日向あきら9歳。給食のいじめ
日向あきらの影 ~小学四年生の頃~
オレは日向あきら、もう9歳だ。小学校四年生になった。
いじめはもう、言葉だけじゃ済まなくなった。
給食の時間が一番の地獄だ。みんながオレのトレーを見る目が、ほんとに気持ち悪い。給食費はもちろん払えてない。先生も諦めたみたいで、もう職員室に呼ばれなくなった。でも、その代償がクラスメイトたちの攻撃だった。
最初は牛乳だった。
ある日、オレが席に座って給食を食べようとしたら、隣の席の女子がニヤニヤしながらオレの皿に牛乳パックを逆さまにした。白い牛乳がご飯に、カレーに、全部にドバーッとかかった。
「うわっ、間違えちゃった~! ごめんね、日向~」
周りが大爆笑。オレの皿は牛乳プールみたいになった。
匂いが鼻について、吐きそうになった。
でも、オレは黙ってスプーンを握った。腹が減ってる。
家に帰っても何も食えない。
万引きも最近は警備員が厳しくて、ほとんどできなくなってる。
だから、オレは牛乳まみれのカレーをかき混ぜて、口に運んだ。
「まずい……でも、食う」
みんなが「きもーい!」って叫んでる中、オレは黙々と食べ続けた。
牛乳の甘ったるい味とカレーが混ざって、ほんとに最悪だったけど、全部平らげた。
それを見て、みんなはさらにエスカレートした。
次の日は、異物入れだ。
オレがトイレに行ってる間に、誰かがオレのご飯に髪の毛を何本も入れた。長い黒い髪。明らかに女子のやつ。
戻ってきてそれを見た時、オレは一瞬凍った。でも、またスプーンを握った。一本一本、髪の毛を箸でつまんで取り除いて、残りを食べた。
「髪の毛くらい、どうってことねぇよ」
心の中でそう呟いて、飲み込んだ。
その次は、唐辛子。誰かがオレのスープに七味を山盛り入れた。飲んだ瞬間、喉が焼けるみたいに痛くて、涙が出た。でも、オレは水も飲まずに全部飲み干した。
「辛ぇ……でも、食う」
ある日は、机の上にご飯がひっくり返されてた。床に落ちたご飯を、誰かが踏んづけてぐちゃぐちゃに。オレはしゃがんで、土がついたご飯を指でつまんで口に入れた。
先生は気づいてる。でも、「みんな仲良くしなさいね」って言うだけで、何もしてくれない。オレが男っぽい性格で、泣き言を言わないから、先生も本気で助けてくれないんだ。
クラスメイトたちは、オレがどんなに汚い給食でも食べようとするのを見て、ますます楽しそうにいじめる。
「ほんとキモいわ、日向。ゴミでも食うの?」
「貧乏人で腹減ってるんだろ? だったらこれ食えよ」
って、ティッシュとかエビの殻とか投げてくる。
でも、オレは負けない。
生きなきゃいけないんだ。パパは牢屋の中だし、ママはもうオレのことなんてどうでもいいって顔してる。
オレが死んだら、誰も悲しまないかもしれないけど、それでもオレは生きたい。
だから、どんなに汚くても、どんなにまずくても、オレは給食を食べる。
牛乳かけられたご飯も、髪の毛が入ったおかずも、床に落ちたパンも。
全部、腹に収めて、オレは強くなる。
いつか、このクラスから、この家から、全部抜け出してやる。
オレは日向あきら。9歳だけど、もう何があっても折れねぇ。
生きるために、オレは食う。絶対に。




