file5
「んん…!!」
「お前……!?」
「なんかのショーの最中っすか?あ、すまん。なんか…うん。失礼しまーす。」
「ん!?」
助けて……くれないの……?私が……勝手に出ていったから……?
「おい、逃がすな。」
ドアを開けようとすり橘川に、1人が命令通りに橘川を中に閉じ込めるようにしてここから脱出させないように室内に入れ、ドアを閉める。
「ちょっと待てお前。」
「何か?」
すると、どこからか金属バットを持ってる人が橘川の腹を殴る。彼は脇腹を押さえて、その場に倒れる。肋骨は折れてるかも知れない。
「おい、これを見たやつを始末しろ。」
複数人が橘川をタコ殴りにする。叫び声が私の耳に入る……。目を瞑って今の光景を見ないようにする。でも、耳に音が入るので忘れたくても忘れない。時間は……分からない。でも、動かなくなった橘川はその場に倒れたまま。そして、標的を私に戻す。ブラジャーを無理矢理剥がされ、上半身裸になる。その結果……私は全裸になっていた。
「さぁ、楽しもうぜ……。俺らがきちんと……気持ちよくしてやるよ……。」
またしても、闇に引きづられてた。もう、終わり……そう思った。悲鳴を上げながら、嬲ろうと私たちに接近していた。不吉な手、もうやられるのかと思っていたが。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
突然、後ろにいた男子生徒が荒げだした。何事かと、男子生徒に注目する。右腕が曲がらない方向に曲がっていた。それをしているのは……橘川だ。
「おいおい、こんなことしておいて返ってくるって思わなかったのかよ、モブ。」
「誰が………モブ……だ………。」
「お前だよ。」
ゴキという肩の関節が外れた重い音が鳴った後、橘川はその男子生徒に回し蹴りを喰らわす。顔に食らって、起き上がれなくさせた。その様子を見ていた周りの生徒、中原も唖然としていた。橘川は……みたことのない表情をしていた。目を細め、睨む。まるで、汚物を見るような。
その頃、俺が出て行った後のパソコン室ではー。パソコン部員が話しかけていた。
「足立。」
「なんですか?」
「橘川……だっけ?あの人、大丈夫なのか?」
心配する友人に対して、足立は少し笑う。
「大丈夫ですよ。橘川氏は過去に色々と鍛えていたのですから。」
「鍛えていた………?」
「橘川氏は両親が警察官でして、あらゆる武道をやらされたのですよ。空手、柔道、剣道、ボクシング、プロレス、中国拳法……さらに治安が悪い西成に放り出して、一週間、喧嘩までさせられて色々と鍛えられたんですよ。」
「え!?橘川が!?あんな、モブみたいな顔をしているのにですか?」
「……まぁ、最初は誰でも思うでしょう。ですが、大人だろうが関係なしに強いのですよ。まして、複数人で挑むなんてもってのほか。」
作業しながら話を続ける足立。少しばかりの笑みを浮かべる。
橘川は体を伸ばしたりしながら少し準備体操みたいな動きをする。頭からは血が出ているのにも関わらず、体をゆっくり動かしている。
「ちっ……随分、食らったな……。これは、正当防衛になるかな?」
「は……!?」
「いや、だから正当防衛。暴力って犯罪なの。暴行罪っていう犯罪。法律条に書いてあるだろ。あ、でもわかんねぇか。ごめんごめん、レイプ魔にはわかんねぇか。」
少し笑みを浮かべながら、中原に挑発する。そのことにキレたのか声を荒らげて仲間に指示する。
「おい……こいつ黙らせろ。」
橘川の挑発行為に苛立つ中原。指示された仲間は自分たちの数の有利か、余裕の表示をしていた。
「調子に乗るなよ?陰キャ風情がよ……。」
徐々に橘川の逃げ道を塞ぐように周囲を囲む。
「また陰キャかよ。どれだけその言葉はやっているんだ?ここは、二次元か?それと、集団で勝てるって思ってるわけ?」
「何言ってんだ。勝てるに決まってんだろ。」
少し重心を落とし、左手を前に出し、右手は顔の前に持ってくる。構えを取ったことに周りは大笑いをする。そんな大笑いの中でも、俺は心を沈める。
「………。」
「おいおい、こいつやる気だぜ。」
「笑っちゃうぜ、ほんと。」
中原琢磨も同情するかのように笑う。こんな風景はほとんど見飽きた。高笑いし、自分達が負けるはずがないと。でも、こんな奴らほど弱い。集団でイキってるのは、自分達が人数で有利であり、複数で襲いかかることで必ずやれると思ってる。でも、そんな奴一人一人は弱い。なので、1人を潰すと足も止まるというものだ。
「相手してやるよ、モブども。」
