倉庫へ
中に入るが姿は無い。奥の方は暗くて何も見えない。気をつけながら奥へと進んでいった。
「危ない!」
ショウの声と共に何かが飛んでくるような風切り音が聞こえた。咄嗟に刀をその方向へ構えると金属音が響き、手にぶつかる衝撃と一緒に何かが落ちた。
見ると金属の輪っか、おそらくバイクの部品だと思う。
「あっちだ!」
「ちょっと!」
カースが見えたのか、暗い奥へと行こうとしていたショウの手を逃さず掴んだ。こちらに向くと頷き、一緒に奥へと進んだ。
私は足元、ショウは周囲を警戒しながら進む。少しずつ暗さにも慣れてきて、どのようになっているのかが見えてきた。
奥はバイクは無く、その代わりに箱のようなものが多く置かれている。足元にはさっきの金属のわっかと似ている物が散らばっていた。
「足元、危ないから気を付けてよ」
「うん、しかしどこにいるんだ。見つけたら叫んで知らせてくれよ」
それから慎重に暗い倉庫の中を探るが物音一つせず、見つかる気配はなかった。携帯でカースの位置を確認するとこの倉庫からは動いていないのが分かる。だけどこれでは正確な位置までは分からないので確認する意味で見て、閉じた。
「なあ、携帯のライトで照らせないか?」
「あっそうだった」
ショウに言われて携帯のライトを灯した。見えたのは箱があるだけ。暗闇に慣れてきた目で見えた物と大差はなかった。調べるように壁を照らしていくと大きなレバーのようなものが見えた。ショウはそれに近づいて上に上がっていたレバーを下ろした。
同時に大きな音が鳴り、天井が黄色く照らしてくる。そのおかげで中がはっきりと見えるようになった。置かれていた箱には床にも散らばっている金属の部品がたくさん入っていた。
「これなら見えるな、どうする?」
「そうね――」
こちらを見ているショウの後ろに黒い何かが動いているのが見えた。無我夢中でショウを押し倒した。倒れながらも襲ってくるそれに向けて剣を向けた。
「くぅっ!」
「あとは任せろ!」
そう言いながら傍から離れて立ち上がり、剣を掴んでいた物を切り裂いた。それはカースについていた背中の手で、鈍い男の叫び声が響く。
声の方を見ると唸りながらうろうろしている、それに向けてショウは音も立てずに鋭く突き刺した。
「終わったの?」
「ああ、倒せたよ」
槍の傍に倒れている人。カースの姿は無く、その前に会った男の人が倒れていた。この男はすでに生きてはいない、私と同じ、幽霊。
「それじゃあ連れて行くから車を頼む」
一つ息を吐いて、落ちついた口調でそう言った。私は頷き、携帯をだした。
連絡を送ると回収用の車が来たので幽霊を乗せた。幽霊の手には私も一度付けられたことのある手枷が付けられていた。回収用の車が行くとその後ろからもう一台の車が来たので私たちは後部座席に乗り込んだ。
「大丈夫か? 痛みとかは」
「何ともないよ、でも強いね。二段階目のカースって普通は人の姿なんだ」
「いや、俺も知らなかったんだ。ただアミを見ながら話していたからおかしいと思ってね」
「そうだったんだ。でもあんなに強いなんて、負けたりしないよね」
「大丈夫! マキシムやアミも手伝ってくれるんだから、な?」
元気よくそう言って、小首を傾げて聞いてくる。その言葉に私は元気よく返した。
「もともと討伐任務は6階生くらいじゃないとやらないしな。まっ、よろしくな?」
そう言いながら手を差し出してきた。握り、顔を見ると元気な明るい表情、さっきまで戦っていたのが嘘のような。
「強いね、ショウは」
「ん? そうか」
「ショウが私の契約者だったらよかったのに」
「おいおい、マキシムは俺よりも断然強いよ」
「そうなのかな?」
「そうだよ、変なこと言うなって」
冗談めかした笑いが響く。私もつられて笑った。それ以降は他愛のない話をしていて、その間に車は止まり、天使ヒルズへと着いた。
「それでは、報酬は二等分して送らせていただいております。本日はありがとうございました」
そう言いながら鍵を二つ置かれた。
「それじゃあ、またな」
302号の前で立ち止まるとそう言って中へと入って行く。私もその隣の部屋へと鍵を開けて入った。
鍵を開け、傍の鍵入れに入れる。だけどいつも見たいに液晶は出てこなかった。マキシムの持っている方の鍵じゃないからだろう。
携帯を見ると時間は15時25分。カーテンが閉まっているせいか、奥の部屋は暗くなっている。
いつも入る時は暗いけど今回は一人。普段と少し違い、さびしい感じがする。
すぐにカーテンを開けて光を入れる。部屋のテーブル向かい手に持っていた袋から子犬の小物を部屋のテーブルに飾っておいた。そして私はベッドに座って枕元に置いていた日記を手に取った。。
最近は書いている日記。ここ最近の話はここでの生活と任務、残るはマキシムのことばかり。ページを戻していくとここに来る前の日常が書かれている。そこを読むと思いだされるのはサチのことだった。
本当に会えるのだろうか、そうも思えてくる。実際、マキシムは居るとは言っていない。知っていただけだ。それでも私は知りたい、何があったのか、どうなったのか。知ったら後悔するかもしれない、利かなかった方がいいかもしれない。
もしかしたらどこかに居るんじゃないか、そんな希望、それだけが今の一番の気持ち。私と同じ状況とかになっていないか、それでも良い、会いたい。会って話をしたい、何をするわけでもない、ただ一緒に楽しくありたい
読んでいくとそんな思いが強くなって苦しくなったので閉じた。
冷静になろうと深呼吸をしている最中にインターホンが鳴なりだす。
マキシム? でも鍵は持ってるし。だとしたらいつもなら宅配とかだろうけど。
かといって無視するわけにいかないので日記を置いて玄関へ向かった。
開けると黒いスーツの人が二、三人立っていた。服装には見覚えはある。ここの車を運転したり、宅配をしてくれたりする色々なことをやってくれる人たちだ。
手には荷物を持っている訳ではないので宅配と言うわけではなさそうだ。
「何か用ですか?」
男たちは喋ることはなかった。代わりに何かが飛んできて、同時に頭痛が走った。
多分、殴られた。同時に視界が真っ暗になって体が浮くような感覚が襲った。何が起きたか分からなくて声を上げようとしたが口に手を押さえつけられていて出せない。
暴れるけど反抗することもできず。どこかへと連れて行かれる感覚だけが恐怖と一緒にくるだけだった。




