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作者: 戸田 猫丸

 

優志(まさし)、見てごらん。星があんなにきれいだ」


「ねえお父さん、僕ね、いつかね、あの7つのお星様に会いに行くんだ」


「お前はあの7つの星がお友達なんだね」


「うん。あの7つのお星様は、いっつも、あのお空から笑いかけてくれてる気がするんだ。いつかきっと、会いに行けたらいいな」


「じゃあ、今すぐに会いに行ったらいいんだよ」


「え……? どうするの?」


「お前がその気になれば、会いに行けるよ……」



 ぼくは満天の星の中の、 7つの星を見つめた


 ぼくは飛んでゆけるんだ


 今から会いに行くよ


 ね、一緒に遊ぼ……



 ぼくは、星になった


 満天の星の中、あの7つの星へ


 駆け抜ける 流れ星になった



 もうすぐ会えるんだ


 えへへ……、一緒に遊べるんだ


 今、ぼくは今、宇宙空間を駆け抜けてる


 流れ星になって、駆け抜けてる


 7つのお星様、待っててね


 もうすぐ、会えるからね



 7つ星は 黄色に輝き微笑んでる


 と思ったら、だんだんオレンジ色に変わっていく


 7つ星がどんどん赤く大きく膨らんだと思ったら


 突然ピカッと、目の前が真っ白な光でいっぱいになった



 ……あれ? 7つのお星様は? どこ?


 どこにもいない。 知らない星ばっかり。


 ねえ。出てきてよ……せっかく会いに来たのに。


 ねえ、どこに行っちゃったの?



「あの7つ星はね、もう消えちゃったんだ」


「……お父さん? うそでしょ。ねえ。さっきまであんなに元気に光ってたのに……!」



 ぼくは瞬く間に宇宙空間から、家の庭へと引き戻された


 あのね、星ってのはね。今地球から見えてる星は、何万年も、何億年も前の姿なんだ。お前が地球から見てた7つのお星様は、お前が生まれるずっとずっと前の姿なんだ。


 ちょっと難しいけど、君があの星に近付くにつれて、あの星はだんだん〝今〟に近づいていく。


 何億年も前、あの7つ星は輝いていた。だけど、星だって永遠に輝いているわけじゃない。今あの7つ星は、もう消えてなくなっちゃってるんだ。



 うちの庭から見える、7つのお星様


 今も相変わらず、白色の光を放ちながら微笑んでいる


 気付くと、ほっぺたに涙が流れていた


 時の流れって、何だろう



 ぼくは、お父さんの手をぎゅっと握った


 たしかに、温もりを感じた


 お父さんも、庭の草木も、近所の家も、そこにあるようで


 ホントはもう、消えちゃってるのかもしれない


 だけどたしかに、ぼくの目には、そこにあるように見える



 7つのお星様、会いたくても、もう会えない


 だけど、 この広々とした宇宙の中


 たった今、ぼくの目に見えるもの


 たった今ここで、触れ合える人


 永遠には続かないこの時を、大切にしたいな



 7つの星はこれから先も永く、輝き続けるのだろう


 お父さんはぎゅっと、ぼくの手を握り返してくれた

お読みいただき、ありがとうございました。

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