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なるはや→なるべく早く頼む
最近の会話言葉で使われています。
「ねぇ、また自殺者が出たらしいよ。」
「嘘!?誰なの?」
「名前は知らないけど、1年生だって。最近よくない噂聞くね……。」
2人の体操服をきた女子生徒が正門前で話していた。どこの部活かわからないが、練習をサボってまで、話しをしたかったのだろうか。サボってたら先輩から怒られるぞ……。以前に、この噂話はちょくちょく聞こえてきた。俺が入学する前までもこの噂はあったらしいが、どこから出てるのかさっぱり分からないらしい。ソースは小渕の話だけ。何かと気にしてはいたが、俺の依頼とは関係はないだろ。今日も小さな依頼の教室の掃除と花壇の水やりをいつも通りにやる。……段々、これがいつもの日課になりそうで怖い。慣れは怖いものだ。美化委員か何か知らないけど、押し付けるなよ...。そう思いつつも、補填部の名前を噂程度に上げるためだと思ってやる。終わった後は、教室でダラダラ過ごすだけなのだが、廊下で何やら慌ただしい。関係ないと思い、眠りにつこうとした時に、勢いよく教室のドアが開く。
「た、大変だ!!橘川!!」
「……なんだ?慌ただしいが。」
「……これ……見てくれ。」
スマホを取り出し、俺に見せる。その内容に俺は目を開く。その内容は、以前に紹介してくれた山崎先輩のLINEのトーク履歴だった。最後の一言を最後に山崎先輩からのLINEは消えていた。
『生きるの……辛い…………。』
そのあと、小渕の心配するメッセージが飛んでいるが、既読がついていない。何かあったのだろうか。俺が会ったことによって、危険な状況になったのか?いや、お面被ってたから問題なかったとは思うけど……。今考えても仕方がない。この状況ですぐ行動することといえば、先輩の家に行くことが正解なのだが……。
「……先輩の家って。」
「知らない……っ。」
「そっか……。なら、様子見しかないな。」
「だが!見つけて先輩に何があったか確かめ」
「……じゃ、お前はノーヒントで目的の場所に辿りつけるのか?運が良かったとしても、1日以上は絶対にかかる。」
「そんな…。」
絶望して、小渕らその場で崩れる。そんな様子に俺は落胆する。こいつ……もう、打つ術がないと思ってそうだ。……なら、少しだけ助言してやろ。
「はぁ……。一つアドバイスだ。分からないならとにかく人に聞け。嫌なやつでも聞け。それ以外は知らん。」
「……分かった。そうする。」
助言というか、俺がやることを教えてしまった。でも……彼女に一体何が……?中原琢磨と関係しているのだろうか。真相は俺にもわからない。なんだか、嫌な予感がする。
一刻も早く、山崎先輩に何かあったことを確かめるために、放課後になり、パソコン室へ行く。昨日はバイトが入っていて行けなかったが、今日はバイトがなく、たっぷりと時間がある。少しでも、いい結果を報告しないと。パソコン室は北校舎の2階にある。渡り廊下を歩き、目的地のパソコン室に着く。ドアをノックして開ける。
「足立はいるか?」
「……おっ、橘川。珍しいな〜。」
足立隼人。髪の毛が天然パーマが目印で、眼鏡をかけてまるで陰に佇む存在である。顔は、普通だろうと思うけど、まぁ、本当にうん。パッとしない。俺と同じ学年で、足立にはある縁があって仲良くなっている。インターネットなどの情報系にとても強く、SNSを駆使して情報操作もしたことあるそうだ。今の情報社会にとってはめちゃくちゃ頼もしい人だ。ちなみに、プロハッカーであり、幾度の事件をも解決したことがあるとかなんとか。主に俺に関することだけど。のんびりな性格で、やる気がある時だけ頑張るらしい。とても扱いが難しいやつだ。
「相変わらず、パソコン部って自由そうだな。」
「うん、パソコンが無料で借りれるから、俺も含めて、買えない高校生にとっては最高だよ〜。」
パソコン室には部活のメンバーと思われる人たちが多くいた。プログラムを作って、ゲームを作ったり、大人気のAPEXLegendsをプレイしたり、はたまたYouTubeを見たり……思うがまま放課後を過ごしている。ここは、パソコンやゲームが好きな人だったら羨ましいのだろう。
「それで、何か御用か?」
「えーと、ここにきたのはある人について調べて欲しいんだ。」
「ある人?」
「『中原琢磨』について調べてくれないか?」
「……なんで、彼?」
「ある依頼で、中原琢磨について調べてたら、サッカー部のマネージャーに話を聞こうとしたのだけど、容姿が誰かに虐待されたのではと驚くほどの見た目にもなっててな。聞けるにも聞けなくてなぁ。それと、失踪もしたと小渕から聞いた。それで、なにかあるんじゃないかと思ってな……。」
まぁ、一応交渉してみる。それから、万が一やる気を出さなかった時はあれにしよう。うん。
「……わかった。ふん、お任せを!実はこの学校の裏サイトを……。」
