任務中の異変
何度か掃討任務をしていき順調だったある日、やるつもりのなかった回収任務の話が飛び込んだ。理由は掃討任務が今回一つもなかったからだ。お金のこともあるし、やらないと言うわけにはいかないしすることにした。
今回はしっかりと選んで決めた。対象は女性、なぜなら男性だと前見たいな作戦になるかもしれないから。報酬は3200E、数ある回収任務の中でも一番簡単だと思った一番安い任務を選んだ。
残金8万2千E、これが終われば8万5千2百E、先はまだまだ長い。
天使ヒルズの隣町、あまり人通りの少ない通りに対象が居る場所があった。瓦屋根の木造の一軒家、塀に覆われているが庭があるほどの結構大きな家が目的地だった。
「ここ、よね?」
「ああ、あの人だぞ」
塀の隙間から庭を覗いているマキシムが呼んでくる。隣で見ると縁側で薄紫の着物を着たおばあさんが一人、たぶん日向ぼっこ居るんだと思う。対象は女性って言ってたけど、この人?
「あんな人が?」
私の質問に男は頷き。「関係無い、どんな人でも発生をするんだ。カースと言う物は」と、淡々と答えていく。
「さあ行くぞ、むしろ運がいいと思えばいい。手間取らないだろう、この前の男と比べて」
「うん、そうよね。うん」
納得させるように頷きながら表口から回って庭に向かった。今回はマキシムが先頭で、その後ろに付いて行く。
「どちらさまで」
庭には砂利が敷き詰められていて、そのこすれる音でこちらにすぐに気付かれて話しかけてきた。おばあさんは驚くこともなく、落ちついた様子で無断で入っていることは気にしていないみたい。
「初めまして、マキシムだ。怪しいものではない」
自分でそう言ったら怪しいと思うんだけど、まぁ任せておこうか。
「はぁ、いい天気ですねえ」
少し困惑気味に答えると空を眺めながらそう言った。それに合わせて「そうだな」と男が言いながら隣に座って、そのまま会話が止まってしまった。
「お譲ちゃんはどちらさま?」
いきなりこちらに視線が向いて聞いてくる。
「えっと、アミです!」
「そうアミちゃんっていうの。そう」再び空を見てボーっとしている。そうかと思うと突然思い出したかのように声を上げた。
「そうだ、ご飯でも食べるかい」
その質問に男の声はすぐに上がった。
私とマキシムは縁側で庭を眺めながら座って待っている。後ろでは先ほどのおばあさんが私たちのために何か食べ物を探してくれている。
「何してんのよ、どうするつもりなの」
声を小さくして男だけに聞こえるように話すと、男も合わして声を小さくし、早口で答えていく。
「分かった、分かったから。とにかく時期が来るのを待つんだ」
「時期って?」
「まあ、何だ。とにかく落ちついて説得を、な?」
「信じていいの?」
なぜか答えることは無く、沈黙を続ける。唸りながら睨みつけていると分かりやすく目を逸らして話しあおうとしない。
そうこうしているうちにおばあさんが戻ってきた。持たれているお盆には和菓子が乗せられていた。
「どうぞ」
そう言ってマキシムの隣にお盆を置いて傍に正座して待っている。マキシムはそれをほうばっている。食べるのに必死で何もしようとしない。なんとなくその沈黙が嫌で私から話しかけることにした。
「あの、怖くないんですか? 急に私たちが来て」
「そんなことないですよ、むしろ楽しいくらい」
「楽しい?」
「えぇ、もうここには誰も居ませんからねえ。日向ぼっこくらいしかすることがありませんから」
「でもご家族はくるんじゃ?」
「いいえ、私はもうすぐ老人ホームに移るんですよ。私なんてもう用済み何ですよ。昨日の夢だったか。ひどく怖い夢でねえ」
「ただ家の前で立ってねえ、誰か来るんじゃないかって待っていたんですよ。そしたらいきなり刃物で切られてねえ。あら?」
突然、小首をかしげて語尾を上げた。「何かありましたか?」と、聞くと答えるように話し続ける。
「いえ、今さっき夢と同じような物が見えてねえ。ボケているのかねえ」
何事もなかったかのように空を眺めてボーっとしているのを見ていると、さっきまでお菓子を食べてばかりいたの男耳打ちしてくる。
「アミ、家の前に行け」
「え?」
言っている意味が分からず、男の方を向くと真剣な表情と真面目な声で呟く。
「いいから行け。もしもカースがいたら、倒せ」
唐突に何がしたいのか分からないけど、その言葉は冗談とかではないと言うことは分かった。
「すいません、少し散歩をしてきます」
「あらそう? 気を付けてね」
おばあさんは何も疑うことなく手を振ってくれた。
カースが倒された人は出てこない、それは天使になった時にも訓練の一つで聞かされたことだ。もしも居るなら……どうなるんだろう、倒せばいいのかな。
家の前に行くとカースが立っていた。服装はさっきのおばあさんと同じ薄紫の着物。黒い影は何をするわけでもなくただ立っているだけ。向こうはこっちには全然気づかなくて、近づくとこちらに気づいた。だけど今までのカースと違って逃げたりもせず、じっとこちらを見ているだけだった。
何だろう、凄くやり辛い。これってやっぱりさっきのおばあさんだよね。……大丈夫、倒したって死ぬわけじゃないんだ、そう死ぬわけじゃ。
私は腰に差していた剣を抜いた、そしてそのまま横に一閃。今までで一番あっさりと、今までで一番もやもやしながら倒した。
戻ると縁側で男に膝枕されているおばあさんの姿があった。
「寝てるの?」
「ああ、カースが居たんだな?」
「う、うん。でも何で、カースって倒したら出てこないって聞いたはずなのに」
「そうだ、そのはずなんだ。だが現れた」
「どうするの?」
「とりあえず連れて行こう。このことも報告しておこう」
帰ってきて見ると報酬が増えていた。液晶には「特別報酬、10000E」といつもに無い欄が加えられていた。これで残金は9万5千2百E。一気に10万台にまで近づいた。でも手放しで喜ぶことはできなかった。
「あのおばあさん、大丈夫なのかな」
「どういう意味だ?」
「うーん、何だか嫌な感じがしてね。あのおばあさんもあの施設に?」
「そうだろう、まあ私も詳しくは無いから分からん。研究所は機密事項が多いからな。半年前なら少し違ってただろうが今の私では無理だ」
「半年前? なんかあったの」
「ん? 何でもない。無理な物は無理だ!」
バツが悪いのか、声を荒げてこれ以上聞かせないようにしてくる。その態度が凄くムカついて食いかかった。
「何よそれ! 教えてくれたっていいじゃない!」
「この話は終わりだ!」
「ケチッ!」
そもそもマキシムのことをほとんど知らない、会う前なんてなおさらだ。反論が思いつかなくて毒づいて後ろに向き、それ以降話すことは無かった。




