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「こんにちはクレア嬢。今日は私のために時間を取ってくれてありがとう」


「こちらこそありがとうございます。今人気の舞台を見に行けると聞いて、ずっと楽しみにしていました」


「それは良かった。どうぞ中へ」


私の家の前に止まった、公爵家の大きな馬車。

そこから、物語の王子も顔負けなキラキラとした男の人が降りてきた。


そう私の婚約相手、リアム様である。


今日は私の誕生日祝いとして観劇デートをしようと誘われている。

彼は私が馬車へと移動するのを手伝い、その後自分も乗り込んだ。


「婚約以降、なかなか連絡が出来なくてすまない。少し立て込んでいてね……」


「大丈夫ですよ。心配なさらないで」


その分私もゆっくり出来たので、という言葉は飲み込んでおく。


向かいに座るリアム様は、その言葉にほっとしているように見えた。

案外、私に振られるかも、とか思っていたりして……いや、そんなことは無いか。


「……」


「……」


気まずい。

でも、絶望的に話す内容がない。

まぁ話す内容はあるかもしれないけれど、どうしても話題を選ぶ必要が出てくる。

例えばここで、小説オタクな話を始めたら1発アウトであるように。


「……え、えっと。あ! あのお店、最近話題のお茶を売っているお店ですね」


「……あ、あのお店か。確かに最近は東方の茶が流行っているようだね」


「この間、エリーラさんのお茶会に招かれた時、とても美味しいお茶が出てきたので、思わずお店の名前を聞いてしまったんですよ……


そこから暫く、今話題のお茶の話をすることに成功する。

やっぱりキラキラ系には、こういった流行の話題が1番だ。

エリーラ伯爵令嬢のお茶会は、面倒であまり気乗りがしなかったけれど、ここでリアム様との話題のネタに出来て良かった。


私は何とかお茶の話だけで行きの馬車の中を凌ぎきり、ようやく劇場へと足を踏み入れることが出来た。


◇◇◇


「……とても面白い舞台でした。まさか姉が、実は妹の味方だったんなんて!」


「私も、最初は姉が国を乗っ取ろうとしているとばかり思っていたよ。最終的には本来在るべき形に収まって良かった」


「ですよね。これからも末永く姉妹で国を収めていってほしいです!」


物語が好きな私は、勿論観劇も大好きだ。

恐らくリアム様に誘われなくても、1人で見に行っただろう。


「そういえば、渡すものがあるんだった。少し待っててくれ」


そう言って彼は従者を呼び1つの箱を受け取ると、私の前で開いてみせる。

流行りものは全て記憶しているので、すぐに分かる。

そこには、今流行りのアザレア商会のネックレスが入っていた。


「君に似合うと思って。これ、誕生日プレゼントなんだ。受け取ってくれるかい?」


「ありがとうございます! アザレア商会のネックレス……本当に嬉しいです」


ちゃんとネックレスについて知っているのをアピールする。

そんな私の様子に彼は満足そうに笑い、自分の手で私にネックレスを付けてくれた。


「大切にしますね」


「あぁ」


流行の品で、婚約者からのプレゼント。

話題性バッチリだ。


そんなことを考えながら再び馬車に乗り、下町をぬけて再び家まで戻る道を辿る。

行きはリアム様と何を話せばいいのかよく分からなかったけれど、帰り道は舞台の感想を話しているからか、会話が弾んだ。


「あ……」


ふと、窓から見えた光景に、思わず声をあげる。


「どうしたんだい?」


「えっと……」

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