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2人で初めてデートをした日と同じように、私は家の玄関でリアム様がやってくるのを待つ。
でもあの日と違うのは、何故かソワソワとした気持ちが収まらないことだ。
「ねぇ、私ちゃんとリアム様の婚約者として相応しい格好になっているかしら」
「えぇ、大丈夫ですよ。普段の様子も見ている私が断言させて頂きます」
そばに控えていたメイドは、自信たっぷりな顔で頷いてくれた。
私は耳元に手を伸ばし、イヤリングに付いたガラス玉を触って気持ちを落ち着かせる。
少しすると執事が私の元へやってきた。
「リアム様がおいでになりました」
「すぐに行くわ」
家の扉を抜け、ドレスの裾を持ち上げながら急いで庭を歩く。
握ったドレスは菫色で、嫌でもリアム様の瞳を思い出させる。
でも、何故か菫色を着たいと思ってしまったのだからしょうがない。
門の前で、丁度リアム様が馬車から降りているところが目に入った。
「お待たせ致しました」
「今日は私と舞踏会に参加してくれてありがとう。精一杯エスコートさせてもらうよ」
「……はい、お願いします」
驚いた。
彼はピンク色のブローチを首元に付けている。
今まで舞踏会でそんなものを付けているリアム様なんて見たことがない。
もしかして、私の瞳の色を意識してくれたのだろうか?
なんだかそれだけで心が暖かくなる。
「どうぞこちらへ」
「はい」
彼は私を馬車の中へ招き入れ、そのまま隣同士で座る。
「もしかして、今日は私のことを意識してドレスを選んでくれていたりする? それだったら嬉しいな」
「……婚約者なので。リアム様こそ、そのブローチは?」
「ははっ、バレちゃったか」
やっぱり私を考えて選んでくれたんだ。
ソワソワと早鐘を打っていたはずなのに、いつの間にかドキドキに変わっている。
その気持ちを誤魔化すように、私が下ろしていた髪を耳へかけた時、リアム様が驚いた顔をした。
「……それ、」
「え?」
「付けてきてくれたの?」
「えぇ、素敵な誕生日プレゼントだったので……似合ってますか?」
「……とても」
似合ってる、と顔を背けて言ったリアム様の声は、とても小さかった。
でも、彼の耳が赤くなっているのに気がついた。
軽く笑いながら、サラッと似合っていると言ってくれるものだと思っていたから、私も調子が狂ってしまう。
……私達の手と手は、触れそうで触れない距離まで迫っているような気がした。
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