あれ、本人やる気あるみたいだ。よかった。そうすると、足立は学校のパソコンではなく、自前のノートパソコンを持って裏サイトを立ち上げる。学校裏サイトとは、学校の公式サイトとは別に、生徒などが作成した非公式サイトのこと。主に2ちゃんねるのような掲示板になっており、利用者がコメントを書き込める形式になっている。部外者が入れないようパスワードがかかっていたり、学校名で検索をかけてもヒットしなかったり、スマホでしかアクセスできなかったりと、保護者や教師が絶対に見つからないようなサイトになっている。2002年頃からあると言われていたが、本格化されてきたのは2004年からだと言われているらしい。中学校、高校は裏サイトがあると囁かれていたのだが、小学校はあるかどうかはわからない。にしても、生徒自身が作るっていったってプログラムが必要なんだろ……。それを作るのはすごいわ……。プログラムなんてわからないもん、俺。
「裏サイトって……お前が、作ったのか?」
「ううん、元々あった。偶然、興味本位に調べてたら出てきた。」
学校の裏サイト……スクロールしながら、裏サイトを見てみる。その子の噂……名前を晒して暴言……えぐいな……。悪口も匿名で叩かれている……。怖いな……。しばらくスクロールしてみると気になる項目があった。『AVと同じ感じで撮影をして見た!!』と書かれたリンクがあった。足立にこのリンクをクリックしてもらうように促す。すると、突然エ○サイトに飛ぶ。動画のサムネイルらしきものが映る。画像からしてレイプ動画とわかる。
「これって……。」
「多分……想像通り。」
あたりを見渡す。これは、他の人には見せられないものだ。
「……2人っきりになれるか。」
「そうだね、他の部員には見せること、できないですし。」
「じゃ、補填部の部室でいいか。」
足立はあたりを見渡して、あるドアに指をさす。
「いや、準備室で見よ。」
足立につれられ、黒板の側にあるドアを入る。足立は鍵を閉め、パソコンを改めて開く。
「では、中身の方見てみましょう。」
「頼む。」
再生を押す。すると、真っ先に女子の悲鳴が聞こえる。助けて。やめて。そんな叫びを無視するかのように複数の裸体の男子たちに……。悲鳴も段々となくなり、そして、数分後……。彼女は、哀れな姿で白い液体をかけられており、まさに……。
「これ……。」
「強姦……いわゆるレイプ。これは……酷い。」
「……ネットの反応は?」
「『オカズにしました!』や『最高だった。またやって欲しい……』など称賛の言葉や感想が多い感じ。ほんと、ネットでなんでも言ってもいいなんて大間違いだぞ。」
「動物以下だな、こいつら。」
俺は……怒りを抑え込むように両手に力を入れる。手のひらに爪の跡が残るように。それよりも、こんな動画がネットに出回ってるなんて腐ってる。腐ってるのはこんな動画を見てる頭の悪い奴らか……?いや、これが現実なのだろう。ネットは自分は特定されないから、自分の他にやってる奴もいるから。安全領域から高みの見物とはいい度胸してる。
「この女子生徒ってわかるか?」
「待って………特定。彼女は『齋藤香澄。当時、1年生。」
「その子の現在は?」
「いえ……この子はもう……亡くなってる。しかも、先日に。」
「!?」
「他には?」
「……同じユーザーで、色々な女子生徒の動画もあります。……計12人です……。」
「……噂は本当だったのか。」
「噂とは?」
「ふと聞いたんだ。朝方に自殺者が出たっていう噂をな。そんなわけないと思ってたがこれか。」
「……その噂、信憑性が高いのかもしれないね。」
足立は、ネットニュースになっているのかもしれないと推測をしたのか自分の持っているパソコンを取り出して検索を始める。すると、驚いた表情を向けてきた。何か見つかったのだろう。
「で…….その事件がこれです。」
「!!これって………。」
そのネットの記事には『赤石高校で女子生徒が自殺か。犯人は、平凡な学生』と見出しが。その内容は、こう書かれていた。『ここ1年の間、女子生徒の自殺が相次ぐ。数ヶ月にわたり尊い命がなくなっている。おそらく原因はいじめだ。いじめ加害者が名乗り出て、いじめを認めることが何よりも事実だ。赤石高校はいじめがあることを現在でも詳しく調査中。真相は分からない。だが、いじめの加害者と亡くなった被害者は何も接点がない。これを教育委員……』と書かれていた。結局、教育委員会もこれを未だに対応してないとのこと。
「ん?これって。」
「どうしたのですか?」
「『いじめ加害者と亡くなった被害者は接点がない』……?どうゆうことだ?」
いじめの成り立ちとして、クラスや部活などのはみ出たもの、いわゆる『腫れ物』に対し集団で排除しようとすることで起こる。……よく考えてみると彼女の顔、あざが多く見られた。それにあの異臭。『イカ臭い』っていうのは……精液もイカ臭いと言われる。……まさか。前髪をかきあげながら俺は頭によぎった言葉を放つ。
「……ったく、あっちの奴らか。つくづく、この世界ってのは……。」
「橘川氏?」
「いや、なんでもない。そうだ足立。」
「はい?」
「この動画の特定、できるか?1人1人。無論、全て。」
「……まぁ、少し時間かかりるけど。」
「なら頼むわ。多分だが、中原琢磨が関与してると思うわ。」
「根拠は?」
「ない。俺の勘。」
「了解ざむらい。特定すれば全て報告させていただきます。」
「なるはやで頼む。」
さて、こらからどうするのか。足立と別れたあとバイト先へと向かった。