。また起きたら、そしたら――




