1話
エドワード ベーカー
「この方が、お前と婚約して下さる方だ。」
「え…。」
人生って突拍子もないことばっかりなのね。
父上から伝言で急いで部屋に来いと呼ばれたと思ったら、見知った顔の男の写真を見せられて婚約者として紹介されるんですもの。
私は、平凡な家の令嬢で、特にそれ以外これといって目立つ特徴なんてない。
まぁ強いていうのであれば、この国の王太子様と幼なじみ、ということくらいだろう。
小さい頃から見知った顔ではあったけれど、いやはやまさか婚約者…。
じゃなくて!
「どういうこと?私結婚相手は自分で決めたいと言っていたのに...」
「向こうからの申し出だ。」
王家相手に受けないわけにいかないだろう、何て娘を気遣ってる風を装って笑顔でいう父上。父上は嬉しい事だろう。この平凡な侯爵家の娘が王家に嫁ぐというのだから。
「まぁ、お前も知った顔なら安心だろう。確かに王家に嫁ぐとなると面倒ごとも多いかもしれないが…エドワード様ならば大丈夫だろう。」
いや何が大丈夫なんだ、というか別に王家とかそういうのが嫌なわけではない。
「私の都合は聞いて下さらないのですか?」
「お前もそうは言っていられない歳だ、そろそろ親を安心させてくれるな?」
あ、ダメだ今日の父上は何を言っても話が通じない。
はぁ、とため息をついて''考えておきます''とだけ言っておいた。
エドワード・ベーカー
ベーカ国の第1王子。容姿端麗で周りからの評価も高い。少し正確に難がある部分もあるが幼なじみだからこそ思うところがあるのかも知れない。
そんな彼を意識し始めたのはいつのことだったか。
そう、率直にいうと私は彼のことが好きなのだ。
好き、だけれどもその言葉を伝えたことも誰かに話したこともない。
告白なんて勇気は持てなかったし、幼なじみという関係さえも壊してしまったら私と彼の間には何もなくなるからだ。
「なのに、結婚…。」
話が飛躍していると思う、どう考えてもエドワードが私を選ぶ理由はないと思う。
たまたま、小さい頃に出会って気づいたら一緒の学園に通っていた。だからと行って歳を重ねるに連れて小さい頃みたいに会う機会も減っていた。
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話し聞こうにも今は冬休み中だから、学園に行くこともない。そうなればお城まで行かないと行けない。流石にそれは敷居が高い。
まだ幼い頃は、簡単に彼に会いたいという気持ちだけで会いに行けたのに。
それにしても、この数時間で情報量が多すぎる。
何から整理したら良いのかもわからない。
「というか…結婚って…。」