俺と君とあの夏の出会い
蒸し暑い夜に俺は散歩がてら公園に来ていた。
なんでこんな夜中に散歩をしているかというと、俺は実家暮らしで30にもなって職につけずにいた。
そのため、親には冷たい目で見られるため家に居場所がなく、こうやって親が寝るまで散歩するのが俺の日課だったりする。
「はぁ、熱いな今日も」
冷たいお茶を飲みながらため息をつくと、そこに一人の女性が歩いてくる。
相当、酔っ払っているのか足元がおぼつかない。
その様子を目で追っていたら、倒れかけたので慌てて助けに入る。
「大丈夫か!?」
「グスッ、私のことはほっておいてよ!」
いやいや、なんでこの人泣いてんの…。
「ほっとけるわけないだろ!そんなに酔って足元フラフラで襲われたらどうするんだよ」
「いっそ、それでもいいかも」
「はぁ?」
女が言っている意味が分からない、襲われてもいい?なんでそんなこと言うのか意味わかんねぇ…。
「私なんてどうせ、この世にいらないんだ、親は今も実家暮らしの私を冷たい目で見る。
結婚しようと思っていた男性には浮気をされて、どうせ私なんか…」
なんか、俺と似たような境遇の持ち主みたいだ、酒の勢いからかずっとしゃべり続けてる。
「あーあ、誰か襲って私のこと殺してくんないかな」
「なんで…」
「ん?」
「なんでそんなこと言うんだよ!?そりゃさ、自分に居場所がないかもしれねぇ…、でも、誰かに殺してほしいなんて、無責任すぎるだろ!あんたが殺されたら殺した奴は犯罪者になるし、あんたが殺されて喜ぶやつはいないと思うぞ!」
俺なにむきになって言ってるんだろ…、でも、死んでいいことなんてあるかよ。
「なにさ、そんなむきになって言わなくてもいいじゃない…」
「目の前で死にたいって言っているやつをほっておけるほど、人間そこまで無慈悲じゃねぇよ」
「…ごめんなさい」
ふぅ、わかってもらえたみたいだ…。
とりあえず、タクシー呼ぶか…。
俺は女を乗せたタクシーを見送って家路についた。
それから、一週間後…。
俺は就職できた、工場業だが楽しく過ごせてる。
あの人は元気にやってるかな?
そう思っていた時、工場の商品を請け負っている会社の人が来ているということで、対応を頼まれた。
「お待たせしまし…」
「あ…」
「あんたは、あの時の…」
「その節はどうも…」
これが、今の奥さんとの二度目の出会いだ。