その時、1人が襲い掛かる。右手を前に出して、左手を顔に持ってきて構えを取る。1人の生徒が拳を振りかざそうとしたと同時に橘川は体勢を低くして、その生徒に殴りかかってくると同時にアッパーを入れる。顎に衝撃が走ったのか、脳が揺れて意識が朦朧している。足を払い、金的を踏んづける。それを受け、股間を押さえて倒れる。男の大事な玉の方を潰しさないように踏んづけているので安心して欲しい。むしろ、棒の方を力強く入れたのかもしれない。
「!?」
「舐めてんじゃねぇぞゴラァ!!」
金属バットで頭を殴ろうと振り下ろす。それと同時に、金属バットのグリップを蹴り上げ、金属バットを奪って、橘川は打つ構えをとる。
「オラァ!!」
顔面に金属バットを当てる。相当、痛かったのか鼻を押さえて悶えていた。今度は2人がかりで襲う。
「金属バットを持ってるのに殴りかかるのはバカだろ。」
すると、持っている金属バットを1人の口の中にグリップエンドを入れ、もう1人の攻撃をよけながら、バットを高く蹴り上げる。口に入れられた人は、歯が何本か折られ、悶絶する。その隙にバットを高く持って一刀両断する。刀ではないので頭を真上から叩かれるので、かなり激しい痛みを感じられた。バットに少しだけ凹みが生まれる。人間の骨は意外に硬い。金属でも耐えてしまうこともあるらしい。多分。
「……安心しろ。誓って殺しはしてねぇよ。」
あまりにも一瞬の出来事で、中原も、須藤も唖然。学校内では全く目立っていなかった人物がこんなにも強かったなんて、さぞかし驚いたんだろうな。凹んだ金属バットをそこら辺に捨て、中原に一歩ずつ近づいてくる。雰囲気はとても怖い……。
「なんだよ……俺のことも殴るのか?あぁ!?」
「別に殴らねぇよ。」
その一歩がとても怖か感じたのだろう。中原は近づく彼に怯えながら、ポケットナイフを取り出した。そして、裸体の私を捕まえてナイフを突きつける。
「く……来るな!来たら……殺すぞ……!!」
「い……いや……!!」
「………。」
殺されるかもしれない…….。助けて欲しい……!!そんな思っていると、私の予想を裏切る発言をする。
「殺してみろよ。」
私と中原は驚く。何を言っているのだと。
「ほ……本当に殺すぞボケェ!」
「………!!」
私はこの時、死を悟った。もう、終わりなんだと……。
「だから、殺れよ。できるなら。」
「クソが………。」
私は、気が抜けたのかそのまま気絶するかのように目を閉じた。
「お……おい!!立てよ!!なに……寝てんだよぉ!!」
須藤はどうやら気を失ってるのか?分からないが、とにかく意識はなくなってるらしい。この状況で耐えられなくなったのだろう……。まぁ、俺が殺せば?とか言ったせいでもあるけど……今はそんなことを考えてる必要はない。
「ほら、殺しやすくはなったんじゃないのか?殺さなくていいのか?」
「だ……黙れゲスが!!」
「お前だろ。」
須藤は使い物にならないとその場に捨てるように須藤を離した。俺にナイフを突きつけ、脅してくる。
「お前のせいで……お前の……せいで!!俺の高校生活がァァァァァァァァァァァァ!!」
「知るかアホ。」
ナイフを持って斬りつけてくるのを冷静に避け、突き刺そうとした手を持って右肘の関節を右膝で折る。その衝撃でナイフを落とす。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「お前が今までやってきた女子生徒全員の恨みだ。」
そして、顔面に一発。倒れたところに、追い討ちの拳を顔全体に入れる。鼻は折れ、歯も何本か折れ、イケメンの姿が哀れな姿へと変貌していた。ナイフは危ないので、ハンカチでナイフを取って部室の窓から見える溝にナイフを捨てる。
「………強姦に手を染めるからだよ。……いってぇ。」
最初にやられたところが痛み始めた。多分、アドレナリンが出てたおかげだろうか。バットで受けた脇腹、頭……。もろもろ痛い。俺は、耳につけているインカムを押さえながら、ある人物と連絡を取る。
「もしもし……小渕。今近くにいるか?」
『いや、正門前だ。それはそうと須藤はどうだった。』
「なんとか救出。でも、ボロボロだ。今は猫の手も借りたい。」
『じゃ、そっちに向かう。待ってろ。』
「すぐ来てくれ。先公が来ないうちに。」
通話を得て、今度は別の人物に連絡を取る。
「足立。今のばっちし取れてたか?」
『ええ、ちゃんと映像は残ってますよ、ぐへへ。まぁ、女の子の盗撮ではないことは残念ですが。』
「……やったら犯罪だろ。」
『そうでしたそうでした。では、隠しカメラの位置なのですが……』
足立の指示で隠しカメラを回収する。すると、中原は意識がまだ残ってるのか、まだ起きようとする。偶然、近くにサッカーボールがあったので蹴る。顔面に当たって倒れる。
