表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゴロヒクルマ、ハ? 該当のクエストを処理することができません

「ゴロヒクルマ、ハ? 該当のクエストを処理することができません」

 

吾輩(ワガハイ)(ネコ)である、それが本の題名です」

 虎林(トラバヤシ)は、軍手をはめた手で本を持っている妖精に声を掛けた。途方に暮れた幼い顔に詫びるように会釈をしたあと、電源をオフにした。妖精は静かに部屋の隅に置かれた椅子のところに行って、座ったまま眠るような姿になる。椅子はエネルギー補給スポットなのだ。

 この妖精は、虎林が設計加工したクエスト[業務]達成型ロボットである。金髪に碧眼を持つ10歳ほどの少年の姿のロボットに、虎林は妖精という呼び名をつけた。

 主要なクエストの設定は、本の整理。漢字を読み、文学リファレンスサイトにアクセスして確認するのが彼のクエスト。

 上手く動いていると思ったが、人間には思いつかないような行動をする。


 虎林は空中で杖を振り、設定ソフトウェアを開き、詳細な枝番項目を確認した。

「漢字のデータベースが書籍整理向きに設定できていませんでしたね、ごめんなさい」

 設定を変えながらつぶやく。自分の不注意で可哀想な目に遭わせた、と虎林は反省した。

 

 相応しくない漢字範囲を適用してしまっていたのを修正。修正前に妖精が認識できた文字の範囲では、「吾」は漢数字の「ゴ」とカタカナの「ロ」、「輩」は非常口の「ヒ」とクルマ。だからクエストを成し遂げることができなかった。

 

 電源を入れ直すと、妖精の碧眼は輝きを取り戻し、再び乱雑に積み上げられた本の山が置かれた台に戻って業務を再開した。

「一番上の本は、ワガハイハネコデアル。日本。20世紀。文学・ワに割り当てる棚に置きます」

「そのとおりです。お願いします」


 虎林は本の移動を始めた妖精と微笑を交わしあったあと、台所に向かった。

 たまご色の柔らかなクッションの上で眠っている猫がいた。虎林が最初に設計加工したロボット――クエストは床の掃除――である。

 今日もそろそろ電源を入れよう。最初は自動起動なども試みたが、いまはあいさつしてから電源を入れる形に落ち着いた。


「あとで、妖精を猫に紹介しましょうね」

 ひとりごとを言いながら、虎林は幸せそうに微笑んだ。

 

「第5回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」https://www.joqr.co.jp/ag/article/106713/ に参加しています。


2023/12/11 誤字を訂正し、説明を詳細にしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