1
ゆっくり更新していこうと思っています。
よろしくお願いします。
「クレア様! 今日も相変わらず素敵ですこと……最近はやはりマーメイドラインが流行りですね」
「ありがとう。そうね、このシルエットにしか出せない雰囲気があるもの。マーメイドライン以外有り得ないわ」
「その髪飾りは何処で買ったのですか? 見た事が無いデザインで可愛い……!」
「これはアザレア商会で買ったものなの。この大ぶりな花の飾り、ドレスにピッタリだと思わない?」
「とても似合ってます! 流石社交界の華!」
私は、クレア・アンダーソン。
侯爵家の一人娘として生まれ、18になった今は社交界の華と呼ばれている。
常に流行に敏感で、美しい容姿を保っている……いわゆる「キラキラ系」な令嬢なのだ。
「あっ! リアム様がこちらへ向かってきているわ!」
令嬢の1人が私の背後を見やった。
振り返るとその視線の先には、銀色の髪に、澄んだ菫色の目をした……いかにも「キラキラ系」な男がいる。
「やぁクレア嬢、今日も素敵な出で立ちだね」
「ありがとうございます! リアム様も、いつにも増してかっこいいですわ」
私がそう言うと、公爵令息である彼はすかした感じでにっこりと笑った。
「今日も、私と一緒に踊ってくれるかい?」
「勿論喜んで」
周りの令嬢も令息も、私達の様子を羨望の眼差しで見つめてくる。
身分が高くて、常に流行の最先端を歩き、キラキラとした雰囲気を放っている……きっとそう思っているのだろう。
しかし、現実は違う。
リアム様のエスコートを受けて、ダンスホールの真ん中へと向かう私の足は重かった。
なぜなら
私は、「キラキラ系令嬢」を演じているだけに過ぎないから!
本当は、こんなドレスなんて脱ぎ捨てて、髪の毛も解いて、家のベッドでゴロゴロしながら、恋愛小説とか冒険小説を読みたい!
正直に言えば、リアム様のようないかにも「キラキラ系」な人は近づきがたいし、更に言うならば舞踏会なんて出たくもない。
そんな私の内心に気づいてもいないだろうリアム様は、うわの空な私を見て首をかしげる。
「何か考え事? 私の方を見て欲しいな」
そんな歯の浮くような言葉と共に、私の顔に手を添えて、キラキラビームを浴びせてくる。
「り、リアム様のことしか見えていないですわ」
やっぱり、親に散々身だしなみを注意されたから必死に勉強したり、わざと軽い言葉を言っていたりする私とは違う。
人工物は天然には敵わない。
私は完璧な令嬢になりきって、今日も舞踏会をやり過ごす。
あーもう!
早く帰りたい!
そして
体力的にも、精神的にも疲れて帰ってきた私を待っていたのは、
リアム様との婚約話であった。
読んでくださりありがとうございます。
いいね、ブックマーク、評価等していただけるとモチベーションになります!