表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

4.甦る記憶

学術会議の翌日。王宮のホールでは出席者の交流をはかるための晩餐会が開かれていた。

晩餐会のホールには、豊かな音楽と香ばしい肉料理の香りが漂っていた。水晶のシャンデリアの光は煌びやかだが、テーブルごとに置かれた燭台の蝋燭の火は、それぞれ独自の揺らぎを見せていた。


晩餐会の喧騒の中、レオンはひとり、グラスを持ったまま蝋燭の炎を見つめていた。


(……揺れてる……)


炎の芯が、まるで誰かの瞳のように脈打つ。次の瞬間、鋭い痛みが頭を貫いた。


「っ……!」


額を押さえた瞬間、視界が急にぶれる。強く頭を締めつけるような痛み――それはまるで、封じられていた記憶が扉をこじ開けようとする音だった。


脳の奥に火花が散る。目の裏が焼けるように熱く、そして冷たい。


――灰色の煙。

――赤黒い血だまり。

――手を伸ばす誰かの腕。

――「生きろ、レオン、スワニルダ家の誇りはお前が守れ」


(これは……)


「...スワニルダ家の…誇り....父上...?」


呻くようにこぼれた言葉とともに、痛みがさらに強くなる。まるで槍のように、記憶が脳髄を突き破る。


「逃げて...!レオン...!」


母の声。

火の手の回る廊下。

泣き声と、刃の擦れる音。

暗闇の中、揺れる灯火に照らされた血の跡。

自分の手が、震えていた。


(やめろ……思い出したく、ない……っ!)


「っ……あ、ああっ……」


次の瞬間、レオンの身体が傾ぎ、ガシャンと食器が床に散らばる。


「レオン!」


ユリウスが即座に抱き止めた。レオンは目を見開いたまま、わずかに痙攣し、肩を震わせていた。


「誰か、医師を呼べ!」


出席者たちがざわめき立つ中、ユリウスはレオンの額に手を当て、その異様な冷たさに歯を食いしばる。


「……レオン、戻ってこい。大丈夫だ、俺がいる」


レオンの唇がわずかに動いた。


「……はは…うえ……」


それが誰の名を呼んでいるのかを、ユリウスだけが理解していた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