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「ようこそお越しくださいました、クレア様」


王都内の一等地に建つ、私の家よりも一回り……いや二回りほど大きな家に来ていた。

そう、婚約者のリアム様の家である。


今日は、婚約後初顔合わせをする為に、朝早くから支度をしてここまでやってきた。

メイド達が私を起こしてきたのは何と朝の4時半。

もっと寝たいと文句を言ったら、メイドが


「私達は四時起きです」


と言うものだから、私はもう何も言えなかった。


そこからお風呂に入り、念入りに磨かれて、着心地の悪い外出用ドレスを着た後に、隅々までメイクをされた。


こうして、無事完璧キラキラ令嬢としての化けの皮を被った私は、背筋を伸ばし、深呼吸をして、邸宅の中へ足を踏み入れる。


広い玄関ホールの奥にある階段を登った後、


「こちらでございます」


とメイドは両開きの扉を開け、私を中へ促した。

そこには優雅に紅茶を飲むキラキラ系令息……もといリアム様の姿がある。


「こんにちは、わざわざこちらまで来てくれてありがとう」


「いえ、この日を楽しみにしておりましたので」


まぁ、嘘だけれども。

本当はこの日がやってくることを考える度に憂鬱になっていた。


「私も君に会えるのを楽しみにしていたよ。今日も綺麗だね」


「ありがとうございます……」


見た目だけではなく、言動も令息の鏡だ。

彼は私の手を取ると、ソファーまでエスコートをする。

そのまま彼も向かいのソファーへ座り、紅茶を勧める。

私はそれを飲み、一息ついた。


そして、テーブルに置かれたお茶菓子に気がつく。


「このマカロン、今話題のラ・ジャルダンのものですよね? 噂通りとっても素敵です」


このお店のお茶菓子は、最近貴族社会の中で流行り始めたものだ。

確か先週王女様とのお茶会が開催された際に話題になっていたはず。

完璧侯爵令嬢たるもの、流行には敏感でなくてはならない。


「流石クレア嬢、正解だよ。気に入って貰えると思って用意したんだ」


「ありがとうございます! 頂いてもよろしいでしょうか?」


「あぁ、どうぞ」


リアム様はそう言いながら、席を移動して私の隣までやってくる。

そして、マカロンを1つ掴んだかと思えば、私の口に向かって差し出してきた。


「……!?」


動揺してはいけない。

キラキラ系令嬢ならこのくらい余裕で対処出来るはずだから。


そのまま何事も無かったかのように口を開き、マカロンを食べる。

流行を追うのは面倒くさいが、このマカロンはとても美味しかった。


「わざわざこんなに優しくして下さらなくても……」


こんなことをされては、政略結婚の相手で、恋愛感情は全くないとはいえ、心臓がもたない。

だから、少し苦言を呈してみた。しかし、


「私達は夫婦になるから、これぐらい当然だろう?」


と、あっさりかわされてしまう。


そのまま1時間ほどして、彼とのお茶会はお開きとなった。


行ってみて分かったことは、やはり私達は政略結婚であるということ。

リアム様の態度は普段と何も変わらなかった。

ただ、女の人の扱いに慣れていることを再確認しただけだ。


顔合わせですらこんなにも疲れるのに、果たして結婚後に上手くやって行けるのだろうか?

そんな大きな不安を抱えたが、何か出来るわけでもないので、私はそのまま家に帰ってゴロゴロするのだった。

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