Ⅰ.暗殺者誕生(2)
暗殺者の両親を突然殺された少女は反撃を試みるが首に打撃を受け、気絶してしまう。運ばれた先は――――。
目が覚めて、気づくと小さな部屋の中にいた。同い年の少年少女が7〜8人収容されていて、拘束はされていなかった。泣き叫ぶ子、寝たまま動かない子など様々だが、近くにいた、ただ一点を見つめ動かない少女に声をかけた。
「ここはどこなの。これから私達どうなるの。」
その子は視線を変えず
「『任務』に出されるんだって。」
とだけ言った。
ここには私と似た境遇をもつ子供が集まっているらしい。暗殺者の子供を残さず使おうという魂胆だろう。こんな子供役に立たないだろうが、なぜ………。するとさっきの渦巻きの目の少年と、スーツを着た男が入ってきた。
スーツの男が周りを見渡し、
「これらが任務用ですね。車の準備はできています。」と言った。
「よし、車に積み込め。出発する。」
と渦巻きの目の少年が命令した。
腕を拘束されている私達は1列に並び、トラックへ乗り込んだ。
乗ること1時間――――
「おい、降りろ。」
と声が掛かった。トラックから降りると、目の前には廃病院があった。
「ここはとある組織の拠点だ。今から君たちにはここにいる人たちを全員殺してもらう。暗殺者の子供ならできるだろう?」
渦巻きの目の少年が問いかける。答える者はいない。
「戦地に向かう貴方がたへ、こちらを」
スーツの男が拳銃を1丁ずつ配った。
「全員殺して生き残っていた人は組織に入れてあげてもいい。健闘を祈るよ。」
少年は笑顔で手を振り見送った。子供の中には拳銃の扱い方を知らず戸惑う人や恐怖で動けない人もいた。私は協力しようと他の人に声をかけようと思ったが、ここは厳しい世界、裏切りなんて日常茶飯事だ。信用できるのは自分自身のみ。幸い、私は父から拳銃の扱い方を教えられていた。拳銃を入念に確認し、振り返って渦巻きの目の少年を見た。そして
「名前はなに。そのぐらい言う義務はあるはず。」
と思い切って聞いた。返事は返ってこないと思ったが、案の定返ってきた。
「零だ。」
「主様、言ってしまっては……。」
「いいんだ、どうせ生きて帰って来れないんだ、言ったって分からないさ。」
と言い、私の方を見ながら
「満足した?したならさっさと行きな。」
と心底つまらなそうに言い捨てた。こいつにはこの1丁の拳銃じゃ勝てない、と思い戦うことを諦め建物の中へ入った。