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「このカフェにしましょう!」
私は本屋の斜向かいにある、美味しそうな匂いがするカフェを指さした。
「入りましょうか」
私達は、早く小説が読みたくてソワソワしながら飲み物を注文し、席に着いた。
そして、がさごそと袋の中に入っている本を取り出す。
「読み終わったら、語り合いましょうか」
「わかりました」
彼はそう言うと、直ぐに手元の小説へ目を落とした。
私もワクワクしながらページをめくる。
レベル99の勇者というタイトルがついてはいるが、この勇者は最初から強いわけではなかった。
その証拠に、1巻の冒頭で魔王と対峙した時は呆気なくやられてしまう。
この小説は、勇者がレベル以外の強さを見つけていく……そんな物語なのだ。
そしてその手伝いをしているのが、なんと魔王。
彼女は勇者に興味を持ち、自分と対等に戦えるようになる日を楽しみにしながら、時々勇者の前に現れては手助けをしていく。
勇者と魔王はだんだん惹かれあい、4巻ではなんと遂に! 同棲まで始めてしまう。
しかし4巻のラストでは、魔王が仲間の部下と一緒にいるところに、タイミング悪く勇者が帰ってきてしまった。
そこからの5巻である。
魔王は勇者に見つかったことに驚き、そのまま家から出て姿を消してしまう。
勇者は好きな相手が魔王であったこと、そして魔王が逃げてしまったことにもショックを受ける。
彼女に好きという気持ちを伝えるべきなのか、それとも倒すべきなのか……そんな葛藤を抱えながら、勇者は魔王探しの旅を続けていく。
5巻の大体のあらすじはこんな感じだった。
私としては是非とも魔王とくっついてもらいたいけれど……
「読み終わりましたか?」
「終わりました」
そう質問をしてきた彼も登場人物に感情移入したのか、なんとも言えない顔をしていた。
「いつかこういった展開になるとは思っていましたが……勇者はどちらの選択肢を取るんでしょうね」
「私としては魔王と結ばれて欲しいけれど……だってここまで彼を見守ってきたのは魔王だもの。でもそれは、勇者としての役割を放棄することも意味するのよね」
「僕も2人は結ばれて欲しいです。ですが、今回は逃げた魔王のその後の心情描写がなかったので、それ次第なところもありますね」
「きっと彼女も、自分が魔王なことを明かすタイミングをうかがっているところだったはずなのに……」
「自分のことは自分で伝えたかったはずですよね。僕的にはもう少しはやく伝えるべきだったとは思いますけれど」
彼は大きく頷く。
「あーもう! とにかくはやく6巻が読みたいわ!」
「それには完全に同意です!」
一通り感想を言い終わると、なんだか美味しい匂いが漂ってきた。
「お腹も空いたし、お昼にしますか?」
彼も同じことを感じたようだ。
「えぇ!」
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