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モリアーティ教授の手帖

不可解な死の二重性

作者: アヤ鷹
掲載日:2025/04/05

『二つの死』





この世には”完璧な犯罪”など存在しない。

だが——“不可解な犯罪”は、完全犯罪に等しい。



今夜、二人の男が死ぬ。


一人はロンドンの裏路地で。


もう一人は邸宅の密室で。




二つの死。


まったく異なる状況。



だが、奇妙なことに——二人は同時に死ぬのだ。




この不可解な現象が、ホームズの推理を揺さぶることになる。



“殺人者は一人”でありながら、“同時に二つの死を引き起こす”という矛盾。




さあ、ホームズ。

この”二重性”を解き明かせるか?







『矛盾する証言』




「……ワトソン、もう一度確認してくれ。」



私は事件の報告書を読み返した。

二人の男が、全く異なる場所で、“同時に”死亡している。



「ロンドン橋の下で男が刺殺されたのが午後9時17分。」




ワトソンが頷く。




「一方、メイフェアの邸宅で発見された死体も、検死の結果、死亡時刻は午後9時17分。」




「ありえん。」


ワトソンが不審そうに眉をひそめる。




「でも、どちらの死体も間違いなくその時間に絶命している。」


私は新聞の記事をめくり、ある一文を見つけた。



『二人の男は双子だった』



なるほど——そういうことか。


しかし、“双子”だからといって”同時に死ぬ”理由にはならない。



不可解な死の二重性——



この矛盾こそが、モリアーティの仕掛けた罠だ。








『影の策略』





ホームズはもう気づいただろうか?



双子の兄弟。

同じDNA、同じ容姿。

そして、同じ死。



だが、この”二重の死”は単なる偶然ではない。



ひとりは”本当に”殺された。

もうひとりは、すでに死んでいた。



“片方は殺害され、もう片方はそれを隠すために利用された”。



死体が二つあれば、殺害時刻に矛盾が生じる。


“同時に死んだ”という証言が生まれ、殺人者の存在は曖昧になる。



警察は混乱し、ホームズは矛盾に苦しむ。

それこそが、このトリックの狙いだ。








『一秒の違和感」




ある一点で、私はすでに疑っていた。



──死体の状態だ。




ロウソクの燃え残り、紅茶の温度、そしてドレッサーに残った香水の揮発具合。

被害者AとB、ふたりとも、検死では「9時17分死亡」と記されたが……


私にはどうしても、邸宅の遺体のほうが、**“早く冷えていた”**ように思えたのだ。


ワトソンには言わなかった。言葉にしてしまえば、私自身がその“直感”に呑まれる危険があるとわかっていたからだ。



それに、あの告白文も気がかりだった。



「私が2人を殺しました。なぜなら、彼らは……」と続く手紙。



すべてが理に適っている。だからこそ、逆に美しすぎた。



あの自白こそが最初から仕組まれたトリックだとしたら?



そしてもし、被害者は同時に二人いたのではなく――


ひとりは“同時に死んだことになっていた”だけだとしたら?




私は、再度、検死官に非公式で確認を取った。

「被害者Aの胃の内容物と温度、記録と矛盾していないか?」



そして返ってきた答えは、やはり「奇妙なほど胃が冷えていた」だった。



その瞬間、私はすべてを理解した。





ワトソンが不思議そうに尋ねる。


「ホームズ、何か気づいたのか?」




「一つ、決定的な矛盾がある。」


私は死体の手に残る血痕を指差した。



「ロンドン橋の被害者は刺殺された直後に死亡した。」




「それは検死報告にも書かれているな。」




「だが——メイフェアの邸宅で発見された遺体には、“死亡後”に動かされた形跡がある。」



ワトソンの顔色が変わる。


「つまり……」




私は頷いた。


「二人は同時に死んだのではない。」



「一人は、すでに死んでいたんだ。」









『舞台の裏側』


ホームズが気づくか、否か。それだけが賭けだった。


だが、私は信じていた。彼が“最も合理的な違和感”にたどり着くことを。

そして、それこそが私の真の愉しみだった。



――死は演出できる。タイミングと“検死の限界”さえ読み切れば



私は微笑んだ。


「さすがだな、ホームズ。」


「私の仕掛けた”二重の死”のトリックを暴くとは。」




ホームズは静かにこちらを見つめる。


「影の策略には、必ず光が射すものだ。」




私は肩をすくめた。


「だが、“不可解な犯罪”は人々の記憶に長く残る。

それこそが、私の狙いだったのさ。」




ホームズが推理を解いたとしても、世間の噂は止まらない。



“双子の兄弟が同時に死んだ奇妙な事件”——



その怪奇さは、モリアーティの名をさらに広めることになる。




「さて、ホームズ。」


私は立ち上がる。



「今回は”引き分け”としよう。」


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― 新着の感想 ―
なぜ犯人は一人前提で推理が始まったのですか?犯人が自首して、私が二人を殺しました。と言ってきたのですか?そのせいで、本当に一人で二つの場所で同時刻に殺害なんてできるのか?となったってことですか? 検…
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