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第七話 女子の凄さ

「いきなりなにを言っているんだ?」

「あ、勘違いしないでほしいんですけど。恋愛方向の運命とかじゃないです。さすがに、クレープを分けてもらっただけで惚れちゃうようなチョロイン系じゃないんで」

「だったら、どういう意味で聞いてきたんだ?」


 最後の一口を、口に放り込みながら問う。

 

「実はですね。あたし、特殊能力を持ってるんです」

「……中二病か?」

「えへへ。いいですよねぇ、中二病。世間一般的には、痛い目で見られることが多いですけど、あたしは、普通にかっこいいと思っているんです。だから、こうやって眼帯をつけてみたり」


 なんて心の強い子なんだ。

 周りからそういう目で見られるのも覚悟して、眼帯をつけているとは。


「それで、特殊能力っていうのは」

「マジです」

「マジなのか?」

「正確には、それっぽい能力があたしにあるんじゃね? とか思う感じなんですけどねー」


 前の俺だったら、かなり疑いの目で見ていた。しかし、現在進行形で俺には特殊能力がある。

 しかも、神様も居ることもわかっている。

 まさか、この子にも俺とはまた違った能力が?


「それで、その能力ってのは?」

「運命眼と言っておきましょうかね。小さい頃から、これは運命の出会い! って感じる時に左目が熱くなるんです。最初は、そういうのがわからなくて目の病気かもって思っていましたけど。今では、これはあたしに備わった特殊能力なんじゃないかと思っているんです!!」

「それが今回、俺だったってことか」

「はい! ちなみに、先ほども言いましたが、運命の出会いは恋愛方向ではありません。この運命眼が反応した相手は、あたしを楽しくさせてくれる人達ばかりなんです!!」


 俺が、この子を楽しませる? 


「しかもですよ! 今回の運命眼は、過去最大の反応を示したんです! うひゃー! これはテンション上がりまくり! このままのテンションでどか盛りフルーツクレープを食べちゃいましょー! とか思っていたんですが」

「俺が最後の一個を買ってたと」

「まあ、だったらそのまま運命の相手さんとお近づきになりつつ、クレープも分けてもらおうと」


 だから、あんな必死になって絡んできたのか。

 

『キュアレ』

『なに?』

『俺以外にも、特殊能力を持ってる奴って居るのか?』


 彼女が嘘を言っているような気はしないが、念のため知ってそうな奴に聞いてみた。


『うーん、あるかもだけど。私は知らない。そういう細かいことは、聞かされてないもん』

『お前、ほんとなにをしに来たんだ?』

『だから言ったじゃん! 私は、君に能力を与えて、どう効果があるか見極めるって!』


 それ以外は管轄外ってことか。まったく、最初だけは神様だったが、今となってはただ部屋に引きこもり……うん、こいつは当てにならないな。


「どうかしました?」

「いや、凄い能力だなぁっと思っただけだ」

「……」

「な、なんだよ」

「零先輩って、変わってますね」

「お前にだけは言われたくない。……ん?」


 ふと、視線をそらすと見覚えのある姿が視界に入った。

 

「康太?」


 最近、放課後になるとさっさと帰ってしまう康太が歩いていた。

 しかも、見知らぬ少女と一緒に手を繋いで。

 栗色のストレートヘアーが似合う子で、見た感じ康太もかなりデレデレしている。

 あの二次元オタクの康太が……まさか、童貞を捨てたのも彼女か?

 

「あれれ? 先輩のお友達ですか?」

「あ、ああ」

「偶然ですね! そのお友達と歩いている子って、あたしのクラスメイトちゃんなんですよ! 彼氏が居るとは言ってましたが、まさかああいう人がお好みだったとは!」


 いや、違う。

 あの子は、康太の彼女なんかじゃない。

 俺には見えている。確かに、彼女には恋人が居る証があるが、康太にはない。

 ということは……だが、どう言えばいい。

 その子は、お前のことを彼氏とは思っていない。本物の彼氏が居るぞって? 言ったところで、信じてもらえるはずがない。


 証拠もない。

 彼女とも関わりがない。

 康太からしたら、俺は嫉妬して彼女と別れさせようとしているって感じに見えてしまうかもしれない。


「……訳ありみたいですね」


 どんどん小さくなっていく二人の背中を見つめながら悩んでいると、あおねがにやりと笑みを浮かべる。


「確かに、変ですね。あの子とはよく話すのですが、言っていた好みのタイプと一致していませんから」


 やっぱり、彼女にとってはお遊びで康太に付き合ってる感じなのか。


「先輩。あたしに任せてください」

「任せてくださいって、どうするつもりだ?」

「調べるんですよ。そういうこと、得意なんです」


 優しく微笑みながら、あおねはスマホを差し出してくる。


「なので、連絡先を交換しましょう。なにか進展があったら、すぐお知らせしますので」

「……なんで、そこまで」


 まだ出会って間もないのに。


「困ってる人を放っておけない質なもので。それだけじゃ、だめですか?」


 ……まったく、女子ってのは本当によくわからないな。

 

「頼んだ。あいつは、二次元大好きで、馬鹿だが、悪い奴じゃないんだ。情報収集、頼んだぞ後輩」


 と、俺は自分のスマホを取り出した。


「お任せです、先輩」

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― 新着の感想 ―
[一言] 予想だけどただのオタク仲間だったり?
[一言] オタクに優しいギャルなんて居ないんだよぅー!(´;ω;`)
[一言] ようやくそれっぽくなってきた
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