歪なぬいぐるみ
本来はクリスマス当日に投稿する予定だったのですが、体調を崩してしまい投稿出来ませんでした、お詫び申し上げます。
さて、皆さんは母親という存在について真剣に考えたことはありますか?このお話を通して、少しでも考える機会になれば幸いです。
私の母は体が弱くずっと入院していた。なので私は、ずっと父と暮らしている。そんなある冬の日のこと。父が「アカリ、お母さんからのクリスマスプレゼントだよ」と、歪な形をした熊?のぬいぐるみをくれた。どうやら母が病室で作ったらしい。反抗期真っ最中だった私は、しばらくお見舞いに行っておらず母と会っていないということもあり、「こんなもの、いらない」と言い、その場に投げ捨ててしまった。
翌日の朝のことだった。父から母が亡くなったと聞かされた時は、泣きもせず、驚きもせず、ただ呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。それから1ヶ月くらいのことはよく覚えていない。気がついたら母のお通夜も、お葬式も、火葬も、全て終わった後だった。ふと、母がくれたぬいぐるみのことを思い出した。あの歪な形をした、不格好なぬいぐるみ。どこへ行ったのだろうと思い、家中を必死に探し回った。たぶん父が保管していたのだろう。ぬいぐるみは父の部屋の机に置いてあった。この前父から渡された時には気づかなかったが、一通の手紙も添えられている。恐る恐る封筒を開け、中身を見る。そこには弱々しくも凛々しい字で、『アカリへ』と書いてある。私宛だ。
アカリへ
こんな日にも寂しい思いをさせてしまってごめんなさい。お父さんとは仲良くやれているかな。しっかりしたアカリのことなので、きっと私が居なくてもちゃんと出来ていると思います。でも、どうしても頑張れない時や、辛い時もあると思います。そんな時に母親が居ないなんて、お母さんのこと、嫌いになっちゃうよね。でもこれだけは知っておいてね。お父さんもお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、アカリの周りにいる人たちはみーんな、アカリのことが大好きなんだ。だから、きっと力になってくれると思います。早く病気を良くして、会いに行くからね。それと、この手紙の一緒に渡すぬいぐるみはお母さんが作った自信作です。可愛がってあげてね。
「愛しています」
お母さんより
読み終えたとき、私は、泣き崩れてしまった。私は、「なんで素直に受け取らなかったんだろう」「なんでもっとお見舞いに行ってあげなかったんだろう」歪で不格好なぬいぐるみを胸に抱きながら、そうやって自問自答を繰り返した。しばらく泣いていると、父が帰って来た。最初は驚いた顔をして心配してくれたけれど、手紙を持っているのを見て大体把握してくれたらしい。優しく頭を撫でて抱きしめてくれた。
あれから数年、私は医学部を目指し、受験に挑もうとしている。「そうか、今年も、もうクリスマスか。」母はもう居ない。それは変えることの出来ない事実だ。でも私は負けない。なんて言ったって、お母さんの愛がこもったこの「お守り」があるんだから。
お母さんに会いたくなりましたか?なったなら、メールでも電話でも、なんなら直接会いに行ってもいいです。感謝を伝えてくださいね。読んでくださりありがとうございました。