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クレア嬢を乗せた馬車が見えなくなるまで手を振り続ける。


あぁ、やっと顔合わせが終わった……

僕は腕を伸ばし、息を深く吸う。

ちゃんとクレア嬢のお眼鏡にかなう公爵令息になれていただろうか?


これで、


「思っていたような素敵な方じゃ無かったので、婚約は破棄しますわ」


とか言われてしまったら、自分も傷つくし、両親にも、


「あれほど見放されないようにと言ったのに」


と文句を言われるに違いない。

うん、自分の本性は隠さないと。


でも今日の顔合わせは特に問題なく終わることが出来てよかった。

今話題のお菓子も、母親に教えてもらい用意することが出来たし、クレア嬢への対応も問題なかっただろう。

まぁ、ああいった言動を日常的にやるのは恥ずかしくて出来ないが。


……いざ結婚したらどうしようか。


「じゃあ、僕は部屋に戻るから。夕食には顔を出すって両親に伝えておいて」


「かしこまりました」


そんなこと考えている時間が無駄だ。

今はそれよりもやらなくてはならないことがある。


ズバリ、栞作りだ!


急いで自分の部屋まで戻り、奥の棚から絵を描くための道具を引っ張り出す。

この前偶然出会ったレアは、『レベル99の勇者は魔王と恋に落ちる』のガチのファンだ。

生半可なクオリティではガッカリさせてしまう。


「よし、取り掛かるか」


そう独り言を呟き、それからは夕食の時間だとメイドがやって来るまで熱中していたのだった。


◇◇◇


「す、すごい! こんなものを貰っていいの?」


「もちろん。レアの為に作ったからね」


リーと趣味仲間になってから2週間後。

私はとてつもなくクオリティの高い栞を前にして慄いていた。


ちなみにリーとは年が近いこともあり、この際敬語は使わずに話そうということになっている。


「これ、すごく時間がかかったんじゃない?」


「確かに時間はかかったけど……僕、家でのんびり絵を描くのが好きで、全く苦じゃなかったから平気! 遠慮なく受け取って」


「ありがとう。棚に飾っておくね」


「いや、栞として使って?」


「そんなの勿体ないよ!」


そんな会話で笑いあったものの、リーの笑顔には疲れが見えたような気がした。


「……余計なお世話だったらごめんね。なんだか元気なかったりする?」


その言葉に彼は少し困ったような顔をする。

たかだか2回しか会っていない相手だ。

そんな私に相談するのは、やはり難しいだろうか?


「無理に話せとは言わないけど……話した方が楽かもしれないよ?」


彼の趣味仲間……一友人として話を聞きたい。


「気を遣ってくれてありがとう……そうだな、レアになら話していいかも」


一呼吸置いた後に、彼は悩みの原因を打ち明けてくれた。


「実は最近、婚約をしたんだ。相手は悪い人ではないんだけど、ただ完璧でキラキラしすぎていて、少し気疲れしちゃうというか……」


その言葉に息を飲む。

何故かと言ったら……


「私も同じような感じ!」


「……え!?」


「私もこの間婚約をしたんだけど、相手が完璧すぎて結婚生活が不安なんだよね。それにまだ、私がダラダラすることが好きな人間だっていうことも言ってないし……」


「僕もまだ言えてないんだ。もし、そんなことを打ち明けたら、婚約破棄されるんじゃないかと思うと心配で」


「その気持ちすごくよくわかる! ……私達はこんなに小さなことですら言うことが出来ないんだから、魔王が勇者に自分の正体を言えないのも納得だよね」


「確かに、少し状況は似てるかも。魔王には打ち明けて欲しいと思っていたけど……やっぱり自分の身になると言えないや」


「なんだか私とリーって本当に似たもの同士だよね、今度また相談し合おうよ。お互いに、どうにか結婚生活を送るためにも」


「うん。僕も、時間が空いて外に出る気力のある時に、出来るだけここに来るよ。会えたら話そう」


手紙でやり取りをしよう、とか言われなくてよかった。

リーとは仲良しではあるけれど、流石に侯爵家の令嬢としてのやり取りは出来ないから。


「私もそうする! 会える時に会おうね」


キラキラ系令息と婚約しなければならないことを悟った時、とても今後が不安だった。

でも、同じような仲間がいることで少し勇気を貰える。


程々に頑張るぞ! という決意を改めて持つことが出来た。


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