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第15話 包容の女神、覚醒

 《大地の胎》、最深部。


 そこは、広大な地下空間だった。


 天井からは青白い鉱石の光が降り注ぎ、苔と結晶に包まれた聖域のような空間。


 中央に立っていたのは──


 背丈はルークの頭ひとつ分上。

 全身を厚く覆う筋肉と、落ち着き払った微笑みを浮かべる【大地の魔女】グレイアだった。


「……ようこそ、勇者。

 この包容の地にたどり着いた者は、あなたで三人目です。

 けれど、あなた方だけが……“戻ってこられた”」


 静かにそう語るその声は、母が子を諭すようなやさしさと、底の見えない圧を含んでいた。


「……他の者たちは?」


「ここで、安らかに眠っているわ。痛みも、悩みも、すべて手放して。

 けれどあなたは……そういう顔をしていない」


 グレイアの瞳が鋭く細められる。


「……ならば、力で確かめましょう。あなたの“生きる意志”が、どれほどのものか」


* * *


「来るぞ──!」


 ルークが構えると同時に、グレイアが突進した。


 その速度は、岩壁を砕くほどの質量をともなった拳速。


「──ッ!!」


 ルークは剣で受け止めるが、その衝撃で足元が抉れ、体ごと数歩押し返される。


「うっ……!?」


「ふふ、悪く思わないでね? あなたの攻撃も──包み込んであげる」


 その言葉通り、彼女は両手に着けた“特殊加工された魔力小手”で、ルークの聖剣アルシエルすら受け止めていた。


 カンッ! ガキィン!


 剣と小手がぶつかり合い、火花が散る。


 そのたびに、ルークの腕が痺れる。


 (……魔法を撃つ隙がない! 完全に近接特化……!)


 魔女とは思えぬ、殴る蹴るの肉体攻撃スタイル。


 その圧倒的な“母性”と“体力”で押し切ろうとしてくるグレイアに、ルークは剣技だけで対抗する。


 だが──


「ルーク様!!」


 その瞬間、後方からフィオナの声が飛んだ。


「スピード、強化しますっ!! 私の新しい……魔法、受け取ってください!!」


 白金の光がルークの身体を包み、全身に疾風の加速感が走る。


 ──そして。


「──もらった!!」


 ルークが踏み込むと同時に、グレイアの防御がわずかに遅れる。


 彼女の胸元の奥──魔核の位置に向かって、聖剣アルシエルが一直線に突き出された。


 バシュッ!!


 魔核を貫く音と同時に、彼女の身体からほとばしっていた魔力が、音もなく霧散する。


「……あら、やだ。筋肉……取れちゃったわ」


* * *


 バタン、と音を立ててグレイアは座り込んだ。


 見るからに“ゴリラ魔女”だった逞しい体はしぼみ、

 代わりに、柔らかく豊満な肉付きと、やさしさを纏った“ふわっと巨乳お母さん体型”へと変わっていた。


「……うふふ。やっぱり、あなた……強いのね」


 肩を落としながらも、どこか満ち足りた微笑みを浮かべて、グレイアはゆっくりと立ち上がる。


「それなら、決まりね」


「決まり?」


 ルークが首をかしげる。


 彼女は、頬を紅潮させながら、両手を広げた。


「──あなたの“お母さん”になります。これから一生、あなたのお世話をさせていただきますね?」


「…………は?」


「ご飯作って、お風呂に入れて、膝枕で褒めて、寝かしつけて……妻とは違う、深い愛で包んであげるわ」


「えぇぇぇええええええええええ!?!?」


 ルークの悲鳴と、ミレイア&クラリスの怒号が同時に洞窟に響き渡った。

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