「少し寝とけ。」
騒がしい音に反応したのか、足立は心配そうに尋ねる。
『大丈夫ですか?何かありましたか?』
「いや、Gがでたから殺しておいた。」
『……呑気ですねぇ。』
「じゃ、俺は須藤を運ぶ。足立は俺らの荷物頼んでもいいか?」
『ええ、わかりました。家は……橘川さんの家で?』
「あぁ。頼む。」
気絶している須藤の体に俺のブレザーをかけてお姫様だっこして部室のドアを蹴破り、外に出る。ドアが壊れても大丈夫だろ。辺りは真っ暗な夜でほんとんど人はいない。強いと言えば、職員室が光ってるぐらいだ。俺は、階段を降りるのが異様にめんどくさがったので、足で柵を飛び越える。
「いってぇぇぇぇぇぇ!?」
地面についた途端、足に痺れが走る。衝撃が足全体に伝わったのだろう。こんなことやらずに階段を使ったら良かったと後悔した。そして、急いで正門に向かって須藤を運ぶ。すると、向こうから小渕が駆け足でこちらに向かう。俺は、須藤をおんぶさせようと小渕に渡すが、小渕は須藤の姿に頬を紅くして動揺する。
「お前!?なんで!?うお!?裸!?」
「静かにしろ。今は話せない。俺の家で今回のはことについて話すわ。」
「橘川の家、遠いんじゃ……。」
確かに遠い。今の状況で交通手段といえば、バスやタクシー、電車しかない。でも、バスや電車は徒歩が必要になる。なので、消去法として……。
「足立が正門にタクシーを呼ぶってよ。それで、俺の住所を言ってくれ。お金はこれで。」
ポケットから渋沢を三枚出して、小渕に渡す。
「わかった。でも、お前は……。」
「……ある人のところに行ってから帰る。妹にも言っといてくれ。」
「わかった。……でも、その前にせめて服を着させろ!!」
「……別に女の裸を見ても得することしかないだろ。」
「損の方が多いわ!!後々に誤解されたらどうすんだよ!!」
「わかったよ……。」
ブレザーを気を失ってる須藤に被せる。小渕は目を閉じながら須藤に服を着させる。そのあと、おんぶして急いでタクシーに向かった。足立にも俺の家に荷物を運んだいてくれって頼んだし、あとはあの人に報告しに行く……。
「いだぞ!!こっちだ!!」
なんつータイミングだ。良かった。小渕と鉢合わせさせなくて済んだわ……。にしても、まぁこんなボロボロの制服に返り血も浴びてちゃバレるか。ただ、ここは目立つ。……ならあそこの公園の芝生なら。
「おーい、こっちだー。」
わざと挑発して誘導するか。公園までの距離は200mぐらいだからいけるか。その場から俺は走り出した。
「おい、待て!おい!」
サッカー部なのに足が遅い……。まぁ、倍近く走ってるからか?でも、練習してるんだよな……?こっちからすればラッキーだ。目的地の広い公園についた俺は、サッカー部員を待ち構える。武器などを持っていたからか少しふらつきながら俺が待ってる公園へとまんまと誘き出された。
「おい……はぁ、はぁ、てめぇ……はぁ、はぁ、……よくも」
「しゃらくせぇ。」
「ぐはぁ!?」
喧嘩に戦国ルールは通じない。待てるほど、こっちは暇ではないからな。とっとと……終わらせる。このような集団での喧嘩は慣れてる。1人に対して複数で襲いかかる時は、思考が停止されている。そう、前提、集団だと確実に負けるのだ。普通。ここらアニメや漫画じゃない。1人で返り討ちにするどこぞの極道とは違う。複数で相手するなら集団で襲いかかってくるなら、1人を無理やり人質にして、反撃するといういわゆる盾を持ちながら戦う騎士みたいなやり方で俺は倒す。仲間のことを深く思わないやつはそいつを殴るし、思ってるなら躊躇し、その先に殴ることも可能だ。盾にもなり、囮にもなり、色々と重宝する。そいつを主軸に金的などの弱点部位を瞬時に見極め、技をかけていく。あらゆる格闘をならったおれは独特のスタイルを身に着けている。人を盾にしながら集団戦に特化した『狂戦士スタイル』けがをさせるのはおかまいなしのスタイルだ。公園には滑り台などの道具がある。自転車はお手軽の武器だ。おおきいし、攻撃範囲が広い。集団戦にはおすすめだ。
「おらぁ!」
そして、公園には血だらけの立っている俺と横たわっているサッカー部の馬鹿どもが倒れている。久々の喧嘩だ。いい運動になった。こいつらのポケットをあさり、金を奪っていく。この金は自分の懐に入れるのではなく、『彼女』に償いの金として奪う。俺は自分で使うのではなく、人にあげる金。それだけだ。
あらかたあさり終えた俺は、小渕達が待っている自分の家に向かう。さて、明日は病院でも行くか。
また書き始めました。これからも、毎日とまではいかないですが、書き続けていこうかと思います。