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第五話 やっぱ愛って、よくわからねぇ

「よっと」

「おー! また入った! やっぱお前、すげぇな!」


 俺の日常が変わって早四日。

 能力にも大分慣れてきた。

 ああ、慣れてきたさ。

 この能力は慣れなくちゃ、精神が壊れる。

 人間関係は複雑だと能力を手に入れる前から思ってはいたが、能力を手に入れてからは、もっと思うようになった。

 

「いや、フリースローだったら何度かすれば」

「いや、俺十回中二回しか入らないんだが」

「お前の場合、まず撃ち方変なんだよ」


 能力を抜きにしたら、今までと変わらない日常。

 今日は、体育の授業でバスケをしている。

 ちなみに女子はバレーボールだ。

 体育館を男女半分に分けてやっているのだが、女子のほうは楽しそうにしている中、男子のほうはそこまで楽しそうじゃない。


「たく、だりぃなぁ。バスケとかよくわかんねぇよ」

「ほら、あれだろ? 左手は添えるだけとかいうあれ」

「添えても入りませーん」


 このようにやる気がない。中にはやる気のある者達も居るが、大半の男子は適当にボールを突いたり、パスを回したりしているだけ。

 この後、軽い試合があるのだが、どうなることやら。


「お? こうか!」

「そうそう。うまいうまい」

「ふっ。俺にはバスケの才能があるのかもしれない」


 康太は、何をやっても前向きだ。

 

「おーい。そろそろ試合するぞー」


 そんな時だった。体育教師である野山先生が声を張る。

 角刈りな筋肉質な男性。

 バスケ部の監督をやっている。独身三十三歳だ。


「うひー、試合かぁ」

「まあ、適当に流すべ」


 チーム分けが終わり。

 試合が開始。

 途中、女子は男子の試合を観戦するかのように視線をこっちに向けている。


「零!」

「おっと」


 康太からパスを受けとり、俺はゴールへ突き進む。俺もそこまで真面目にやっているわけじゃないが、相手も真面目さが感じられない。

 一人、二人と突破し、ゴール前最後の一人。

 

「行かせない!!」


 お? こいつは凄いやる気だな。

 えっと、加藤くん? どうやら彼女が居るらしい。そして、線が伸びてるってことは同じクラスに彼女が居る証拠。

 

 とりあえず、この距離なら突破するよりも。


「ほっと」

「なっ!?」


 そのままゴールに向かってボールを投げる。

 突破してくると思っていたのか、加藤くんは一瞬反応が遅れジャンプするも触れることができず。

 俺が投げたボールは、リングに当たることなく入った。


「すげぇ! やっぱすげぇよお前!」


 肩を組んでくる康太。

 なんでここまでテンションが高いのか。


「いや、テンション高すぎるだろ」

「いやいや。だって、加藤ってバスケ部なんだぜ? それも結構中学じゃ実力は上位だったんだぞ?」

「え?」


 バスケ部? この眼だと、そういう情報は表示されないからわからなかった。

 まだ入学して二週間だし、クラスメイトの顔や名前はそれなりに把握しているが……さすがに何をやってるかまでは。逆に康太は、凄いな。

 二次元一直線な感じなのに。俺も見習わなければな。


 その後、試合は終盤に。

 バスケ部だった加藤くんは、帰宅部に負けたせいかムキになって俺に張り付いてくる。

 それは良いのだが、問題がひとつ。


 加藤くんと付き合っているであろう彼女。

 康太の情報では、バスケ部のマネージャーをやっている篠田さんという女子のようだ。

 ボブヘアーで、赤いカチューシャをしている子。


 さて、問題というのは二人の愛。

 最初は、きっちり線で繋がっていたのだが、俺に負けてからというもの線が薄くなっていっている。

 このことについてキュアレは。


『それは、愛が薄れている証拠だね。彼女ちゃんのほうから薄れているんだよね? ということは、彼氏くんに対しての愛が薄れているんだよ』


 とのことだ。

 これはやばいかもしれない。このままだと加藤くんが、篠田さんと別れてしまうかもしれないのだ。


「このままじゃ終われない!」


 くっ、加藤くんも主人公のような台詞を。

 正直、これは体育。

 部活のようにくそ真面目にやることはない。ある程度やって先生に評価をされればいいのだから。


 とはいえ、難しい問題だ。

 このまま加藤くんが、俺に勝ったところで彼氏が負けているだけで薄れるぐらいの愛ならば、この先も長続きしない。

 逆に、俺が勝ったら篠田さんは、加藤くんを見捨てる可能性が大。

 どちらにしろ加藤くんの未来は……。

 しかも、まだ二人は数回手を繋いだ程度の付き合いなのだ。そう、まだ抱擁も、キスもしていないんだ二人は。


『なんて、残酷な運命なんでしょう……!』

『なんで体育の授業で、こんな想いをしなくちゃならないんだ!』

「零!」


 どうしたものかと葛藤していると、加藤くんが俺からボールを弾き、チームメイトが奪取。

 そのままゴールめがけ突き進んでいく。

 

「よっしゃ!」


 そして、加藤くんがシュートを決めた。

 それからは、加藤くんのこれからを考えながらの試合が続き……終了を告げるブザーが鳴り響いた。

 結果は、加藤くん側のチームの勝ち。

 勝ち、だが。


「いやー、良い運動だったなぁ、零」

「……ああ」


 康太的には、ちょっと激しかった運動といった感じだろう。しかし、俺は肉体よりも精神が削れた。

 

「……」


 最後まで気になっていた二人の関係。

 今は、なんとか修復したようだが、それでも線は薄く危うさがある。しかも、なんだろう……篠田さんの視線が俺に向けられているような。


「やっぱ愛って、よくわからねぇな」

「は? どうしたんだよ、いきなり」


 その後、なんとか加藤くんは篠田さんとの付き合いが続いたようだが、果たしてそこに本物の愛はあるのか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] レベル上がったら一方通行も見えるようになってさらに地獄になるんやろなあ
[良い点] このくらいぐちゃぐちゃになってる、ギャグ寄りの作品大好きです! [気になる点] 前話であったつながりを表す線のくだりのとき、恋人と既婚者とありましたが、既婚者ではなく夫婦がいいと思います。…
[一言] 面白いです!
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