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第二十八話 勝負開始

 ついに勝負当日となった。

 俺は、勝負のために服を買う……ことはなく、いつも通りの格好で集合場所に向かっている。

 今回の趣旨は、俺という人間をかむらに知ってもらうこと。

 変にびしっと決めるよりは、いつも通りの俺で行った方がいい。


 白いシャツに、フードつきの黒の上着。

 大きめのポケットがある群青色のズボン。

 よくありそうな服装だが、これが俺の私服。服にはあまりこだわりがないので、よくありそうな格好になってしまうのだが。

 

 まあ、こだわりがないのかと聞かれればひとつだけ、あるかな。

 それは、ポケット。

 昔からそうだったんだが、バッグに詰めるよりズボンのポケットに物を入れることが多かった。


 小さいものぐらいしか入らないが、取りやすさ重視というか。

 物欲があまりないので、バッグもそこまで必要ないというか。

 確かに、バッグがあれば色々と詰められるから便利だけど、俺みたいな考えを持っている人達は居ると思う。

 ……たぶん。


「えっと、かむらは……居た」


 遠くから俺のことを見守っているあおねからすでにかむらが集合場所で待っていることを知った俺は、その姿を見つける。

 何やら道行く人達が、チラチラとかむらを見ているようだ。

 ……それもそのはずか。

 まさか、そういう格好で来るとは。


「お待たせ。もう来ていたんだな」

「ふん。どうせ、あおねから自分がすでに着いていることを教えてもらっているのだろ?」


 鋭い……。


「それで、その格好は」

「条件に従い、君達が言う現代の可愛い格好とやらだ。まったく……苦労したぞ」


 俺達が、勝負のためにひとつだけ条件を出した。それは、スカートこみの現代風の服装。

 かむらは、普段からあの大正時代を思わせる和服しか持っておらず、現代の服は持っていない。それをわかっていて、あおねは条件を考えたのだ。


 そして、かむらが自分で選んだ格好だが。

 まず指定したスカートだが、シンプルに赤のミニスカート。よく鍛えられた両足には黒のニーソで包まれており、所謂絶対領域が出来上がっている。

 普段は隠れているが、あおねの情報通り結構むっちりとしている。

 太っているわけではなく、鍛えた結果そうなっているようだ。

 ニーソによりそのむちむちぶりが、より印象強く表されている。


 次に上だが……。


「本当にかむらが選んだんだよな?」

「ん? ああ、そうだ。なんだ? どこか変、なのか?」


 世間知らずというわけではないが、意外と抜けているとこもあるとは聞いていたが。


「いや、凄く似合ってる。それは間違いない」

「褒められてもお前への印象は変えないぞ」

「ははは、それは残念だ」

 

 かむらが見られるのは納得だ。

 かむらが着ている服は、白色のセーター。

 康太がかなり豪語していたが、巨乳が着ることでエロくなる服らしい。あの和服の時もかなり大きかったが、セーターの時のほうが大きく感じる。

 まあ和服ってかなり締め付ける感じで着るイメージがあるからな……今のが通常の大きさ、なのだろうか。


「さて、時間は有限だ。さっそくだが、勝負を開始しよう」

「ああ。けど、勝敗の有無だけ確認しないか?」

「いいだろう」


 腕組みをし、余裕の表情で見てくるかむら。

 こうして、近くから見るとここねぐらい小さいな。


「今回の勝負は、夕方までに俺が印象を変えられたら勝ち」

「しかし、変えられなければ君の負けだ」

「……もし負けたら上に報告するのか?」

「さあな。それは、勝負が終わってから考える。確認はこれぐらいにして、そろそろ移動しよう。まあ、君がここで夕方まで立ち話をしたいというのであれば、自分は構わないが?」


 挑発のつもりか? それで俺のペースを崩そうというのなら、俺はかなり舐められているな。

 

「それもいいかもしれないが、ここだと目立つからな。かむらにとっても移動した方が良いんじゃないか?」

「……」


 俺が来る前から注目されているのはわかっている。

 それに、行きたいところもすでにいくつか決まっている。会話に花を咲かせるのは、移動しながれで良いだろう。


「ほら、行こうぜ」

「お手並み拝見といこうか」


 こうして、かむらとの一対一の勝負が始まった。

 はたから見たら完全にデートをしているようにしか見えないだろうが……うん、俺も普通にデートだろこれと思っている。

 さて、勝敗も大事だが、まずは楽しくだ。あんまり気を張りすぎると変な方向に行きそうだからな。


「そういえば、今日の朝放送された話だけど」

「なんのことだ? ニュースの話か?」


 さっそく移動をしながら、かむらが興味を引きそうな話題で先制攻撃だ。

 が、かむらは前回と違い警戒心がかなり高く話題に乗ってこない。

 

「違う違う。特撮の話だって。いやぁ、今回の話は正直、子供じゃあまり理解できない内容だったと思うんだよ……」

「そうか」

「最初の十数話ぐらいはまだ明るい感じだったけど、中盤ぐらいから敵の策略が結構えぐくなって、味方もこれ裏切るんじゃないか? とか思う感じが出てたから嫌な予感はしてたんだ」

「……そうか」


 乗ってきそうで乗ってこないか。やはり、今回は勝負ということもあってガードが固い。

 耳は傾けているが、視線を合わせようとしてくれない。


「けど、最近のCG技術はかなり進化してるってわかる話でもあったよな。例えばさ」


 俺もそれなりには特撮を観てきた。

 ガチ勢とまではいかないが、話せる方だと思っている。


「なあ、かむらは」

「さあな」

「てことになりそうじゃないか?」

「知らん」


 ……手強い。さすがに話題を変えるか? 

 

「行きたい場所とやらはまだ着かないのか」


 信号待ちをしていると、かむらが問いかけてきた。


「もうちょっとだ。ここの信号を渡って、そこから右へ真っ直ぐ進めば到着だ」

「今のところ、まったくと言って心は動いてないが、大丈夫か?」


 心配、ではなくまた挑発のつもりなのだろう。


「覚悟はしていたが、やっぱ手強いな」


 そんなかむらに、俺は正直な感想を述べる。


「当たり前だ。どんな内容であれ、勝負は勝負。簡単にはいかないと思え。まあ、せいぜい頑張ることだな」

「……ああ。頑張らせてもらいますよ」


 と、信号が青に変わったところで、俺達は再び動き出した。

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