初の回収任務
12月に入った。本来ならそろそろ受験も近くてキリキリしていることだろう。15歳、中学三年生の冬、私は今、一人の男性に逆ナンパ? のようなことをしています。
「すいません。ちょっとお話良いですか?」
不機嫌そうな顔で煙草を吸っていたが、話しかけられたことに気づくと目を開いて「え、俺」と、分かりやすいくらいに自分を指さして小首を傾げながら戸惑っている。
「はい、出来ればあなたの部屋で。ダメですか?」
「えっと君、学生だよね?」
「はい、中3です」
「家出か……」と小さくつぶやき「いいよ」と、返事を返すと男の後ろにあったマンションへ入り、 快く部屋に連れて行ってくれた。男の部屋はあまりきれいとは言えない。雑誌や空き缶がそこら中に散らばっていて、台所も現れていない食器が積み重ねられていて、だらしなさが入ってすぐに分かった。
でも、私はそんな彼が……なんて言うことではなくて!
「それじゃあ、始めようか」
中に入って座ると男はそう言いながら肩を掴んで顔を近づけてくる。反射的に手を弾いて距離を取ると、男は舌打ちをし、声を荒げる。
「なんだよ、そっちが誘ってきたんだろ。他に何の用があってきたって言うんだよ!」
やっと本題に入れそう。やっぱりやるんじゃなかった。
「昨日の夢のことです。分かりますよね」
途端に顔が青ざめ、怯えが分かるくらいに歪んでさらに距離は離れていった。
「お、おまえ。警察か、警察なんだな! 俺は何もやってねえ、やってないんだ!」
「ちょっと、話を――」
男は目を見開き、こちらがちょっと動くたびに大きな動作で部屋の端まで動いて行く。
なんだろう、気持ちは分かるんだけど避けられているのが凄く辛い。
「クソッ、夢のことが現実になってたのを楽しんでいただけ、それだけだってのに」
「あ、あの。ちょっと」ダメだ、ぜんぜん聞いてない。
きょろきょろと見回すと台所へ行き、包丁を持ちだしてきた。
「ちょっと、嘘でしょ?」
「ふ、ふふっ。このまま殺しちまえばいいんだ。そうすりゃ終わりだ」
半笑いでそう言いながら、包丁構えて歩いてくる。足はおぼつかなく、ゆっくりとこちらに向けて足を進めてくる。だが、大きな扉の開くと同時に男の足が止まった。
「だれ、うっ?!」
足を止めて叫んでいるうちに男は押し倒された。同時に男の手から離された包丁が飛んできて右腕の所に刺さった。それと一緒に針が刺さるような頭痛が一瞬襲った。でも腕から血が出るわけでもなく、それは刺さったままだ。
「大丈夫か、アミ」取り押さえながらこちらを見ながら言う。
「刺さった、というか遅いよマキシム」凄く不機嫌そうに言いながら刺さった包丁を抜いた。二人の男がその光景を見ると下に居た男が分かりやすいくらいに驚きを隠せない表情をしているのが見える。包丁を置き、しゃがんで出来る限りの笑顔で話しかける。
「それじゃあ、落ちついて話を聞いてくれる?」
やさしく聞いたつもりなのに焦った表情で激しく上下に首を動かした。
「回収終了、か」男を説得して回収用の車に乗せた。
「痛みはどうだ、アミ」
「一瞬だけ、それ以上は無いわよ。気をつけてよ、本当なら大けがなんだから」
そう、本当なら。でも私の場合は痛みは頭痛になる。正確には精神がダメージを受けているとかで、この痛みがある程度来るとまずいそうだけど、包丁が刺さるくらいなら問題は無い。
「すまん、包丁を持っているとは気づかなくて」
「はぁ、良いよもう。帰ろう?」
「そうだな」
移動用の車に乗って戻ることにする。
今回、初めての回収の任務を受けることになった。回収対象はマンションに住む一人の男性。カースが出た人は死んだ私の姿は見ることができるから、いきなり忍びこんで捕まえると言うことはできない。相手は私と同じように夢の中で一度殺される夢を見ている。そのため情緒不安定になっている可能性が高く、回収の難易度が高くなるのである。
ということで、なるべくことを荒立てないように話し合いをする。かといって人の多い場所だと目立つのでとにかく人の少ない所へ連れて行き、説得するというのが目的だったんだけど、結果は微妙な所だった。
でも、報酬は高い。今回の任務は3400E。普段の掃討任務の約2倍だし時間もかかっていない。だけど、あまりやりたくないなぁ。掃討と比べて凄くしんどいし。
「そう言えば、連れて行った人ってどこへ連れて行かれるの? 私みたいなのは研究対象になるっていうのは聞いたけど、今日捕まえたような人はどうなるのか聞いた事が無いんだけど?」
「ん? ああ、カウンセリングのようなことするんだ」
「カウンセリング?」
「そうだな、実際に見に行った方が分かりやすいか」




