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第一話 夏休み前に

 ついに明日は夏休みだ。

 今日は、終業式を終えたらファミレスに寄って夏休みになにをするのかを相談することになっている。

 本来なら楽しい楽しい夏休みになるところだが……。


「何も起こらなければいいが」

「無理無理。普段から何かが起こっているのに、夏休みという一大イベントで何も起こらないなんて」

「そもそもお前が来る前は、本当に平凡な生活を送っていたんだぞ?」


 多少、おかしなこともあったが、それでもまだ普通の範囲だ。

 それがどうだ。

 こいつが俺のところに来てからというもの、本当に変なことばかり起きている。


「そ、そんな人のことを疫病神みたいに言わないでよ。私だって、主神様の言いつけで来ただけなんだからね!」

「じゃあ、お前は主神様のせいだって言うのか?」

「それは……ぐぬぬっ」


 今更キュアレを責めても遅いのはわかってる。

 そもそも受け入れたのは、俺だしな。

 俺自身、平凡から抜け出したいって思っていたのかもな……。


「もう、先輩。あんまりキュアレさんを苛めちゃだめですよ?」


 と、炊飯器から白米を盛りながら言うあおね。


「もしかしたら、そのせいであたしとも出会えなかったかもしれないんですから」


 と、背後から味噌汁の入った椀をテーブルに置くあおね。


「そうだよ! むしろ感謝してほしいぐらいなんだから!! 零の意地悪ー!!」

「……なあ、あおね」

「なんですか?」

「おかわりですか?」


 ずっと突っ込みたかったんだが。


「慣れないから、一人になってくれないか?」

「「えー? どうしてですかー?」」


 わかってるくせに、両サイドから同時に声を上げる。

 忍者だとはわかっていたが、かむらのように分身ができたあおね。正直、最初は疑っていた。

 なにしろ全然忍者に見えないからな。

 しかし、こうして同じ顔が普通に会話をしていると……。


「だって、先輩が」

「学校に通ってるのにどうやって監視しているのかーって聞いてくるから」

「こうやっているんですよーって」

「「ねー?」」


 漫画やアニメでは凄いとしか思っていなかったが、実際目の前で分身しているのを見ると、めちゃくちゃややこしい。

 いや、あおねがややこしくしているのだろう。

 

「それにずっとじゃないんですよ?」

「そうそう。あたし達、忍三人衆が交代で監視しているんです。ちなみに今日はあたし。昨日はここね。一昨日はかむらちゃんって感じに」


 理解しているが、普通に過ごしている時もどこからか監視されるってのはあまりいい気分じゃないな。

 

「ちなみに、アパートに居る間は監視を一旦止めています」

「なにせここには、神様がおられますからね!」

「ふふん!」


 自分が神様だと信じてもらえていることが嬉しいのか。めちゃくちゃドヤ顔をしているキュアレ。

 

「にしても、どういう原理なんだ? それ」


 左のあおねが淹れてくれた茶をすすりながら問う。

 漫画やアニメなんかでは、魔力みたいなエネルギーを使って作っているって感じだが。


「あたし達には霊力というエネルギーがあって。それを使って分身をしているんです。ほら、漫画やアニメみたいな感じです」

「やっぱりそういう感じなのか……」


 改めて見比べると全く見分けがつかない。

 えっと……どっちが本体で、どっちが分身だったか。

 

「こっちか?」

「ぷー」


 俺から見て左のあおねの頬をつつく。


「正解でーす」


 そう言って、分身が光の粒子となって消える。


「さすが先輩! 一発で当てるなんて」

「たまたまだ」

「そんなラッキーな先輩にこんな情報をご提供します」


 情報? いったいなんのことだ。


「ほら、先輩が通っている学校に木村先生という人が居ますよね?」

「ああ」

「で、先輩に言われて調べたんです。木村先生と井島先生の関係を」

 

 正直、あの後に調べるのはどうかと思ったんだが、やはり気になったんだ。

 木村先生が、悩んでいたのは結局のところ【欲魔】のせいだということはわかったが、じゃああの時の木村先生と井島先生の反応はどうういうわけなのか。


「はっきり言いますと、なにもありません。そもそも井島先生にお付き合いしている男性の方が居るみたいです」

「そうだったのか。じゃあ、あの時の反応はいったい」

「それはですね」


 それは?


「木村先生が【欲魔】に襲われた後、最初に出会ったのが井島先生だったようで。その時、木村先生の社会の窓が全開だったみたいなんですよ」

「……それだけ?」

「はい。たまたま通り掛かった通行人に聞きました。井島先生が恥ずかしそうに木村先生へ、そのことを指摘していたようです」


 てことは、あの時の反応は、ついその時のことを思い出してしまい二人とも恥ずかしさのあまり赤面&沈黙をしてしまった、ということか。


「いやぁ、二人とも初ですなー」

「だねー」

「いや、普通に恥ずかしいだろ。外で、しかも知り合いにチャック全開姿を見られたんだから」

「あたしは気にしません!」

「私も!」


 おい、女子ども。少しは羞恥心を持ちなさい。


「おっと。心配性な先輩のお悩みをぱぱっと解決したところで、登校時間となりましたね」

「みたいだな。さて、一学期最後の登校といきますか」

「いってらっさーい」

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